2001.6a / Pulp Literature

2001.6.3 (Sun)

エリヤフ・ゴールドラット『ザ・ゴール』(1992)

ザ・ゴール(111x160)

★★★
The Goal, Second Revised Edition / Eliyahu M. Goldratt
三本木亮 訳 / ダイヤモンド社 / 2001.5
ISBN 4-478-42040-8 【Amazon

アメリカでベストセラーになったビジネス本。TOC(制約条件の理論)を小説形式で説いている。元は1980年代に出版されたもので、本書は1992年の改訂版。

小説のストーリーは大体こんなところ。主人公が所長を務める小さな工場が、業績不振で閉鎖の危機に見舞われた。さらに、仕事が忙しくて家庭を顧みなかったため、妻がむくれて家を出てしまう。公私ともに困った主人公は、大学時代の恩師にヒントを貰い、工場の問題を徐々に解決していく。かくして売上は増加し、別れた妻とも復縁、主人公は業績を認められて昇進する。

本書のポイントは、小説形式によってTOCを分かり易く、かつ実践的に示したところにある。作中には主人公の恩師(著者がモデルだろう)が登場するものの、彼はストレートな解答ではなく、あくまでヒントしか与えない。理由は主人公に思考錯誤させるためだ。このプロセスが読者の探求心を刺激し、さらには啓蒙書としての説得力も獲得している。

とりあえず、TOCの仕組みはぼちぼち理解できた。今後は「ボトルネック」を頭の片隅に置いておこうと思う。

2001.6.5 (Tue)

井波律子『三国志曼荼羅』(1996)

三国志曼荼羅(108x160)

★★★
筑摩書房 / 1996.7
ISBN 4-480-83632-2 【Amazon
ISBN 978-4006021191 【Amazon】(岩波現代文庫)

三国志をテーマにしたエッセイ集。魏・呉・蜀と広範な話題を万遍なく扱っている。

カタカナ語の使い方が引っ掛かるものの、文章は達者でリズム感がある。諸葛亮をロマンチストに仕立て上げているのが面白かった。

2001.6.7 (Thu)

緒方邦彦『小泉純一郎革命』(2001)

小泉純一郎革命(108x160)


イースト・プレス / 2001.5
ISBN 4-87257-259-9 【Amazon

小泉純一郎の人物像と自民党の派閥について解説している。

小泉内閣発足によって雨後のタケノコの如く出版された本のひとつ。時流におもねった小泉応援本。どうも週刊誌の読み捨て記事のような、ろくに取材をしていない予断と憶測に満ちた内容だと思っていたら、この著者は「週刊プレイボーイ」の元記者で、スポーツ・芸能を担当していたようである。なるほど。

端的にいえばオヤジ臭い本だ。第3章で小泉を大石内蔵助にたとえているのだけど、これがナルシシズム全開で気持ち悪い。物事を善と悪に単純化し、小泉にヒロイズムを投影して自身もそれに溺れている。ノンフィクションの書き手というのは、自分の文章に酔っぱらってはいけないし、もっと客観的なスタンスを心がけるべきだろう。所詮はゴシップ誌の記者という感じで呆れるばかりだった。はっきりいって紙の無駄だと思う。

2001.6.9 (Sat)

森浩一『語っておきたい古代史』(1994)

語っておきたい古代史(111x160)

★★★
新潮文庫 / 2001.5
ISBN 4-10-142122-6 【Amazon

考古学者の公演録。倭人・クマソ・天皇について。「甦る古代人の知恵と技術」、「女王卑弥呼の時代」、「クマソの考古学」、「古墳研究と継体天皇」、「丸山古墳と陵墓問題」の全5章。

国や都道府県は、遺跡の発掘調査にあまりいい感情を持っていないという。著者はそのことを嘆いているけれど、ただまあ、発掘によって土地の利用が制限されたり、観光のネタが使えなくなったり、経済上の理由があるからしょうがないと思う。あるいは、田舎だったら地元意識・排他意識が加味されるのか。よそ者が不利益をもたらしている、みたいな。

これに関して思い出したことがある。数年前、「武田信玄はチビで冴えない男だった」という新説が流れた。それに対して地元の人たちは猛反発したという。反発の理由は、既に偉丈夫の銅像が町に立っていたからだとか。彼らにとっては、真実よりもイメージのほうが大切らしい。観光地は大変である。