2000.7c / Pulp Literature

2000.7.26 (Wed)

レジナルド・ヒル『ベウラの頂』(1998)

ベウラの頂−ダルジール警視シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)(80x140)

★★★★★
On Beulah Height / Reginald Hill
秋津知子 訳 / 早川書房 / 2000.6
ISBN 4-15-001690-9 【Amazon

ダルジール警視シリーズ。湖底に沈んだ村で連続少女失踪事件が発生、未解決のまま終わる。15年後、村人たちが移り住んだ先で、またもや少女失踪事件が起きる。

今回は親子関係がテーマ。子供が失踪した親は、「なぜ自分の子供が」と理不尽な思いをし、失踪しなかった近所の親は、「自分の子供じゃなくて良かった」と安堵する。そこへパスコーの娘とその友人が、髄膜炎で瀕死になるというエピソードを挿入、前述のテーマを強調させている。子供を失う悲しみとは、当然、親から子へ向かう感情的なアプローチである。ところが、本作はそこへ裏返しとなった別のアプローチを隠すことで、意外な動機というのを効果的に演出している。しかも、序盤からバリバリ伏線を張るほどの念の入りよう。その巧みな心理トリックに舌を巻いたのだった。これは叙情と技巧を備えた傑作だと思う。