2001.11b / Pulp Literature

2001.11.12 (Mon)

奥泉光『坊ちゃん忍者幕末見聞録』(2001)

★★★
中央公論新社 / 2001.10
ISBN 4-12-003197-7 【Amazon
ISBN 4-12-204429-4 【Amazon】(文庫)

時は幕末。奥州出羽の坊ちゃん忍者が悪友と共に上京する。そこで坂本竜馬や沖田総司と関わることになる。

『坊ちゃん』をモチーフにした疑似時代小説。軽快なタッチで読みやすい反面、後半から挿入される「スクランブル」が、文学者の韜晦のようでいまいち乗り切れなかった。時代小説の枠組みを逸脱しようという試みは買うのだけど、そこに何か「狙った」感があって、悪い意味で「軽い」んじゃないかと思う。まるで大作を書き上げた後の息抜きみたいな小説だった。

この小説は坊ちゃん忍者の一人称でありながら、地の文で標準語が、会話文で方言が使われていて、そのギャップが面白かった。こういう実験的な趣向をエンタメ向けにアレンジできるところが、学者作家の強味なのだろう。これからもエンタメ畑でどんどん暴れてほしいと思う。

>>Author - 奥泉光

2001.11.15 (Thu)

戸梶圭太『未確認家族』(2001)

未確認家族(96x140)

★★★★
新潮社 / 2001.10
ISBN 4-10-602769-0 【Amazon
ISBN 4-10-124833-8 【Amazon】(文庫)

痴漢が趣味の夫とテレクラが趣味の妻。2人はいわゆる仮面夫婦であり、息子も学校を嫌がっている。そこへ復讐鬼と電波女が絡んで、疑似家族を形成するようになる。

これは面白かった。ドタバタとテンションの高い話で一気読み。荒唐無稽なようで芯はかっちりしており、ちゃんと現代の「家族」がテーマに据わっている。家族とは血の縁よりも絆の深さである――まさか、こんなまっとうな正論を著者が書くとは思わなんだ。実は意外と社会派なんだろうか。

電波女の「宇宙トンネル拓」には参った。こんなの送られてきたら確かにぞっとする。