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- 07 : 陳舜臣『中国の歴史 (5)』(1986)
- 08 : ウィリアム・バロウズ『内なるネコ』(1992)
2001.5.7 (Mon)
▽陳舜臣『中国の歴史 (5)』(1986)
★★★★
講談社文庫 / 1991.1
ISBN 4-06-184786-4 【Amazon】
中国史を独自の切り口で語った解説本。この巻では、南宋の受難から明の成立までを扱っている。
『中国の歴史 (4)』の続編。遼や金、北魏など、異民族王朝に顕著なのが中国文明心酔症で、みんながみんな中国に同化してしまうという傾向が興味深かった。川は上流から下流に流れるものだから、どうしたって泡沫民族の習慣なんか、中華文明の奔流にのみこまれてしまう。漢民族にしても周辺民族にしても、人種としての見た目は大して変わらないから、適応するのにさしたる困難もなかったのだろう。たとえるなら、大相撲でモンゴル出身の力士が活躍しても、大多数の日本人は違和感をおぼえないような感じ。
アラブやヨーロッパなど、中国に匹敵する文明に接してきたモンゴルが、他民族のような同化の道を辿らなかったのも興味深い。見聞が広いから上手く相対化して対処している。これはカルト宗教に騙される人とそうでない人の差みたいで、なかなか教訓的な話である。
というわけで、この巻は異民族の興亡がメイン。
2001.5.8 (Tue)
▲ウィリアム・バロウズ『内なるネコ』(1992)
★★★
The Cat Inside / William S. Burroughs
山形浩生 訳 / 河出書房新社 / 1994.10
ISBN 4-309-20234-9 【Amazon】
1985年5月。著者は「ネコの本」の打ち合わせのために荷造りをした。ネコの思い出と共に自分の人生をたぐり寄せる。
図書館で手に取ったらページがスカスカだったので。カットアップだかバストアップだか知らないけれど、死ぬほど読みづらいという噂を聞いていたんだよね。話の筋とは無関係な文章を大量にぶちまけるとか。だから今まで敬遠していたのだけど、本書はかなりまっとうな文章で読みやすかった。どうやら、『裸のランチ』【Amazon】、『ソフトマシーン』【Amazon】、『ノヴァ急報』【Amazon】などといった、初期・中期の作品が危険みたい。いきなり飛び込むのはきついので、まずは浅瀬から徐々に慣らしていこうと思う。
『内なるネコ』ということで、話はネコとの暮らしに留まらず、過去に著者と関わった人たちも出てくる。始めはネコの名前なんだかヒトの名前なんだんか判然としないのもあったけれど、途中で人間らしいエピソードが出てきたし、解説でもフォローされていたので事後的に了解した。なるほど、著者はおかま寄りの両刀で男の愛人がいたのか。というか、著者はとんでもなく壮絶な人生を送っていたのだなあ。ジャンキーになったり、妻を射殺したり、保釈後は外国に逃亡したり。まあ、その辺はあまり本書と関係ないのでここでは省略するけれど。ともあれ、著者と別れたあとの愛人の死に方が、いかにも海外後進地域って感じでぎょっとする。東南アジアとか、ラテンとか、アフリカとか、何で浮気くらいですぐ人を殺すのかね? 奴らは沸点が低すぎる。
スキャンダル抜きでも面白いと思うのは、ネコ好きのツボを押さえているからだろうか。ネコっていうのは動物界の貴族だから、飼い主が奉仕しなきゃ駄目なんだよな。著者は破天荒な人生を送っている割に、意外と甲斐甲斐しくてびっくりする。しかも、ただ溺愛するだけでなく、一滴のアイロニーを交えて相対化しているのだから油断できない。たとえば、ネコが死んでそれを息子に伝えるエピソード。息子にショックを与えないよう配慮する著者に対し、息子は予想外の反応を返している。これがあまりに黒くて苦笑いした。