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- 01 : 殊能将之『黒い仏』(2001)
- 02 : 井波律子『酒池肉林』(1993)
- 03 : 長沢工『天文台の電話番』(2001)
- 08 : 橋本治『二十世紀』(2001)
- 10 : 津本陽『群雄譚 項羽と劉邦』(2000)
2001.2.1 (Thu)
▲殊能将之『黒い仏』(2001)

★★★
講談社ノベルス / 2001.1
ISBN 4-06-182167-9 【Amazon】
ISBN 4-06-273936-4 【Amazon】(文庫)
仏教の秘宝を探すよう依頼された名探偵・石動戯作。早速、助手のアントニオを連れて福岡に乗り込む。現地では奇妙な殺人事件が起きていた。
アンチミステリというよりは、一発ネタのアイディア小説といったところ。ミステリの世界に別ジャンルを持ち込むことで、ミステリのコードを麻痺させている。ありていに言えばパロディ。もっと言えば悪ふざけ。「黒い仏」=クロフツと見せかけたアリバイ・トリックが、リゲティの引用(これがすごく絶妙!)を機に別の異相に転じている。
狙いはまあ悪くないのだけど、ただ、所詮はどうやってコードを破壊するのかという不毛な競争にすぎないので、特に感心することはなかったかな。同人誌の延長上みたいな感じだ。
2001.2.2 (Fri)
▲井波律子『酒池肉林』(1993)

★★★
講談社現代新書 / 1993.3
ISBN 4-06-149139-3 【Amazon】
中国王朝贅沢史。歴代の皇帝や権力者、貴族・商人・文化人の奢侈をまとめている。
殷の紂王は文字通り酒池肉林の宴を開き、物量の贅沢を追求した。秦の始皇帝は巨大な建築物(安房宮など)や不老長寿の探求など、支配欲に贅を見出した。そして、東晋・隋・唐になると、「量」の贅沢から「質」の贅沢へと移行した。たとえば、珍しい書画を収集するコレクター趣味などである。
とまあ、贅沢の趣向が時とともにソフィストケイトされているわけだ。さらに、身分によっても贅沢のバリエーションがあったりして面白い。
特に興味をそそられたのが、「商人の贅沢」に出てきた『金瓶梅』の解釈である。『金瓶梅』は『水滸伝』の端役が主人公の通俗エロ小説。飽くなき欲望を追求していって、遂には破滅に終わる話なのだけど、そこには贅沢の哲学がつまっているようだ。
本書の欠点はその文章だろう。慣用句や四字熟語など、紋切り型の乱用が鬱陶しい。カタカナ語の使い方も変だし、妙なところで個性を出している。
2001.2.3 (Sat)
▽長沢工『天文台の電話番』(2001)

★★★★
地人書館 / 2001.1
ISBN 4-8052-0673-X 【Amazon】
国立天文台広報普及室の人によるエッセイ集。
著者の仕事はサポートセンターみたいなもので、天文に関する一般人からの質問に電話で答えている。サポセンというのはどの業種も似たような状況なのだろう。天文台にも困った問い合わせが多数あるようだ。本書はそういった迷惑話をユーモラスに描きつつ、暖かいエピソードを紹介したり、日本の理科教育を憂いたり、学術に対する熱いメッセージを説いたりしている。
本書を読んで分かるのは、この著者は天文学が好きで好きでしょうがないということだ。そしてこの態度が、質問者を笑い者にする本とは一線を画している。こういう愛情に溢れた本には好感が持てる。
国立天文台のWebサイト
2001.2.8 (Thu)
▽橋本治『二十世紀』(2001)

★★★★
毎日新聞社 / 2001.1
ISBN 4-620-31496-X 【Amazon】
ISBN 4-480-42019-3 【Amazon】(文庫)
ISBN 4-480-42020-7 【Amazon】(文庫)
20世紀をテーマにした編年体コラム。1900年からスタートしているので正味101年分になっている。
著者によれば、「20世紀とは19世紀的な古さから脱却する世紀」であるらしい。2度の大戦によって、帝国主義という19世紀的な原則が瓦解していった。その遺物として冷戦構造が生まれ、あれよあれよと90年まで続いてしまったというわけである。
著者は物事の捉え方が鋭いのでいろいろ参考になる。編年体で1年ずつ積み重ねていく形式も、歴史の流れを分かりやすくしていて良い。
