2000.6a / Pulp Literature

2000.6.2 (Fri)

ピーター・ラヴゼイ『最後の刑事』(1991)

★★★★
The Last Detective / Peter Lovesey
山本やよい 訳 / ハヤカワ文庫 / 1996.1
ISBN 4-15-074710-5 【Amazon

湖から女性の死体が上がった。最後の刑事・ダイヤモンド警視が捜査する。

「最後の刑事」とは、DNA鑑定などの科学捜査を嫌い、古風な捜査に固執する主人公のあだ名。えらくアナクロ趣味な内容だけど、いちおう科学捜査の問題点をかすっている(えぐってはいない)ので、思ったほど古めかしさを感じない。

視点の変え方や終盤のツイストなど、長い物語なのに退屈させずに読ませる技量はさすが。

それと、この著者は人物造詣がすごく上手い。むかつくガキとか、プッツンしてる女とか、頑固な警視とか、厭味なエリート刑事とか、みんなキャラが立っている。このシリーズはあと2作あるので、残りも必ず読もうと思う。

ところで、「最後の刑事」を「さいごのデカ」と読んだ人は私だけじゃないはずだ。

2000.6.4 (Sun)

フランク・ジョーンズ『女性殺人者たち』(1991)

女性殺人者たち(96x140)

★★
Murderous Women: True Tales of Women Who Killed / Frank Jones
立石光子 訳 / 青弓社 / 1994.7
ISBN 4-7872-3088-3 【Amazon

女性容疑者による殺人事件を紹介したノンフィクション。全15件。

著者はカナダのジャーナリスト。しかし、本書に出てくる事件はいずれもイギリスで起きたものである。

殺人の男女差を比較したわけでもなければ、容疑者の心理に踏み込んだわけでもない。どれも単なる「女性が容疑者になった事件」に過ぎないし、後半はイギリス司法制度の糾弾に転じている。なので、看板に偽りありというか、企画として失敗している本だと思った。取り上げている事件の年代にバラつきがありすぎるのも問題だろう。今さらヴィクトリア朝のケースを挙げられてもしょうがないし、また時系列順に事件を収録していないので、余計に不統一感が目立っている。本書でもっとも面白かった記事が、「まえがき」というのもちょっと悲しい。

興味深かったケースは第8章「荒野の殺人」。ごくごく普通の女性が、配偶者の影響で猟奇殺人にはまってしまう。小さい子供を誘拐して惨殺し、その模様をテープで録音するとは……。今でいえば、スナッフビデオ愛好家みたいなものだろうか。こういう異常心理を安全な場所から解剖したいと思う。

2000.6.7 (Wed)

ドン・ウィンズロウ『ボビーZの気怠く優雅な人生』(1997)

ボビーZの気怠く優雅な人生(112x160)

★★★
The Death and Life of Bobby Z / Don Winslow
東江一紀 訳 / 角川文庫 / 1999.5
ISBN 4-04-282301-7 【Amazon

服役中のこそ泥が、出所と引き換えに麻薬組織の帝王ボビーZの替え玉になる。そして、方々から命を狙われる。

ドナルド・E・ウエストレイクを彷彿とさせるコメディ調の逃走劇。複数の勢力が主人公の預かり知らぬ理由で同士討ちを演じる。因果関係に卒がなく、卒がないわりに予定調和になっていない。スピード感あふれる展開、適度などんでん返しと、この手の小説に求められる水準は軽く満たしていると思う。

砂漠・カウボーイ・バイク軍団といった視覚的なマテリアルが、読み手の想像力を刺激する。さらに、アクション度の高さや、映画/俳優への言及(*1)など、まるで映画を意識したかのような造りだ(実際、映画化権が売れたらしい)。そんなわけで、本作はノリのいいロードムービーが好きな人向けになるのだろう。いかにもエンターテインメントといった感じの、後に何も残らないストーリーが清々しい。

ところで、田舎で無法者が暴れまわる本作は、ニール・ケアリー・シリーズの『高く孤独な道を行け』【Amazon】を連想させる。また、主人公コンビが擬似親子関係で結ばれているところも(そして実父や実母と相性が悪いところも)、同シリーズと共通している。この著者が描く、血の繋がりよりも濃い「絆」は、ロスマクが提起した家族問題に対する1つの答えなのかもしれない。

*1: 『地獄の黙示録』【Amazon】や『ボー・ジェスト』【Amazon】など。クリント・イーストウッドやゲイリー・クーパーなど。

2000.6.9 (Fri)

トマス・ハリス『ハンニバル』(1999)

ハンニバル(112x160)


Hannibal / Thomas Harris
高見浩 訳 / 新潮文庫 / 2000.4
ISBN 4-10-216703-X 【Amazon
ISBN 4-10-216704-8 【Amazon

FBIのクラリス・スターリングの元に、一通の手紙が届く。差出人はハンニバル・レクターだった。

『羊たちの沈黙』【Amazon】の続編。

トマス・ハリスは血迷ったのだろうか? 蓋を開けたらレクターを主人公にした同人小説だった。