2001.6b / Pulp Literature

2001.6.15 (Fri)

澤田康文『薬のあぶない飲み方・使い方』(1999)

薬のあぶない飲み方・使い方(108x160)

★★★
講談社 / 1999.4
ISBN 4-06-206704-8 【Amazon

(1) 薬の常識・基礎知識。(2) 副作用を出さない薬の飲み方・使い方。(3) 薬の危ない飲み方・使い方。(4) 薬のあぶない飲みあわせ・食べあわせ。Q&A形式で121項目について言及している。

薬というのは病気に対する作用がある反面、必ず副作用もついてくる。なので、医師や薬剤師に質問したり、辞書で調べたりすることを推奨している。また、薬によっては飲みあわせ・食べあわせもあるので、そういう点も気をつけるべきだと主張している。

扱っている項目が幅広いうえにQ&A形式の構成なので、自分に関係ある項目をつまみ読みするのが一般的な利用法だろう。少なくとも私はそういう読み方をしたわけで、感想としては「色々勉強になりました」といったところである。万が一に備えて、手元に1冊置いておくのも良いかもしれない。

2001.6.20 (Wed)

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』(1981)

世界終末戦争

★★★
La Guerra Del Fin Del Mundo / Mario Vargas Llosa
旦敬介 訳 / 新潮社 / 1988.12
ISBN 4-10-514504-5 【Amazon
ISBN 978-4105145071 【Amazon】(新版)

19世紀末のブラジル共和国。流浪の狂信者コンセリェイロが、多数の信者を引き連れて、奥地にあるカヌードスの町を占拠した。彼らは共和国をアンチ・キリストと弾劾し、安息の地で独自の共同体を作っている。様々な勢力の思惑が渦巻くなか、政府は大規模な討伐軍を送り出した。

やっと読み終わった。ハードカバー2段組で約700ページ。読んでいる最中は長い長いと呻いていたけれど、読み終わってみるとそれなりに充実感が沸いている。一つの世界をまるごと飲み込んだみたいな。とはいえ、面白かったと胸を張って言えないのが困ったところで、膨大な時間的コストに見合うほどではなかったと思う。再読しろと言われたら即効で断るし、人に勧めることもないだろう。要するに、おいそれと読める長さではないのよね。思えば、『フーコーの振り子』【Amazon】も気息奄奄しながら読んだので、個人的に大長編への耐性が低いのかもしれない。

時系列と焦点人物を錯綜させることで、だんだん全体像が見えてくるのが良かった。カヌードスが政府軍を撃退したという衝撃的な事実。序盤はそこに至るまでの経緯が中心になっている。コンセリェイロの元には様々なタレントがいて、それぞれの特異な来歴を点描する。かと思えば、領地を占拠された地主勢力の思惑があったり、外国のアナーキストが陰謀に利用されたり、カヌードスが政争の具になっていることを明かしていく。この頃はまだ帝政が倒れて間がなく、共和国には火種が燻っていたのだ。たかが辺境の反乱によって、国の内実が炙り出されるのが面白い。

コンセリェイロって麻原彰晃みたいな俗物かと思っていたら、実は本物の狂信者だったのに驚いた。ハルマゲドンを本気で信じて民衆を煽っているし、「奴隷制を廃止したのは皇帝だから」という理由で帝政を支持している。彼によると、悪魔がフリーメーソンや新教徒の手を使って、奴隷制を復活させるために皇帝を倒したのだという。従って、共和国はアンチ・キリストなのだそうだ。うひゃー、そんな異次元の理屈で村を占拠されるのだから堪らない。そのうえ、土地を休ませるとか言って、他人の農園を勝手に焼き払っているし……。ただ、こういう電波を飛ばしていても、彼は無私無欲で貧民の味方だから、方々からたくさんの信者が集まってくる(推定3万人!)。特筆すべきは、悪名高い人殺しでさえ改心しているところだ。コンセリェイロは狼を羊に変えるほどの人物であり、そのカリスマはイエス・キリストに匹敵する。

容赦のない殺し合いがすごかった。双方とも殺戮の応酬で一切の妥協がない。殲滅するかさせられるかだ。カヌードス側は敵の死体から男根を切り取って口に突っ込み、野天に晒して腐るにまかせている。そうすることで死者の魂を地獄に落とそうというわけだ。一方、政府軍は生け捕りにした信者を捕虜として扱わず、公然と辱めて虐殺している。局地的な出来事とはいえ、このプリミティブな暴力の奔流は、まさに<世界終末戦争>と呼ぶにふさわしい。人間の敵は人間だよなーと強く感じた。

>>Author - マリオ・バルガス=リョサ