2000.4c / Pulp Literature

2000.4.27 (Thu)

東野圭吾『天空の蜂』(1995)

天空の蜂(113x160)

★★★★
講談社文庫 / 1998.11
ISBN 4-06-263914-9 【Amazon

防衛庁機密の特殊大型ヘリコプターが何者かに奪取された。犯人はヘリコプターに爆薬を積み、原発への攻撃を宣言している。

真保裕一を彷彿とさせる骨太のスリラー。ヘリコプターや原発のディテールがかなり詳しい。

物語は犯人の追跡を軸としながらも、原発をめぐる様々な立場──国、原発付近の住人、都会で暮らす人々、技術者、被爆者──を公平に並べ、原発問題を浮き彫りにしている。正直、著者がこんな社会派、それもこんなスリラーを書くとは思わなかった。綿密な取材をした力作という感じ。

>>Author - 東野圭吾

2000.4.29 (Sat)

立花隆『宇宙を語る 立花隆・対話篇』(1995)

宇宙を語る 立花隆・対話篇(107x160)

★★★
書籍情報社 / 1995.10
ISBN 4-915999-03-3 【Amazon

立花隆が7人と対話する。相手は、毛利衛、向井千秋、菊池涼子、アーサー・C・クラーク、松井孝典、河合隼雄、司馬遼太郎。ほか、エッセイとスピーチも収録。

『宇宙からの帰還』が面白かったので読んでみた。

毛利衛と向井千秋はスペース・シャトルに乗り込み、菊池涼子は宇宙飛行士の候補になっている。この3人との対話は凡庸で期待外れだったけれど、毛利衛が各地で講演するときのエピソードだけは興味深かった。何でも、宇宙開発をアメリカのフロンティア思想と重ねて語ると、日本では受けが悪いという。さすが農耕民族はひと味違うと感心した。

面白かったのが、アーサー・C・クラークとの対話。クラークは『2001年宇宙の旅』に代表されるSF作家であり、また科学者でもある。ワープや宇宙エレベーターといった特殊な素材を持ち出して、SFチックな未来予想図を描いている。こういう楽観的な未来像は読んでいて気持ちが良い。

司馬遼太郎との対話も面白かった。宇宙飛行士の受けた精神的インパクトを、空海の受けたそれと対比して語っている。“認識の転換”というのが両者の共通点だろうか。宗教者についての本を読んでみたくなった。

2000.4.30 (Sun)

エリザベス・ハンド『12モンキーズ』(1995)

12モンキーズ(112x160)

★★★★
12 Monkeys / Elizabeth Hand
野田昌弘 訳 / ハヤカワ文庫 / 1996.5
ISBN 4-15-011145-6 【Amazon

21世紀初頭。世界はウィルスによって50億人が死滅、生き残りは地下で生活をしていた。事態を憂慮した科学者たちが、囚人を1996年にタイムトラベルさせ、ウィルスの元凶「12モンキーズ」を調査させる。

映画は5つ星級の面白さだったけど、この小説版もなかなか面白かった。なのになぜ4つ星なのか。それは映画を未見の人にとってはつまらないだろうと思ったので。正直、このノリは一度映像で観ていないとついていけないと思う。

シナリオはほぼ映画に忠実だし、最大の見せ場である空港のシーンもインサートの仕方が効果的でぐっとくる。映画を気に入った人は、本作でさらに追体験できるだろう。