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- 04 : 石川純一『宗教世界地図』(1997)
- 08 : ジャック・ロンドン『白い牙』(1906)
- 10 : ミシェル・トゥルニエ『夜ふかしのコント』(1989)
2001.12.4 (Tue)
▲石川純一『宗教世界地図』(1997)
★★★
新潮文庫 / 1997.5
ISBN 4-10-117221-8 【Amazon】
昨今の世界情勢を、宗教勢力の分布という観点から解説した本。
薄いわりに内容は網羅的で、問題のありそうな地域をざっと俯瞰できたのが良かった。各トピックごとに地図が用意してあって、この分野に疎い者としてはイメージが掴みやすい。説明文も平易で読みやすく、雑学レベルの好奇心を満たすことができた。
イスラエルの政党力学が日本のそれとそっくりなのが面白い。2大政党のほかに無視できない規模の第3の政党があって、そいつが政権運営のキャスティングボードを握っているという。しかも、その第3の政党は、狂信的ユダヤ教徒が母体の宗教政党であるとか。まるで日本の公明党みたいで恐ろしい。
あと、カトリックは半端じゃなくやばい。堕胎のみならず、コンドームやピルによる避妊さえも否定している。とてもじゃないが同じ21世紀を生きているとは思えない。
2001.12.8 (Sat)
▲ジャック・ロンドン『白い牙』(1906)
★★★
White Fang / Jack London
白石佑光 訳 / 新潮文庫 / 1958.11
ISBN 4-10-211101-8 【Amazon】
犬の血が混じった牡の狼が、放浪のすえ人間に飼われることになる。
冷酷な動物世界(人間含む)をありのままに映していくのかと思っていたら、終盤でハートウォーミングな展開になってびっくりした。群をなして旅の人間たちに襲いかかる。力関係を誇示するため犬の喉笛を掻ききる。狼らしい非情な振る舞いを中心に描きつつ、ストーリーは着実に動いていき、環境の移ろいによる内面の変化を捉えていく。本作は狼に寄り添った三人称視点の物語で、狼自身の直接的なセリフはないものの、全知の語り手が彼の心情にまで大胆に斬り込んでいる。狼の生態はどこまで現実に即しているのか、その辺のリアリティを度外視すれば、少なくともフィクションの存在としての臨場感はある。
ただまあ、狼の特権的なヒロイズムにはついていけないものを感じたし、ハートウォーミングな展開も落としどころとしてどうかと思った。この小説は動物文学の傑作とされているようだけど、個人的にはその通俗的な内容にいまいち興味が持てなかった。
2001.12.10 (Mon)
▲ミシェル・トゥルニエ『夜ふかしのコント』(1989)
★★★
Les Contes Du Medianoche / Michel Tournier
榊原晃三 訳 / パロル舎 / 1996.4
ISBN 4-89419-130-X 【Amazon】
児童向け短編集。「香りの伝説」、「音楽とダンスの伝説」、「パンの伝説」、「チェスの伝説」、「宮廷料理人の伝説」、「絵画の伝説」、「二つの鏡」、「幽霊自動車」、「ある木樵の伝説」、「野ウサギと耳の伝説」、「飼いウサギの物語」、「ファウスト賢王伝説」、「麦わらの上の赤ん坊」、「立ったまま書くこと」、「アンガス」の15編。
聖書や騎士道物語など、大昔の伝説を題材にしている。西洋文化のエッセンスが感じられてなかなか良かった。
以下、各短編について。
「香りの伝説」
アダムとイヴが香りの果実を食べる。
禁断の果実を食べたことで、エデンの園の匂いを嗅げなくなった。本当はもっと芳醇な匂いが存在していたという視点が面白い。だから、我々は失われた匂いを取り戻すべく、化学物質で香水を合成するわけだ。
「音楽とダンスの伝説」
ペアダンスを踊りたいと神に直訴するアダム。神はアダムからイヴを作り出す。
これも視点が面白いな。偉大な作曲家たちは、天球の音楽を取り戻すべく日夜努力していたのだ。人間の営為は前へ進むためにあるのではない。エデンの園という原初に戻るためにある。
「パンの伝説」
敵対する村の男女が結婚する。
パンの製法をめぐる話。
「チェスの伝説」
退屈していた中国の王さまに、とある男がチェスを勧める。
数学ネタ。感覚的には大したことないけれど、真面目に計算すると莫大な量になる。スタートが1粒だからって油断しちゃいけねー。
「宮廷料理人の伝説」
イスファハンの教主が宮廷料理人を募集する。2人の料理人のうち、どちらが優れているかを競わせる。
これは頓知が効いてる。
「絵画の伝説」
創造人間と情報伝達人間の話。
創造人間が語る絵画のエピソードが面白い。今風にいえば前衛芸術ってやつかな。「宮廷料理人の伝説」同様、本作も頓知が効いている。
「二つの鏡」
二つの鏡の会話。
わずか1ページの小品。「絵画の伝説」とモチーフが繋がっている。
「幽霊自動車」
幽霊自動車の話。
これもモチーフが繋がっている。
「ある木樵の伝説」
貧しい木こりが黄金の蹄鉄を拾う。
「野ウサギと耳の伝説」
王さまが角を持った動物を追放する。
「飼いウサギの物語」
ペットのウサギが家を飛び出す。
「ファウスト賢王伝説」
王子を亡くした王さまの話。
ボルヘスっぽい。
「麦わらの上の赤ん坊」
フランス大統領がお産についての大胆な政策を実行する。
産院刻即なんて凄い発想だ。確かに病院でお産する現代では、伝説に残るような出産なんて到底望めない。
「立ったまま書くこと」
作家が刑務所を慰問する。
囚人のプレゼントが粋である。作家は常に立ったまま書かなければならない。
「アンガス」
アンガス卿の娘が隣国の領主に強姦される。子種を宿した娘は出産、卿は産まれてきた子供を復讐に利用する。
オイディプス的な騎士道物語。母親の仇を討つべく一騎打ちで父親を殺害する。こうして人は一人前になるということで、大団円ではそれなりの感慨をおぼえた。