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- 04 : 星新一『盗賊会社』(1968)
- 07 : ジュール・ベルヌ『十五少年漂流記』(1888)
2000.11.4 (Sat)
▽星新一『盗賊会社』(1968)
★★★★
新潮文庫 / 1985.8
ISBN 4-10-109832-8 【Amazon】
短編集。「雄大な計画」、「新しい社長」、「名案」、「ぼろ家の住人」、「滞貨一掃」、「あるロマンス」、「あすは休日」、「盗賊会社」、「殺され屋」、「あわれな星」、「やっかいな装置」、「程度の問題」、「趣味決定業」、「装置の時代」、「気前のいい家」、「最初の説得」、「仕事の不満」、「あるノイローゼ」、「声の用途」、「紙幣」、「大犯罪計画」、「感情テレビ」、「悲しむべきこと」、「時の人」、「善意の集積」、「黒い棒」、「なぞの青年」、「特許の品」、「打ち出の小槌」、「あるエリートたち」、「最高のぜいたく」、「無料の電話機」、「夕ぐれの行事」、「帰宅の時間」、「助言」、「長い人生」の36編。
アイディア勝負のショートショート集。どれも機知に富んでいて面白いし、ハズレらしいハズレも特に見当たらない。1作あたり4〜5ページと手軽に読めるので、就寝前のお供にぴったりだと思った。
以下、各短編について。
「雄大な計画」
R社の入社試験を青年が、社長の依頼でK社へ産業スパイとして入社する。
けっこうな規模の時間の移ろいを淡々と綴っていて良い。ショートショートはアイディア中心の形式なんだなと改めて思い知らされる。
「新しい社長」
中年の課長が社長に呼び出され叱責される。
確かにこんな社長は嫌だ! 機械とは使うものであって使われるものではないよね。
「名案」
CMソングを作るべく霊媒で作曲家の霊を呼び出す。
やはり日本では昔からベートーベンが作曲家の代名詞だったのか。内容はいまいち。
「ぼろ家の住人」
ぼろ家の住人のドキュメンタリー番組を製作する。
これは素晴らしい。オチが全然想像つかなかった。正体がアレで、しかも電波に乗せて……。
「滞貨一掃」
商品を販売すべく余所の星に繁殖力の強いヘビを送りつける。
犯罪的な方法で無理矢理需要を増やすという。まるで発展途上国で戦争をたきつける兵器会社みたいだ。
「あるロマンス」
妻子ある中年男が美人に告白する。
国の諜報部が他国の外交官相手にやってるやつ。効果は覿面なんだろうなあ。
「あすは休日」
2027年。いつも通り出勤して一日を終えるかと思いきやそこでサプライズが。
うーん、何か団塊の世代特有の話のような。そういえば、『幼年期の終り』でも似たような心情が出てきたけれど、あっちでは自殺者までいてびっくりしたぞ。アイデンテンティを保つ心ってのは意外と脆い。
「盗賊会社」
盗賊を生業とする会社の話。
現実にある窃盗団をスケールアップしつつ、やってることがやたら堅実でそのギャップが面白かった。
「殺され屋」
相手を挑発する。
推理小説にこういうのありそうだね。
「あわれな星」
異星人が武力にものを言わせて脅迫してきたので、別の異星人の助けを求める。
これは二進も三進もいかないという感じ。というのも、そのまま要求をはねつけたらもの凄い嫌がらせを受けるだろうから。おとなしく騙されていたほうが被害も少ない。
「やっかいな装置」
宇宙から異様な装置がやってきた。その装置は不愉快な音と匂いを発している。
確かにたちの悪いギャングだ。
「程度の問題」
用心深いスパイの話。
過ぎたるは及ばざるがごとし。
「趣味決定業」
博士が趣味を決定する機械を発明する。
うわ、したたかだ! ラスト一段落が最高で、つい苦笑したくなる。
「装置の時代」
人間の生活を色々な装置がサポートする時代。
形ある物は必ず壊れる。
「気前のいい家」
エヌ氏の家に強盗が入ってくる。
すごい防犯装置。
「最初の説得」
禁断の果実を食べたイブがアダムにも食べるよう説得する。
アダムは人間らしい感情のない朴念仁で(禁断の果実を食べてないから)、イブは説得に苦労する。
「仕事の不満」
酒を飲んで幻覚を見るサラリーマン。
これも団塊世代っぽい話で、「あすは休日」を思い出した。幻覚で見るのが「ピンク色の象」というのが何か可愛い。
「あるノイローゼ」
仕事の失敗について。
いつの時代もテクノロジーの発達は人を憂鬱にさせる。現代は現代で個人情報が簡単に流出しているし。
「声の用途」
声帯模写で思わぬ金儲け。
役に立たないと思われた能力で事態に対応する話には、不思議な爽快感がある。そういえば、どんな能力にも適材適所があるってディオ様も言ってたよ。
「紙幣」
地球の紙幣を手にした宇宙人が……。
良いなあ、こういう夢物語。フィクションなのに(だからこそ?)羨望の気持ちが沸き起こってくる。
「大犯罪計画」
刑務所帰りの泥棒が、中年の紳士から大犯罪計画を持ちかけられる。
予想外の捻りがあって楽しめた。
「感情テレビ」
テレビ番組に過度に感情移入できる装置。嗅覚神経を刺激したり、感情を高めたり。
テレビの良いところは生々しくないところだと思うのだけど。
「悲しむべきこと」
サンタクロースが強盗にくる。
こういう捻り方大好き。災い転じて福と為す?
