2000.3c / Pulp Literature

2000.3.22 (Wed)

笹澤豊『小説・倫理学講義』(1997)

小説・倫理学講義(98x160)

★★★
講談社現代新書 / 1997.11
ISBN 4-06-149380-9 【Amazon

小説仕立ての入門書。「理性は感情を制御できるか」、「不倫はいかにして可能か」、「人を裁く論理」、「民主的とはどういうことか」、「人の権利の成り立ちについて」、「失われ、戻らないものたちのために」の6章。

対話形式なのでとても分かりやすい。まるで漫画を読んでいるかのようにすっと入ってくる。

いくつか疑問。(1) 功利主義について。犠牲が許容されるかされないかは、事態の度合いによるんじゃなかろうか? たとえば人類の滅亡がかかっているようなときは、スケープゴートもやむを得ないんじゃなかろうか? (2) 障害者について。両親との絆が存在の根拠になっているけれど、じゃあそういったものがいっさいない孤立した人の場合には、共同体の道徳は適用されないのだろうか? 100人中100人に嫌われていてなおかつ生産性がない。そういう役立たずには生きる価値がないのだろうか?

これらは自分への宿題ということで。

以下、巻末の文献案内から抜粋。

  • ニーチェ『善悪の彼岸』(岩波文庫)
  • ヒューム『人性論』(岩波文庫)
  • ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』(中央公論社)
  • プラトン『法律』(岩波文庫)
  • J・S・ミル『功利主義』(中央公論社)
  • カント『道徳形而上学の基礎づけ』(以文社)
  • カント『人間愛から嘘をつく誤った権利について』(理想社)
  • 加藤尚武『現代倫理学入門』(講談社学術文庫)
  • 大庭健他『道徳の理由』(昭和堂)
  • 笹澤豊『道徳とその外部──神話の解釈学』(勁草書房)
  • バークリ『人知原理論』(岩波文庫)
  • ロールズ『正義論』(紀伊國屋書店)
  • プラトン『ゴルギアス』(岩波文庫)
  • ノージック『アナーキー・国家・ユートピア』(木鐸社)
  • ロック『統治論』(中央公論社)
  • ルソー『社会契約論』(中央公論社)
  • マルクス『ユダヤ人問題によせて』(岩波文庫)
  • 笹澤豊『<権利>の選択』(勁草書房)
  • バーリン『自由論』(みすず書房)
  • ウェーバー『職業としての政治』(岩波文庫)
  • アリストテレス『ニコマコス倫理学』(岩波文庫)
  • 加藤弘之『人権新説』(中央公論社)
  • 福沢諭吉『学問のすすめ』(岩波文庫)

2000.3.24 (Fri)

根井雅弘『ケインズを学ぶ』(1996)

ケインズを学ぶ(98x160)

★★★
講談社現代新書 / 1996.5
ISBN 4-06-149302-7 【Amazon

高校生向けの入門書。ケインズの生涯をたどりながら、その功績を分かりやすく解説している。「経済学者への道」、「『パックス・ブリタニカ』の終焉のなかで」、「有効需要の原理」、「ケインズから現代へ」の4章。

ケインズといえば減税や公共投資のイメージだけど、それらはステレオタイプな誤解だという。本書は正しいケインズ像を紹介すべく、彼のバイオグラフィーを中軸に据え、「有効需要の原理」やら「乗数理論」やら「流動性選好説」やらをなぞっている。また、マネタリズムやサプライサイド経済学といったアンチ・ケインズ学派に対し、「古典主義が形を変えて復活したにすぎない」みたいな反論をしている。基本的には人物本位の記述で、ケインズ好きによるケインズ擁護の書という印象。ケインズについてはほとんど知識ゼロだったので、とっかかりとしては良かったかもしれない。

それにしても、ジュニア向けの入門書は読者に語りかけるタイプの文体が多いような。噛み砕いて説明することと読者を子供扱いすることは似ているようで実は全然違うし、本書の場合はかえって悪文になっていて読みづらい。悪習だから止めるべきだと思う。

巻末の参考文献から80年代以降の本を抜粋。

  • J・M・ケインズ『人物評伝』(東洋経済新報社)
  • ポール・A・サムエルソン&W・D・ノードハウス『経済学』(岩波書店)
  • R・スキデルスキー『ジョン・メイナード・ケインズ』(東洋経済新報社)
  • J・ロビンソン『資本理論とケインズ経済学』(日本経済評論社)
  • 中谷厳『入門マクロ経済学』(日本評論社)
  • 根井雅弘『現代の経済学』(講談社学術文庫)
  • 根井雅弘『現代経済学講義』(筑摩書房)
  • 根井雅弘『現代経済学への招待』(丸善ライブラリー)
  • 根井雅弘『ケインズから現代へ』(日本評論社)
  • 根井雅弘『現代アメリカ経済学』(岩波書店)
  • 根井雅弘『ガルブレイス』(丸善ライブラリー)
  • 松浦高嶺『イギリス現代史』(山川出版社)
  • 村岡健次・川北稔編著『イギリス近代史』(ミネルヴァ書房)
  • 吉川洋『ケインズ』(ちくま新書)