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2001.12.22 (Sat)
▲マイケル・バー=ゾウハー『エニグマ奇襲指令』(1978)
★★★
The Enigma / Micheal Bar-Zohar
田村義進 訳 / ハヤカワ文庫 / 1980.9
ISBN 4-15-040234-5 【Amazon】
1944年。イギリスで服役中の大泥棒ベルヴォワールが、諜報部と取引をして娑婆に出る。彼はドイツの暗号機エニグマを盗むため、敵の占領下にあるフランスに潜入するのだった。
キレのあるプロット、魅力的なキャラクター、非情な諜報戦。本作はこれらを満たした卒のない冒険小説だけど、いま読むと型にはまりすぎていて物足りない。作戦はけっこう運頼みなのになぜか成功しているし、キャラクターは露骨に感情移入を狙ってるし。もっと一筋縄のいかない知恵比べが見たかった。
2001.12.27 (Thu)
▲マイケル・シェイボン『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』(2000)

★★★
The Amazing Adventures of Kavalier & Clay / Michael Chabon
菊地よしみ 訳 / 早川書房 / 2001.11 / ピュリッツァー賞
ISBN 4-15-208379-4 【Amazon】
ISBN 0-31-228299-0 【Amazon】(原書)
チェコのユダヤ人ジョー・カヴァリエが、ナチスのユダヤ人弾圧から逃れてアメリカに亡命、いとこのサミー・クレイの家に転がり込む。若い2人は「エスケーピスト」なるコミックヒーローを作り出し、一躍ベストセラー作家になるのだった。
外国向けに編集された縮約版からの翻訳。元はこれの3倍ほどの分量があるようだ。
「スーパーマン」に「バットマン」、そして我らが「エスケーピスト」。この小説はアメリカンコミックの黎明期を扱いながら、ユダヤ人としての重い感情と、奇妙な三角関係を描いている。2人が生んだ「エスケーピスト」とは、ナチスを倒すスーパーヒーローであり、その造型には家族をチェコに残したカヴァリエの願望が込められている。一般的にいって、創作の原動力は怒りであることが多いけれど、彼は漫画だけでは飽きたらず、自らもドイツ人と闘うほど入れ込んでいる。そして、その想いはやがて彼を軍隊にまで誘うことになる。
コンビを組んだクレイは絵の才能がなく、早々と作画をカヴェリエに任せている。そのうえ、カヴァリエが断りなしで海軍に入隊したときは、彼の女とお腹の赤ん坊を引き受けている。クレイは同性愛者であるにもかかわらず、女と結婚したのである。これも運命ということで、家族3人で平和な生活が続くと思いきや、突如カヴァリエが帰ってきてご破算になる……。この三角関係はあまりに残酷でせつない。
いつの世もPTAみたいなバカが幅を効かせているようで、この小説でもコミックの規制が叫ばれるようになる。そこで挿入された小委員会の議事録がすごかった。少年を庇護する「バットマン」を、小児愛的な倒錯と宣っている。しかも、この構図はそのままクレイの実存にも関わるのだった。すぐさま明快な反論をくわえて内心の葛藤を解消しているとはいえ、漫画にかこつけて自分の存在を否定されたら、そりゃダメージでかいよなと思う。
(2005/07/02 追記)
あの「エスケーピスト」が、"The Amazing Adventures of the Escapist"【Amazon】として漫画化された。何というフットワークの軽さだろう。
2001.12.29 (Sat)
▼キム・スンホ『ニッポン消滅』(1997)

★★
Gaia / Kim Sung-Ho
中村欽哉 訳 / 小学館 / 2001.11
ISBN 4-09-387360-7 【Amazon】
ISBN 4-09-387361-5 【Amazon】
2004年。科学者たちは日本列島が沈没するのを予測した。日本政府は新たな国土を確保するため、軍備を増強して戦争をおこす。
韓国のベストセラーらしい。邦題からしてしょうもない架空戦記を連想させるけれど、実際その通りで、政治の力学を無視した展開や、品のない科学兵器のオンパレードなど、その筋のマニアでない限り読むのがつらいと思う。
人類の環境汚染に「ガイア」が怒ったという筋書きが酷い。今さらガイア理論っていったいどういう神経なんだ? しかも、なぜか人類を代表するのが韓国人。読心術の使える主人公が、「人類大使」として母なる「ガイア」と対話するのだから驚く。小説のふりをした壮大なオナニー。まるで90年代のハリウッド映画みたいだ。