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- 01 : 首藤瓜於『脳男』(2000)
- 03 : 伴野朗『士は己を知る者のために死す』(1993)
- 05 : 古処誠二『少年たちの密室』(2000)
- 08 : ジョナサン・キャロル『死者の書』(1980)
- 10 : 日垣隆『偽善系』(2000)
2000.10.1 (Sun)
▼首藤瓜於『脳男』(2000)

★★
講談社 / 2000.9 / 第46回江戸川乱歩賞
ISBN 4-06-210389-3 【Amazon】
ISBN 4-06-273837-6 【Amazon】(文庫)
警官が連続爆弾魔のアジトに踏み込むと、そこでは爆弾魔と謎の男が取っ組み合いをしていた。男の名前は鈴木一郎。彼には感情が欠落していた。
脳男という突飛なキャラクターで読ませる小説。彼は感情がないくせに知能は高く、おまけに人間離れした怪力まで持っている。脳男こと鈴木一郎はいったい何者なのか? その正体を探っていくところはなかなか面白かった。
ただ、全体のストーリーは練り込み不足でつまらない。特に爆弾魔との対決はどうにかならんかと思った。あと、枚数規定のせいか、女の子の描写が薄くて後の展開に支障をきたしている。どうやら今年の乱歩賞は不作だったみたい。
2000.10.3 (Tue)
▲伴野朗『士は己を知る者のために死す』(1993)

★★★
集英社 / 1993.5
ISBN 4-08-774011-0 【Amazon】
連作短編集。「斉・孟嘗君」、「趙・平原君」、「魏・信陵君」、「楚・春申君」の4編。
司馬遷の『史記』で有名な「戦国の四君」を題材にしている。メモとして書いておくと、4人の活動時期は紀元前3世紀の初頭から中頃まで。もっとも遅くまで生きた春申君の死亡が紀元前238年である。始皇帝の即位が同246年、秦の天下統一が同221年だから、舞台は戦国時代末期、秦が精強を誇っていた時代になる。
基本的には表題4人の列伝。著者独自の要素として、月旦の奥義を極めんとする人物鑑定家・竺夏が登場する。彼が4人の人物像を見定めんとして、ターゲットの食客になるわけだ。連作短編における主役の推移は、そのまま竺夏の視点の推移にもなっている。
押さえる所はきちんと押さえているし、分量も無駄がなくてコンパクト。独自キャラの竺夏が現代の視点を持っているところが引っ掛かるけれど、存在は控えめで作品世界に溶け込んでいる。この時代の入門書としては悪くないんじゃないかなと思った。
2000.10.5 (Thu)
2000.10.8 (Sun)
▽ジョナサン・キャロル『死者の書』(1980)

★★★★
The Land of Laughs / Jonathan Caroll
浅羽莢子 訳 / 創元推理文庫 / 1988.7
ISBN 4-488-54701-X 【Amazon】
高校教師のトーマス・アビイが、マーシャル・フランスという天才作家の伝記を書こうと思い立つ。ひょんなことから同好の女性と知り合いになり、2人で協力してリサーチすることに。フランスは既に死んでいるものの、彼の娘は健在だった。2人は執筆の許可を得るべく、彼女の元を訪ねる。
これは凄かった。出てくる人物がやたら奇妙で、思わせぶりな雰囲気が『ジョジョ』(3?4部あたり)っぽい。つまりまあ、新手のスタンド使いって、その正体が分かるまでは妙に薄気味悪いけれど、この小説の登場人物もああいうタイプなんだよね。平たく言えば、秘密を持っているからこその恐怖。まず敵か味方か不明だし、どのような能力なのかも分からない。余所者に対する不安感がすごく似ている。
「これは怪しい!」と思っていた女が、ただのセックス要員(ヒロインとも言う)だったのに驚いた。だってこいつ、マリオネット作ってるんだぜ、マリオネット。普通、こんなのが協力を申し出てきたら、ぜったい裏があると思うだろ。ファースト・コンタクトから変人の匂いを漂わせていたし。それがまさかあのような仕打ちを受けるとは……。結局、マリオネットは何だったのだろう? てっきり重要な伏線だと思っていたよ。
世界の秘密が明かされてからが本番だろう。創造者のねじくれたエゴに驚倒しつつ、病的でぶっ飛んだ展開に唖然とする。そして、この流れに寄り添った衝撃のエピローグ……。随分と人を食った小説だなと思った。
2000.10.10 (Tue)
▽日垣隆『偽善系』(2000)

★★★★
文藝春秋 / 2000.9
ISBN 4-16-356600-7 【Amazon】
ISBN 4-16-765504-7 【Amazon】(文庫)
戦後民主主義の偽善をテーマにした辛口エッセイ集。
携帯電話のマナーや郵便局のサービスといった身の回りの体験から、教育問題や少年法といった日本の法制度まで、さまざまな偽善を斬っている。また、「さらば二十世紀の迷著たち」というトピックで、100冊の本をこき下ろしている。
声の大きい人が喚き散らした知性のない毒舌本かと思ってたら、言ってることは明快で極めてまっとうだった。著者の罵詈雑言も、エンターテインメントとして鑑賞に耐えうるレベルに達している。ところどころ笑い飛ばしながら読んだ。
>>『偽善系II』へ