「時の人」
浦島太郎が竜宮から帰ってくる。テレビに取材されたり、スパイ疑惑を受けたり。
何百年もの時を経ると誰も知った人がいないから、ことは生き残りの日本兵以上に複雑になる。
「善意の集積」
人々から親切を受けてきた盲目の少女が、異形の宇宙人と出会う。
すごいブラックで驚いた。純真な少女の絶望が!
「黒い棒」
ジャングルに住むとある部族の酋長が、宇宙人から特殊な黒い棒を受け取る。
酋長は世界を知らないからタガがきかない。まるでキチガイに刃物のような危険な状況になっている。天然は怖いぜ。
「なぞの青年」
青年が莫大な金を使って子供たちのために公園を作る。
いやー、この時代でも政治家や公務員は不正の代名詞になっていたんだなあ。真っ当な道徳心を持っている人は生きていかれない。
「特許の品」
異星人の設計図を使って商品を開発する。
SFというのは現実のアナロジーになっているから面白いのだ。今回のケースはイギリスが中国に押しつけたアヘンを思い出す。
「打ち出の小槌」
打ち出の小槌について。
便利アイテムにも変にバランスが働いている。
「あるエリートたち」
大企業のK社が新入社員の中から4人のエリートを選抜。彼らに仕事をさせず、海岸の寮で好きに生活させる。
確かに理屈は通っている。大昔の作家にもこんな感じの人がいたようだし。
「最高のぜいたく」
大金持ちの最高のぜいたく。
意外と庶民的だった。冷暖房完備の現代では、一般人でも普通にこの種の贅沢をしている。
「無料の電話機」
通話中にCMが流れる無料の電話機。
会話に応じたCMが流れる優れものである。
「夕ぐれの行事」
夕暮れ時の町をヤクザなロボットが徘徊する。
風刺のきいた佳品。だからいじめは無くならない。
「帰宅の時間」
帰宅の時間に遅れた夫への妻の対応。
凄腕のスパイも嫁には頭が上がらない。仮に正体を知っていたとしても力関係は変わらないような気がする。
「助言」
某国の元首が異星人からミサイル防御装置の設計図をもらう。
これも風刺のきいた佳品。たしか冷戦下で本作みたいなシチュエーションがあった。
「長い人生」
寿命が延びた時代の話。
経済構造はそのままに寿命だけ延びたってことかな。筒井康隆の「定年食」とセットで読みたい。
2000.11.7 (Tue)
▲ジュール・ベルヌ『十五少年漂流記』(1888)

★★★
Deux ans de vacances / Jules Verne
瀬川昌男 訳 / 集英社 / 1994.3
ISBN 4-08-274024-4 【Amazon】(抄訳)
ISBN 4-488-60605-9 【Amazon】(完訳)
1860年3月、チェアマン学園の生徒15人が無人島に漂着する。彼らは島に拠点を作り、状況を把握すべく探険を試みるが……。
『機動戦士ガンダム』【Amazon】の元ネタらしいので読んでみた。確かに子供たちだけで問題を処理する手探りの苦労みたいな雰囲気が似ている。ただ、戦争の渦中にいたホワイトベースとは違って、本作の少年たちは無人島での生活をこなせばいいだけだから、要求されるハードルの高さは段違いと言えるだろう。少年たちの不仲は『蠅の王』ほど酷くはならないし、「敵」との闘争も大人の登場で乗り切ることができる。結局のところ、あれだけの事件があっても子供たちは誰1人として死ななかったわけで、安心の少年小説とはこんなものなのかと、そのドラマツルギーに感じ入ったのだった。いやだって、普通15人も子供がいたら1人くらいは病気に罹るよねー? あと、仮にも実弾で撃ち合うのだから、負傷だってももっとあり得たと思うのだけど、まあそんなのは野暮ないちゃもんか。とにかく、冒険と友情をお手軽に楽しめればそれでいいのかもしれない。
物語の序盤で子供たちは、無人島に「チェアマン島」という名前を与えることになる。かつて西洋の入植者たちが、先住民を無視して勝手にラベルを貼ったように、自分たちにゆかりのある名前で呼び表すようになる。ところが、中盤になってからは様子が一変。ひょんなことから、島の所在と本当の名前が明るみに出てしまう。つまり、「アノーヴェル島」という立派な名前がついていたというオチだ。ただ、この名前も昔の西洋人が勝手につけたような気配があって、何だかすごいアイロニーを感じるのだった。