2000.3b / Pulp Literature

2000.3.11 (Sat)

鎌田慧『ドキュメント 屠場』(1998)

ドキュメント 屠場(97x160)

★★★
岩波書店 / 1998.6
ISBN 4-00-430565-9 【Amazon

屠場労働者を題材にしたルポルタージュ。主に部落問題・労働組合・職人の誇りについて書いている。

牛や豚の肉を食べながら、その生産者を差別するのは、自分の身体を粗末にしている行為ともいえる。(p.11)

難しい問題が絡んでいるだけに興味深かった。労働者たちは暗黙のうちに技を競いつつ、常に助け合って仕事をしている。

屠場(*1)は労働時間が短いうえ、給料もそこそこ良いらしい。ただし、熟練するまでに時間がかかる(10年20年単位)こと、差別が根強く残っていることなどがネックになる。また、昔気質な職人軍団であるところもマイナス要因だろうか。腰掛けでやるには悪くないかなと思ったけど(時間が欲しいので)、文科系にとっては色々と気苦労が多そうだ。

*1: 「とじょう」と読む。ATOKでは変換できない。

2000.3.16 (Thu)

陳舜臣『曹操』(1998)

曹操(107x160)

★★
中央公論社 / 1998.11
ISBN 4-12-002860-7 【Amazon
ISBN 4-12-002861-5 【Amazon
ISBN 4-12-203792-1 【Amazon】(文庫)
ISBN 4-12-203793-X 【Amazon】(文庫)

三国志の英雄・曹操を「家族」の観点から見つめ直している。

これはイロモノの部類。曹操の近くに架空の人物が配置され、ほとんど彼との対話で紙幅が費やされている。歴史小説につきものの戦闘描写は一切なく、さらに史実のおいしいポイントもあっさり流してしまうため、やや肩透かしを食った気分だった。

ただまあ、史実のアレンジは目新しかったかな。たとえば、曹操暗殺計画が発覚するエピソード。史実では曹操の客将だった劉備も一枚噛んでおり、発覚後は絶妙のタイミングで曹操のもとから逃げ出していた。ところが、本書では劉備が陰謀の密告者になっている。そして、曹操とつるんでいるのが世間にバレないようにするため、2人で示し合わせて逃走したという何とも珍妙なストーリーになっていた。

>>Author - 陳舜臣

2000.3.19 (Sun)

ヘンリー・D・ソロー『森の生活 ウォールデン』(1854)

森の生活(114x160)

★★
Walden, or Life in the Woods / Henry David Thoreau
飯田実 訳 / 岩波文庫 / 1995.9
ISBN 4-00-323071-X 【Amazon
ISBN 4-00-323072-8 【Amazon
ISBN 4-06-158961-X 【Amazon】(講談社学術文庫)

森の生活を綴ったエッセイ。当時20代だった著者は1人で森に入り、2年2ヶ月のあいだ自給自足の生活を送る。

牧歌的な本かと思いきや、意外と苛烈な内容だった。自然観察よりも文明批判のほうが多く、世間への呪詛を饒舌に書き散らしている。たとえるなら、ヒッピー(ただしドラッグは抜き)を100年先取りしたような感じだろうか。ピューリタンを思わせる潔癖さが土台にあって、膨張する文明への反抗心を剥き出しにしている。哲学といえば聞こえはいいけれど、実態は青臭い愚痴といったところで、今だったらロックにはまっているタイプだろう。およそ20代とは思えない向こう見ずな衝動が炸裂している。