2001.9b / Pulp Literature

2001.9.12 (Wed)

陳舜臣『日本人と中国人』(1984)

日本人と中国人(112x160)

★★★
集英社文庫 / 1984.1
ISBN 4-08-750783-1 【Amazon

日本人と中国人を比較した本。

この本が書かれた時期は対中政策の転換期で、お互いを理解し合いましょうという意図が込められている。

日本人と中国人の違いは、そのまま歴史の違いということで、色々と事例を引きながら論じている。平たくいえば、早くから文明が発達し、独自の文化を確立してきた中国と、その中国から文物を吸収していった日本、という図式になるだろうか。

ところで、本書の第1章は「日本人と中国人に関する一問一答」と題され、様々な質問に陳が答えるという質疑応答形式になっている。この回答が、慇懃無礼とまではいかないまでも、かなりの直言で面食らった。この人は意外と尖っている。

>>Author - 陳舜臣

2001.9.15 (Sat)

外山滋比古『古典論』(2001)

古典論(109x160)

★★★
みすず書房 / 2001.8
ISBN 4-622-04810-8 【Amazon

文学の「古典」について。古典化の原理などを論じている。

ひとことで言うと、読者本位の文学論。最初のテクストを書くのは著者であり、古典化を行うのは読者である。古典化の過程で数多くの「異本」が生まれ、元テクストの評価も変容していく。テクストと伝記的事実を結びつける読み方や、著者の意見に盲従する態度など、権威主義がいかに読書の幅を狭めているか。古典化の原理を説きながら、小説に対するアプローチの仕方を啓蒙する。

大仰なタイトルとは裏腹に、簡潔直截な文章で読みやすかった。権威主義的な読書に疑問を抱いている人ならば、かなり共感できると思う。

2001.9.17 (Mon)

リチャード・パネク『望遠鏡が宇宙を変えた』(1998)

★★★
Seeing and Believing / Richard Panek
伊藤和子 訳 / 東京書籍 / 2001.8
ISBN 4-487-79665-2 【Amazon

望遠鏡の発達と天文学の発展を解説している。

大航海時代の「発見」から説き起こして、ガリレオ・ガリレイ、ウィアム・ハーシェル、エドウィン・ハップルなど、望遠鏡にまつわるエピソードを追っている。観測技術と宇宙観の相関関係が分かり易い。

ただ、本書では扱ってるテーマの通り、技術の進歩による様々な形態の望遠鏡が登場するのだけど、そのどれもが文章による説明のみに留まっていて、実体が掴みにくくなっている。こういう本には図説が不可欠だろう。

2001.9.20 (Thu)

アントニイ・バークリー『地下室の殺人』(1932)

地下室の殺人(111x160)

★★★★
Murder in the Basement / Anthony Berkeley
佐藤弓生 訳 / 国書刊行会 / 1998.7
ISBN 4-336-03842-2 【Amazon

貸家の地下室から女性の全裸死体が発見された。モーズビー主席警部が身許を洗い、事件にある学校が関わっていることが判明する。その学校は、ロジャー・シェリンガムと繋がりがあった。

いまいましい野郎だ、とロジャーは思った。汚物入れのバケツに話しかけるほうがまだましだ。(p.241)

まあまあ面白かった。『毒入りチョコレート事件』『ジャンピング・ジェニイ』、『試行錯誤』なんかと比べると、あまりにオーソドックスで地味でさえあるのだけど、その反面、学校の職員たちが織りなす悲喜劇に苦笑してしまう。シニカルな目線というか性格の悪さというか、要所要所でぴりっとした毒が注がれているのだ。本作は錯綜する愛憎関係に、「誰が殺したのか?」という興味が接続するから面白い。推理小説としてだけでなく、読み物としても一定の水準に達している。