2000.4a / Pulp Literature

2000.4.2 (Sun)

北村薫『盤上の敵』(1999)

盤上の敵(109x160)

★★★★★
講談社 / 1999.9
ISBN 4-06-209876-8 【Amazon
ISBN 4-06-273563-6 【Amazon】(文庫)

テレビディレクターが車で帰宅しようとすると、自宅がパトカーに囲まれていた。不審に思った彼は携帯から自宅に電話をかける。すると、電話に出たのは妻ではなく、散弾銃を持った男だった。

良いね?。久々に歯応えのあるミステリを読んだ。人物をチェスの駒にたとえ、盤上戦を意識した構成をとっている。こういうゲームに徹した小説はわくわくするね。終盤のサプライズも大満足。でも、どうせだったらナイトやビショップなんかも配置してほしかった。キングとクイーンだけでは寂しすぎる。

2000.4.4 (Tue)

立花隆『脳を鍛える(東大講義 人間の現在)』(2000)

脳を鍛える (東大講義 人間の現在)(112x160)

★★★★
新潮社 / 2000.3
ISBN 4-10-395504-X 【Amazon

東大教養学部を舞台にした仮想講義本。1996年の夏学期に行われた講義を元にしている。

本書の主張。現代の教育では早いうちから専門化するため、最低限の教養すら持たない偏った知識を持つ人間が出来てしまう。知の最先端はサイエンスにあるのに、文系の人間はそれを十分身につけないまま大学を出てしまう。だから幅広く勉強しろということらしい。

講義は20世紀のサイエンス──相対性理論やら素粒子やら──が中心になっている。著者の話術が巧みなせいか、大いに好奇心を刺激されたのだった。しばらくはミステリではなく、サイエンス関係の本を追ってみたい。どこかに良いブックガイドはないものだろうか?

2000.4.7 (Fri)

笙野頼子『説教師カニバットと百人の危ない美女』(1999)

説教師カニバットと百人の危ない美女(110x160)

★★★
河出書房新社 / 1999.1
ISBN 4-309-01258-2 【Amazon

自称「嘔吐系醜悪容貌作家」が、カニバットを信仰する100人の美女たちからFAX攻勢される。

著者をモデルにした八百木千本は、自身の類稀なる醜さをネタにした「ブスもの小説」で支持を得て、独身のまま40歳を迎えた。一方、カニバットは既に死んでいるものの、生前は男尊女卑の権化として名声を博し、100人の美女ゾンビたちに崇拝されている。ゾンビたちはみな結婚願望を抱きながらも、独身のまま死んでいったのだった。

饒舌な語り口が凄まじく、特に「ブス」表現の多彩さには圧倒される。「ブス」にまつわるエピソードはおそらく著者の原体験なのだろう。どれも悲しいくらいに説得力がある。私は田嶋陽子を思い浮かべながら読んだ。男性社会に染められた女性を攻撃し、さらには「結婚しない自分」を正当化するにまで及ぶ。こういう自意識の強さがそっくりだと思う。フェミニストってしばしばもてない女の代名詞と言われるけれど、本作はそのイメージを敢えて引き受けることで、中途半端な揶揄を無効化しているような気がする。笙野頼子は一流の道化師ではなかろうか。

2000.4.8 (Sat)

二澤雅喜 島田裕巳『洗脳体験 増補版』(1991)

★★★★
宝島社文庫 / 1998.11
ISBN 4-7966-1442-7 【Amazon

自己開発セミナーが題材。二澤の体験記をベースに、島田が洗脳の手口について解説する。

前半の体験記は、洗脳がいかに巧妙に仕組まれているかを示すに十分の内容だった。はじめは懐疑的だった著者も、巧みな洗脳によってコロリと騙されている。一方、後半では映画『フルメタル・ジャケット』を引き合いに出して、軍隊式洗脳のメカニズムを解説している。

今までの価値観を破壊し、空っぽになったところへ新しい価値観を注ぎ込む。その過程で、洗脳される側にはある種の快感が伴う。つまり、洗脳は自覚症状のないところが問題なのだ。都会にはこの手の罠が多いから気を付けなければならない。上京したての大学生は必読だろう。

2000.4.10 (Mon)

アーシュラ・K・ル=グウィン『帰還 ゲド戦記 最後の書』(1990)

帰還 ゲド戦記 最後の書(110x160)

★★
Tehanu / Ursula K. Le Guin
清水真沙子 訳 / 岩波書店 / 1999.12
ISBN 4-00-026466-4 【Amazon

力を使い果たしたゲドがゴントに帰還し、寂しい余生を送る。

テナーの劣化ぶりがすごかった。自己憐憫と自意識過剰からなる勘違い女に成り果てている。

テナーの前に現れる男どもも酷いなあ。あまりに安易な造形で、小説としての説得力に欠けている。著者はそうまでして「女の不幸」を描きたかったのだろうか。いまさら主婦の愚痴なんか聞かされても鬱陶しいだけである。

>>Author - アーシュラ・K・ル=グウィン