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- 12 : 星新一『ようこそ地球さん』(1961)
2000.12.12 (Tue)
▽星新一『ようこそ地球さん』(1961)
★★★★
新潮文庫/ 1972.6
ISBN 4-10-109802-6 【Amazon】
短編集。「デラックスな拳銃」、「雨」、「弱点」、「宇宙通信」、「桃源郷」、「証人」、「患者」、「たのしみ」、「天使考」、「不満」、「神々の作法」、「すばらしい天体」、「セキストラ」、「宇宙からの客」、「待機」、「西部に生きる男」、「空への門」、「思索販売業」、「霧の星で」、「水音」、「早春の土」、「友好使節」、「蛍」、「ずれ」、「愛の鍵」、「小さな十字架」、「見失った表情」、「悪をのろおう」、「傲慢な客」、「探検隊」、「最高の作戦」、「通信販売」、「テレビ・ショー」、「開拓者たち」、「復讐」、「最後の事業」、「しぶといやつ」、「処刑」、「食事前の授業」、「信用ある製品」、「廃墟」、「殉教」の42編。
面白かったのは、「たのしみ」、「不満」、「宇宙からの客」、「悪をのろおう」、「テレビ・ショー」、「開拓者たち」、「復讐」、「しぶといやつ」、「処刑」、「食事前の授業」の10編。
以下、各短編について。
「デラックスな拳銃」
私財を投げ出して「デラックスな拳銃」を開発した男が、アパートを出て街に出る。
この拳銃、まるで現代の携帯電話みたい。本来の用途を離れてじゃんじゃんオプションがくっついている。
「雨」
氷河期で暮らしがかつかつの紀元4000年。本ばかり読んでいた男が、タイムマシンで過去へ行って食べ物を調達してくる。
オチについてだけど、実際にタイムマシンがあったらこういう現象が起きてもおかしくないかも。
「弱点」
宇宙生物を持て余す博士たち。
うわ。現代人の倫理観に挑戦してくるブラックなカラクリだ。これが2〜300年前だったら奴隷を犠牲にするだろうけど、人権意識の発達した今だったらどう決着をつけるのか。死刑囚を使う?
「宇宙通信」
宇宙通信で脈があった方角に、印刷物を載せた無人のロケットを送る。
宇宙人は我々人類とは異なる進化体系を持った、グロテスクな存在じゃないと気が済まないんだよね。
「桃源郷」
地球と似た環境にあると思しき遊星に、カメラを搭載した探査船を送り込む。
グッドジョブ! としか言いようがない。そりゃ先住民にとって植民は死活問題だよな。
「証人」
刑事が殺人事件を捜査する。
普通のミステリかと思っていたら、物語は意外な展開に。半世紀も前から、こういう大衆消費社会的な世の中になっていたのだなあ。今と全然変わってない。
「患者」
医者が催眠術で青年の病気(女への劣等意識)を治す。
医者も人の子よ。
「たのしみ」
田舎の出来事。
外から見ると牧歌的だけど、中では独特の因習が働いているという。田舎の本質を捉えたおっかない短編だった。横溝正史みたいな視線。
「天使考」
神さまが怠けている天使たちを働かせるべく、天国の仕事に競争原理を持ち込む。
そうか、「エロスとタナトス」というお決まりの組み合わせは、生命の回転効率のためにあったのか。
「不満」
ロケットで宇宙に流された「おれ」が宇宙人と出会う。
『猿の惑星』に匹敵する驚愕のラスト!
