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- 12 : トマス・H・クック『夜の記憶』(1998)
- 14 : ドン・ウィンズロウ『歓喜の島』(1997)
- 20 : E・C・ベントリー『トレント最後の事件』(1913)
2000.6.12 (Mon)
▽トマス・H・クック『夜の記憶』(1998)

★★★★
Instruments of Night / Thomas H. Cook
村松潔 訳 / 文春文庫 / 2000.5
ISBN 4-16-721865-8 【Amazon】
少年時代に姉を惨殺されたミステリ作家が、50年前に起きた殺人事件の捜査を依頼される。
これはなかなか良かった。『緋色の記憶』【Amazon】はたった1つしかない謎をもったいぶった言い回しで語っていたけれど、今回は複合的な構成だったため、語り口があまり鼻につかなかった。(1) ミステリ作家の過去の事件、(2) 50年前の殺人事件、2つの謎が用意され、そこへ作家の体験を元にした鬱病小説が絡んでくる。重苦しい語りを経て、全てが1つに収斂するところが圧巻だった。
2000.6.14 (Wed)
▽ドン・ウィンズロウ『歓喜の島』(1997)

★★★★
Isle of Joy / Don Winslow
後藤由季子 訳 / 角川文庫 / 1999.9
ISBN 4-04-282302-5 【Amazon】
1958年。欧州でポン引きを担当していた元CIA局員が、マンハッタンにある民間の調査会社に入社、上院議員の妻を警護することになる。
ノンシリーズ作品。この時代の影を象徴する内憂外患的な事件が、細部まできっちり造られていて面白く読めた。事件に直接絡まないサブプロットも、主人公の有能さを引き立てていて好ましい。
ただ、時折出てくる「親父のアフォリズム」が、ニール・ケアリーものと被るのがどうも。引き出しの少なさが気になる。
2000.6.20 (Tue)
▽E・C・ベントリー『トレント最後の事件』(1913)

★★★★
Trent's Last Case / Edmund Clerihew Bentley
大久保康雄 訳 / 創元推理文庫 / 1993.1
ISBN 4-488-11401-6 【Amazon】
財界の大物マンダスンが左目を撃たれて死亡した。名探偵フィリップ・トレントは早い段階で事件の真相を見抜くも、未亡人に惚れてあれこれ悩むことになる。
黄金時代に先駆けた近代推理小説の祖にして、「名探偵の敗北」を描いたアンチ探偵小説の古典。この小説は著者のデビュー作であるため、トレントくんは初登場でいきなり“最後の事件”を担ったことになる(作中ではいろいろ実績が語られている)。麻耶雄嵩はデビュー作(*1)でメルカトル鮎最後の事件を描いたけれど、どうやらその源流は本作にあるみたい。なるほど、たまには古典も読んでみるものだ。ミステリというジャンルは本歌どりやオマージュにあふれている。
この時代で既に「名探偵の全能性」を否定しているのがすごいし、そのやりくちもなかなか巧妙。人智を越えた奇怪なシチュエーションを設け、クライマックスでは鮮やかなストロークを決めている。本作が出た後でよく黄金時代がきたよなあ。“名探偵”を批評的に捉えるといまさら正統派はやりづらいわけで、下手したら進化の袋小路に入っていたかもしれん。でも、総体的には普通のミステリが流行ったので良かった。みんながみんな皮肉屋を気取ったらつまんないもんね。