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- 15 : 伊達宗行『「数」の日本史』(2002)
- 17 : アガサ・クリスティ『ポアロ登場』(1923)
- 19 : ビル・S・バリンジャー『煙の中の肖像』(1950)
2002.7.15 (Mon)
△伊達宗行『「数」の日本史』(2002)

★★★★★
日本経済新聞社 / 2002.6
ISBN 4-532-16419-2 【Amazon】
縄文時代から現代に至る日本数学史。
面白かった。日本の数文化について豊富な知識が得られるし、読者の好奇心を鑑みて参考文献への手引きもなされている。門外漢でも楽しめる良書。
ただ、現代を述べる段にあたって、理数系の学力低下/教育論にオチをつけているのが残念だった。こういうのは「知る面白さ」に水を差すからいらないと思う。
以下、興味深いトピックをメモ。
- 縄文時代から既に十二進法が使われていた。
- 世界的に見て日本の「九九」は優れている。これは日本語が優れているということ。
- 今も昔も社会の保守化によって理数離れが起きていた。平安時代、そして現代。
- 万葉集に見られる算遊びは雅である。
- 昔の算術の問題集。代数の概念さえ無かった時代は解くのも一苦労だった。
- 平城京はピタゴラスの定理で測量して造られた。
2002.7.17 (Wed)
▲アガサ・クリスティ『ポアロ登場』(1923)
★★★
Poirot Investigates / Agatha Christie
小倉多加志 訳 / ハヤカワ文庫 / 1978.4
ISBN 4-15-070032-X 【Amazon】
ポアロもの短編集。「<西部の星>盗難事件」、「マースドン荘の惨劇」、「安アパート事件」、「猟人荘の怪事件」、「百万ドル債権盗難事件」、「エジプト墳墓の謎」、「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」 「総理大臣の失踪」、「ダウンハイム失踪事件」、「イタリア貴族殺害事件」、「謎の遺言書」、「ヴェールをかけた女」、「消えた廃坑」、「チョコレートの箱」の14編。
最近、「ポアロ」を「ポワロ」と書いてしまう。何か良い覚え方はないだろうか?
以下、各短編について。
「<西部の星>盗難事件」 "The Adventure of The Western Star"
脅迫状が届いてダイヤモンドが盗まれる。
ポアロとヘイスティングズの絡みが面白い。ホームズ&ワトソンのパロディと化している。
ダイヤモンドの顛末についてはもう少し伏線が欲しかった。ミステリの意外性というのは構造美があってこそだと思う。
「マースドン荘の惨劇」 "The Tragedy at Marsdon Manor"
内出血で死んだ男には多額の生命保険が掛けられていた。自殺か、他殺か、自然死か。
謎解き云々はおいといて、ラスト一文にインパクトがある。
「安アパート事件」 "The Adventure of the Cheap Flat"
安アパートで奇妙な事件。
ヘイスティングズの世間話を聴いていたポアロが、その些細な点から事件を発見し解決する。名探偵の本領発揮という感じだった。
「猟人荘の怪事件」 "The Mystery of Hunter's Lodge"
猟人荘で殺人。
今回はポアロがインフルエンザに罹っているため、ヘイスティングズが単独で現場に向う。アームチェア・ディテクティブよろしく病床から電報で指示を出すポアロと、ポアロの突拍子のない指示に当惑するヘイスティングズ。この驚きに満ちた構造が秀逸だった。
「百万ドル債権盗難事件」 "The Million Dollar Bond Robbery"
百万ドルの債権が盗まれた。
面白かった。事件は密室もの。船で輸送中、鍵を掛けた箱から債権が盗まれ、船が港に到着して10分足らずで債権が売り払われている。今回はこの密室トリックが心理的なツボを押さえていてかなり良かった。
「エジプト墳墓の謎」 "The Adventure of Egyptian Tomb"
古代エジプト王の墳墓を発掘した人たちが次々と死んだ。王の呪いか!?
当然、呪いではない。
「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」 "The Jewel Robbery at the Grand Metropolitan"
ホテルから宝石が盗まれる。
部屋の見取り図があったので、もの凄いトリックがあるのかと期待していたら……。
「総理大臣の失踪」 "The Kidnapped Prime Minister"
第1次世界大戦時の事件。誘拐されたイギリス首相を捜索する。
個人的に「替え玉ネタ」は好きではないのだけど、銃撃の心理トリックが巧かったので、これはこれで良いんじゃないかと。
「ダウンハイム失踪事件」 "The Disappearance of Mr. Davenheim"
銀行の頭取が失踪した。
やはり短編の失踪ものは「替え玉ネタ」になる確率が高いのだろうか。事件本編よりも、賭けを巡るポアロ、ジャップ警部、ヘイスティングズの三角関係が楽しめた。
「イタリア貴族殺害事件」 "The Adventure of Italian Nobleman"
イタリア貴族が殺害された。
良かったのはラスト1行。
「謎の遺言書」 "The Case of the Missing Will"
奇妙な遺言状が残された。
殺人が絡まないほのぼのとした話。故人とポアロが知恵比べをする。つまらなくはないのだけど、遺言状に「あぶり出し」というのが何とも。
「ヴェールをかけた女」 "The Veiled Lady"
脅迫に使われた手紙を取り戻す。
ポアロたちが他人の家に侵入してブツを探す。無論、それだけで終わらないオチがついている。古い訳特有の時代がかったセリフも、今回は妙にマッチしていて心地良く読める。
「消えた廃坑」 "The Loss Mine"
ポアロが昔の事件を語る。
やはり中国人は怪しい。
「チョコレートの箱」 "The Chocolate Box"
ポアロが昔の事件を語る。今回はベルギー警察時代の毒殺事件。
ポアロが味噌をつけられた事件として紹介される。「<西部の星>盗難事件」と同様、ポアロとヘイスティングズの掛け合いを楽しむ話だろう。確か、ホームズものにもこれと似たような話があったと思う(あまりよく覚えていない)。
2002.7.19 (Fri)
▲ビル・S・バリンジャー『煙の中の肖像』(1950)

★★★
Portrait in Smoke / Bill S. Ballinger
仁賀克雄 訳 / 小学館 / 2002.6
ISBN 4-09-356341-1 【Amazon】
ISBN 4-488-16303-3 【Amazon】(河出書房新社)
本作のポイントは、読み手と男に知識格差をつけたところだろうか。物語に不可避的な結末が生み出されながらも、同時に牽引力(期待感・緊張感)として読み手側に作用している。また、(1) で謎の提示、(2) でその解体と、ワンサイクルでそのまま1つの短編として読めるところも、牽引力の一助になっていると思う。まるで東野圭吾の『白夜行』【Amazon】みたいだった。
ただ、不可避的な結末というのが曲者で、終盤に向けて高めたボルテージが、この結末であっけなく雲散霧消している。これは第8章で説明しすぎたのが原因。もしピークである第7章で終わっていれば、物凄いインパクトと余韻が残ったと思う。まあそれはそれで、タイトルに絡んだアイロニーが犠牲になるのだけど。