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2001.11.1 (Thu)
2001.11.3 (Sat)
▽ジェフリー・ディーヴァー『エンプティー・チェア』(2000)

★★★★
The Empty Chair / Jeffery Deaver
池田真紀子 訳 / 文藝春秋 / 2001.10
ISBN 4-16-320400-8 【Amazon】
ISBN 4-16-770538-9 【Amazon】(文庫)
ISBN 4-16-770539-7 【Amazon】(文庫)
手術のためにノースカロライナ州にやってきたライム一行が、誘拐事件の捜査に協力する。
『コフィン・ダンサー』の続編。前半では微細証拠物件の分析で昆虫少年の足取りを追い、後半では逃走するアメリア・サックスと、追跡するリンカーン・ライムが知能戦を繰り広げる。四肢麻痺のライムは、司令室から現場のアメリアに指示を出すことで、己の捜査を代行させていた。いわば自分が頭脳を担当し、アメリアが手足を担当していたのである。ところが、今回はその図式が崩れることに。2人が反目することによって、いつもとは違ったスリルを生み出している。
1作目と2作目が似たような話だったので、上手くマンネリを回避したなという印象。
2001.11.5 (Mon)
▼橋本治『橋本治が大辞林を使う』(2001)

★★
三省堂 / 2001.10
ISBN 4-385-36027-8 【Amazon】
大辞林のプロモーション本。言葉について色々語っている。
思考プロセスが特殊なので少なからず感銘を受けたものの、タイトルから予想した以上に自分語りが多くて辟易した。大辞林の太鼓持ちみたいなポジションもいただけない。
以下、面白かった論旨をメモ。
- 近代が標準語による統一の時代ならば、近代以降は標準語に個性を持たせる時代でも不思議はない。(p.29)
- 「言葉の乱れ」を非難する人間には、疎外感からくる嫉妬の感情が背景にある。言葉の乱れは社会情勢の変化であるから。(p.45-49)
- モノローグとダイアローグについての考察。(p.61-77)
- 敬語は人間関係の上下ではなく、距離を確保するために使う言葉。(p.90-91)
『広辞苑』と『大辞林』の齟齬についてはどうでもいいかな。
2001.11.7 (Wed)
▲立花隆『東大生はバカになったか』(2001)

★★★
文藝春秋 / 2001.10
ISBN 4-16-357850-1 【Amazon】
副題は「知的亡国論+現代教養論」。雑誌連載の寄せ集めで、高等教育・学力低下・文部省批判・リベラルアーツなどについて語っている。
要するに、人の上に立つ者は幅広い教養、特にサイエンスを身につけていなければならないと言いたいようである。これは著者の言論活動の根底にある思想で、だから最近は一般向けの科学啓蒙記事を手掛けているのだろう。個人的にこの姿勢は共感できるし、著者のオブセッションは発奮するにちょうど良い。けれども、上から目線の押し付けがましい論述にはうんざりさせられる。
以下、気になった論旨をメモ。
- 日本でベストセラーになる本は低俗なものが多いが、アメリカでベストセラーになる本は知的水準の高いものが多い。(p.46)
- 日本はテレビ番組も低俗だし、雑誌も漫画雑誌が売れている。(p.46)
- 日本の大学は専門バカの大量生産機構になりつつある。(p.54)
- 教養の無い人にはわかりづらいかもしれないが、教養のある人というのは、ちょとした所作(会話・行動・レスポンス)からその教養が滲み出てしまう。(p.135)
- 東大生は与えられた仕事はそれなりにこなすが、プライドが肥大化していて自己を過大評価する人が多い。(p.187)
2001.11.10 (Sat)
▼ジョン・ル・カレ『シングル&シングル』(1999)

★★
Single & Single / Johan le Carre
田口俊樹 訳 / 集英社 / 2000.12
ISBN 4-08-773336-X 【Amazon】
密告者の主人公が、失踪した父親を探す。父は会社の社長で、裏社会のゴタゴタに巻き込まれていた。
過去と現在を交錯させながら、父と子の相克を描いていく。当然、物語を通じて2人の絆は回復に向かうわけ。どこか文芸っぽい重苦しさを湛えている。
それにしても、ル・カレっていつからこんなつまらない小説を書くようになったのだろう。時系列を行き来する構成なんか、読みにくいだけで効果をあげているとは思えない。冷戦時とはえらい違いだ。
東側の血液を西側へ輸出しようとする陰謀劇は圧巻。悪党たちの熱に浮かされたような雰囲気は、ジェイムズ・エルロイの『アメリカン・デス・トリップ』を想起させる。短いセンテンスの行動描写を重ねたり、連続して文末を人名で締めくくったり、随所にエルロイらしさが出ていた。
