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- 22 : ピーター・ラヴゼイ『帽子屋の休暇』(1973)
- 28 : 井上靖『敦煌』(1959)
- 30 : 大藪春彦『ザ・特殊攻撃隊』(1987)
2001.1.22 (Mon)
▲ピーター・ラヴゼイ『帽子屋の休暇』(1973)
★★★
Mad Hatter's Holiday / Peter Lovesey
中村保男 訳 / ハヤカワ文庫 / 1998.10
ISBN 4-15-074712-1 【Amazon】
クリッブ部長刑事シリーズ4作目。ブライトンの水族館で女性のバラバラ死体が発見される。
2部構成。第1部でストーカー気質の男の行動が、第2部でクリッブ部長刑事による捜査が描かれる。第1部は情景描写が凝っているうえ、情勢に動きがないので退屈極まりない。けれども、そこは第2部のコンパクトな展開で上手く挽回している。2つの事件の関連や動機、殺害の方法など、メカニズムの面でも非常に安定した小説だった。
ところで、「喘息持ち」ってホントにこんなんで死んじゃうのだろうか。だとしたら恐ろしい病気だよなあ。
2001.1.28 (Sun)
▽井上靖『敦煌』(1959)
★★★★
新潮文庫 / 1987.5
ISBN 4-10-106304-4 【Amazon】
天聖4年(1026年)。官吏任用試験に落ちた趙行徳が、西域に流れて西夏の漢人部隊に入隊する。
ストイックな歴史小説だった。北宋時代の西域という、個人的にあまり馴染みのない題材だったけれど、登場人物がみな生き生きと存在していて読ませる。戦争に従事する兵卒、町を闊歩する一般人、誰も彼もが戦乱期の空気を体現しているのが良い。文化系男子(それも架空の人物)を主役とした地味な内容であるにもかかわらず、その砂漠のように渇いた世界観に引きずり込まれたのだった。
趙行徳が新興の西夏文字にふらふら導かれていくところが印象深い。文字は民族のアイデンティティに関わるものだから、多大なコストをかけてでも自分たちのものを作ろうとする。きちんと一個の文化を創り上げたところに、西夏の勢い、および歴史の活力というものを感じる。
物語は敦煌の歴史的意義を踏まえた、ある意味で必然的な展開を見せる。単純なプロットなのに不思議と牽引力があるのは、濃密で地に足のついた世界ができあがっているからだろう。なかなか衝撃的だったので、著者の歴史小説は今後もフォローしていきたい。
2001.1.30 (Tue)
▽大藪春彦『ザ・特殊攻撃隊』(1987)
★★★★
徳間文庫 / 1987.9
ISBN 4-19-588350-4 【Amazon】
短編集。「C・I・Aの暗殺者を消せ」、「みな殺しの銃弾」、「連隊旗奪還作戦」、「"紅軍派"大使拉致す」、「瀕死の38度線」、「ジャングルの豹」、「われ、サイゴン米大使館を占領せり」の7編。
長編は単調でだらだらしているけれど、短編は贅肉が削ぎ落とされていてとても読みやすい。まるで別人が書いたような作品群だった。
以下、各短編について。
「C・I・Aの暗殺者を消せ」
伊達邦彦もの。来日予定のソ連副首相をアメリカCIAが暗殺することになった。イギリス情報部の伊達がその暗殺者たちを暗殺する。
冒頭のベッドシーンでげんなりした。★★★。
「みな殺しの銃弾」
伊達邦彦もの。伊達が付き合っていた女が誘拐される。
伊達邦彦もののナル入った描写には色々な意味で頭が下がる。幻滅のラストシーンはかなり衝撃的。余韻の作り方が上手い。★★★★。
「連隊旗奪還作戦」
伊達邦彦もの。北朝鮮に潜入し、アメリカの連隊旗を奪還する。
面白いんだけど、ちょっと相棒が不用意すぎないか? ★★★★。
「"紅軍派"大使拉致す」
伊達邦彦もの。新左翼組織に潜入し、拉致されたアメリカ大使を奪還する。
乱交シーンから思想団体のいかがわしさが伝わってくる。街中で銃を乱射して人を殺しまくるところが爽快。★★★。
「瀕死の38度線」
日本人が軍事政権下の韓国に連れて行かれてドンパチ。★★★。
「ジャングルの豹」
南ベトナム解放戦線。
淡々とした一人称叙述が素晴らしい。★★★★★。
「われ、サイゴン米大使館を占領せり」
南ベトナム解放戦線。
この武器描写のマニアックさは、現代作家だと戸梶圭太や小川勝己に相当する? ★★★★。