2001.2b / Pulp Literature

2001.2.13 (Tue)

トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』(1958-)

ティファニーで朝食を(96x140)

★★★
Breakfast at Tiffany's / Truman Capote
龍口直太郎 訳 / 新潮文庫 / 1988.2
ISBN 4-10-209501-2 【Amazon

短編集。「ティファニーで朝食を」、「わが家は花ざかり」、「ダイヤのギター」、「クリスマスの思い出」の4編。

翻訳があまりに酷くて表題作しか読めなかった(というか無理して表題作だけ読んだ)。聞くところによると、本書は表現が古臭いだけでなく、誤訳のオンパレードでもあるという。名作の真価を伝えるためにも早期の新訳が望まれる。

以下、各短編について。

「ティファニーで朝食を」"Breakfast at Tiffany's"

第2次世界大戦下のニューヨーク。駆け出し作家が奔放な生活を送る女ホリー・ゴライトリーと知り合う。

翻訳が翻訳なので筋書きを確かめるような読み方になってしまった。原書とはだいぶニュアンスが違っていそうなので、作品の善し悪しは判断できない。とりあえず、犯罪が絡む終盤の展開には驚いた。映画版とはまるっきり異なった結末を迎えている。

ホリーの態度に腹を立てた語り手は、彼女を「メチャメチャに殴りつけ」るのだけど(p.91)、それにしてもこれって本当なのかねえ? 作家とはいえ腐っても男なんだから、その腕力で殴ったらただでは済まないと思うのだけど……。翻訳に不安があると色々な場面で疑心暗鬼になる。

「わが家は花ざかり」

「ダイヤのギター」

「クリスマスの思い出」"A Christmas Memory"

『誕生日の子どもたち』の項を参照。

>>Author - トルーマン・カポーティ

2001.2.17 (Sat)

アントニオ・タブッキ『逆さまゲーム』(1988)

逆さまゲーム(90x140)

★★★
Il Gloco Del Rovescio / Antonio Tabucchi
須賀敦子 訳 / 白水uブックス / 1998.8
ISBN 4-560-07125-X 【Amazon

短編集。「逆さまゲーム」、「カサブランカからの手紙」、「芝居小屋」、「土曜日の午後」、「小さなギャツビイ」、「ドローレス・イバルーリは苦い涙を流して」、「空色の楽園」、「声たち」、「チェシャ猫」、「行き先のない旅」、「オリュンピアの一日」の11編。

捻りの効いた叙情短編集。なのだけど、実のところ細部がよく分からなくて、特に後半の短編群はお手上げだった。まあ、気が向いたら読み直すということで。

以下、各短編について

逆さまゲーム

「逆さまゲーム」

最近死んだある女との思い出。反政府運動をきっかけに知り合う。

映像化にぴったりの「絵になる」話だった。暗号にペソアの翻訳を使い、「逆さま」には2つの意味があり、女には裏がある。文章の流れがどことなく幻想的で、何となく先を読まされているような気がするのだけど、終わってみればせつない余韻が残っている。★★★★。

「カサブランカからの手紙」

女に宛てた18年ぶりの手紙。

連城三紀彦を彷彿とさせる企みに満ちた一編。手紙の内容はそれほど興味を惹くようなものではない。しかし、オチが上手く捻ってあって「やられた!」という衝撃がある。★★★★。

「芝居小屋」

アフリカに赴任していた語り手が、小屋に招かれシェイクスピア劇を朗読してもらう。

これは究極の一人芝居か。朗読の域を越えた演技でもって様々な劇をこなしていく。職人芸らしいハンドメイドな雰囲気と、なるほどなーと納得させられる軽妙なオチ。★★★。

「土曜日の午後」

少年と少年の家族とイヴォンヌ伯母さん。

そう思ったとき、母さんが建物の角から姿をあらわした。(中略)見ていて、ぼくはたまらなくなった。母さん、と呼びかけて、こういってあげたかった。ぼく、ここにいるよ。でも、ひと言もいえないままでいると、ふいに、ブルーベリーの甘酸っぱい味が口いっぱいにひろがり、部屋も空気も、ぼくのまわりの世界ぜんたいが、それに浸食されてしまった。

包み込むようなこのラストの描写はずるい。タブッキはまとめ方が上手すぎる! ★★★。

「小さなギャツビイ」

フィッツジェラルド好きの作家の話。

『グレート・ギャッツビー』【Amazon】も『夜はやさし』【Amazon】もおぼえてない。★★★。

「ドローレス・イバルーリは苦い涙を流して」

息子や夫を回想する女。

これも「土曜日の午後」に負けないくらい叙情的に締めてくれる。★★★★。

「空色の楽園」

日本画家の専門家のもとで秘書として働く女性。

川端康成が、

「たましいの野原をやさしく撫でる、あるかないかのそよぎ」

と評されている。登場人物がみんなスノッブで、ある男が表題について小馬鹿にしたことを言っている。まあ確かに、詩的な表現っていうのはとってつけた感じがあるけれど……。★★★。

「声たち」

電話。何が何だか。

いくつかの短編(1981年―1985年)

「チェシャ猫」

不思議の国のアリス。

「行き先のない旅」

詩人のディーノ・カンパーナ。

「オリュンピアの一日」

古代ギリシア。競技者の少年が大会で良い記録を残すも……。

これはやられた。ピンダロスって誰だか知らないけど、使命に目覚めて宣言する場面はかなりくるものがある。★★★★。

>>Author - アントニオ・タブッキ