「神々の作法」
王が支配する国に神々がやってくる。
王の国=植民地候補、A国・B国=スペイン・オランダ。まるで大航海時代のような図式だ。
「すばらしい天体」
宇宙のオアシスのような素晴らしい天体に辿り着く。
やっぱりユートピアなんてのはそこらに転がってはいない。
「セキストラ」
性的満足をおぼえる装置が世界規模で広まる。
資料の切り抜きを集めて一連の事実を炙り出す。
「宇宙からの客」
宇宙からやってきた空飛ぶ円盤。その中に乗っていた「客」を地球の人たちが歓迎する。
お祭り騒ぎに冷や水を浴びせるオチが良いね。
「待機」
植民地候補の星に着陸。現地人と接触する。
リスだからって舐めちゃいけねー。
「西部に生きる男」
西部の男2人が荒野で対峙する。
めくるめくどんでん返し、あるいは少年ジャンプ的エスカレーション。
「空への門」
宇宙飛行士を目指した少年が勉学・体力作りに励むが……。
残酷なオチに見えるけれど、人類最強クラスの頭脳と肉体が得られたんだから、それでいいじゃんと思う。
「思索販売業」
セールスマンが思索するためのアイテムを売る。
思索販売業という全体のアイディは面白いけれど、個別のアイテムが凡庸でいまいちだった。
「霧の星で」
霧の星に漂着した2人の男女。彼らの元に救援者が現れる。
強すぎる欲望は、いとも簡単に道徳を駆逐する。
「水音」
冴えない会社員が飼っている珍しいペット。
これは予想がつかなかった。当然、ヘビやサソリみたいのではない。
「早春の土」
精神病院に入院している患者が、敷地内で穴を掘っている。たまたま取材に来ていた記者がそれを手伝う。
キチガイが怖いのは、独自の論理体系に従って行動しているからなんだろうな。それはしばしば我々の倫理・道徳と対立する。
「友好使節」
異星人が友好使節を送ってきた。
人間の特色が浮き彫りになっていてさすがSFって感じ。相対化の妙。
「蛍」
人工の蛍のなかに本物の蛍。
むー、ロマンチックな。
「ずれ」
シューター・サービス会社が引き起こす様々なずれ。
「愛の鍵」
物体の代わりに言葉が鍵になっている時代。
むー、ロマンチックな。しかし、あまり似合ってないぞ。
「小さな十字架」
昭和初期を舞台にした童話。クリスマス・ストーリー。
その祈りはかなえられたでしょう。なぜならキリストは、東のはて日本でも、やはり貧しく悩める者の救い主なのですから。(p.207)
キリスト教のパンフレットに掲載されてそうな内容だった。
「見失った表情」
整形美容師に違法な手術をしてもらう。
人間の裏表というのがこの著者の関心事なのか。肉体と精神の乖離というか。
「悪をのろおう」
逃げた泥棒を捕らえるべくわら人形を使う。
オチが秀逸。わすが3行で無駄がない。
「傲慢な客」
傲慢な客を乗せて宇宙旅行する。
標準的な小咄。
「探検隊」
大男と怪獣の住む惑星。
タロー、ジローって時事ネタ? 普通につまらなかった。
「最高の作戦」
好戦的な宇宙生物の侵略を防ぐ。
この支配者・被支配者の関係は、夫婦関係のアレゴリーなのだろうな。
「通信販売」
輸送ロケットを使った通信販売業を営む男。
まあ意外な展開。
「テレビ・ショー」
子供にテレビ・ショーを見せる親。
「テレビを見ると馬鹿になる」というのは現代では定説だけど、本作はそれを逆手に取った奇抜なストーリーを作っている。面白い。
「開拓者たち」
食べ物が原因で病気が蔓延している開拓者の惑星。そこへ救世主が現れる……。
妻の喜びの言葉がこえー! 自分がどれだけ身勝手なことを言ってるのか理解してなさそうだ。
「復讐」
宇宙人が大挙してきて理由もなく地球を壊しまくる。
人間の獣性を示した好編。撃鉄を起こした銃は発射されねばならない。
「最後の事業」
うるさい世の中を嫌った事業家たちが、冷凍睡眠で未来へ旅立つ。
うわ、これもオチが黒いな。しかも悪意で指したわけじゃないから、尚更始末に負えない。
「しぶといやつ」
地球を乗っ取りに来た宇宙人が、手始めに現地人を捕獲するが……。
これは切れ味が鋭い。宇宙人の攻撃に平然としているこの「しぶといやつ」は何者だろう? と不思議に思いながら読んだ。
「処刑」
死刑囚を火星に送ってサバイバルさせる。持ち物はスイッチポンで水の出てくる銀の玉。しかし、規定回数を超えるとその玉は爆発する。囚人はそのタイミングを知らされていない。
あまりに非人道的な処刑法だけど、機械が支配する世の中だから仕方がない。様々な苦難を経て悟りに達するところがなかなか。
「食事前の授業」
カビの観察をする生徒たち。
ダイナミックな視点の移動が良い! ぐいーっときた。
「信用ある製品」
宇宙人が武器と防具を売りに来る。
「矛盾」から一捻りしたオチに感心。よくこんなの思いつくなあ。
「廃墟」
3000万年前の町の廃墟。
想像もつかないほどのタイムスケールだ。
「殉教」
霊界にいる死者と通信できる装置が開発された。
人間というものは、なんのために生きているのだろう。この答えが出たのだった。つまり、死の恐怖だけで支えられていたらしい。文明の進歩は、未知にもとづく恐怖をつぎつぎに消し、死こそ最後に残された、ただ一つの、最大の恐怖だった。だが、それも未知のせいだったし、いまや機械がその黒い雲を消した。(p.341)
死後の世界が約束されているからといって、そう簡単に自殺するとは思えないけど……。しかしまー、我々が生きる最大の理由が「死への恐怖」にあることは明白で、この壁を乗り越える絶対的な思想が確保できれば、自殺者はうなぎ登りに増えるだろう。精神的に納得した後は、苦痛なき死を迎えるための自逝センターも必要だ。