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- 02 : 山田風太郎『甲賀忍法帖』(1959)
- 04 : エド・マクベイン『キス』(1992)
- 06 : ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』(1984)
- 09 : ベルトラン・ピュアール『夜の音楽』(2001)
2003.1.2 (Thu)
▲山田風太郎『甲賀忍法帖』(1959)
★★★
講談社文庫 / 1998.12
ISBN 4-06-263944-0 【Amazon】
2代将軍・秀忠の跡継ぎを、忍者同士の代理戦争で決めることになった。伊賀忍者10人と甲賀忍者10人が、血みどろの争いをする。
棟梁筋の子弟が敵味方を越えた恋愛関係にあり、ストーリーは彼らの宿命的な悲劇をメインにしている。長年いがみ合ってきた伊賀方と甲賀方は、子弟の婚姻により和睦が予定されていた。ところが、徳川家のお家騒動のとばっちりを受けて相争うことに。開戦の情報を先に得たのが伊賀方だったため、はじめは甲賀方が不利になる。
と、こんな感じで入れ物が用意され、生物の限界を越えた忍者たちによる、血の狂演が繰り広げられる。この部分は彼らの荒唐無稽な能力もさることながら、忍術が近親交配によって生み出された奇形能力という発想が面白かった。ある者は瞳に力を宿し、またある者は人体が著しく欠損している。奇形ゆえに日陰者だし、日陰者ゆえに閉鎖的にならざるを得ない。
『ジョジョの奇妙な冒険』読者としては、「スタンド」の元ネタとして楽しむのが筋だろう。能力がばれたら不利になるという説明は、第3部でそのまま使われていたネタなので素直に驚いた。本作は能力バトルのパイオニアという意味で面白い。それぞれの能力は長所が短所にもなるし、敵との相性があって単純な「最強」というのは存在しない(あ、瞳術がいたか)。
ところで、仮に本作を実写化するとしたら、地虫十兵衛役には乙武氏が適任かもしれない。というか、CGなしで演じられるのは、地球上で彼しかいないと思う。
2003.1.4 (Sat)
▲エド・マクベイン『キス』(1992)
★★★
Kiss / Ed McBain
井上一夫 訳 / ハヤカワ文庫 / 2001.4
ISBN 4-15-070804-5 【Amazon】
87分署シリーズ44作目。(1) 金持ちの妻が元運転手に殺されかかる。金持ちが妻のボディーガードとして私立探偵を雇い、元運転手が他殺体で発見される。(2) 『寡婦』でキャレラ刑事の父親を殺害した黒人の裁判が行われる。
今回は(1)と(2)を併せた物語全体の構造が秀逸。『寡婦』を受けた(2)があるからこそ、必然的に(1)はこうなったという感じ。
(1)について。省略。(2)について。検事と弁護士の熱い法廷劇を通して、アメリカの司法問題がシニカルに描かれる。このシリーズでは毎回、ラストで検事が弁護士つきの容疑者を尋問する挿話があるので、今回のこのプロットはそれの豪華拡大版という感じがする。相変わらず、弁護士の悪足掻きが小憎らしい。
ところで、こういうアメリカのリーガルサスペンスを読む(観る)たびに、日本で陪審員制が導入されていなくて良かった、と胸をなで下ろすのは私だけではないだろう。何の訓練も受けていない法律の素人が、他人を裁くなんて考えただけでぞっとする。
2003.1.6 (Mon)
▲ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』(1984)
★★★
Neuromancer / William Gibson
黒丸尚 訳 / ハヤカワ文庫 / 1986.7
ISBN 4-15-010672-X 【Amazon】
コンピュータ・カウボーイが電脳空間で活躍する。
ヒーローが現実世界と電脳空間を行き来するサイバーパンク。80年代に流行ったらしい。確かにハードコア文学のようなイメージの奔流には圧倒されはしたものの、今更これをクールとかカッコイイとか思うのはさすがに無理である。たとえるならテレ東系B級映画を愛でるような、そういうネタとしての消化しかできない。パソコン通信なんて『朝のガスパール』【Amazon】でしか知らない私のような世代は、もはや教養として受容するしかないのだろうな。これは読む時期を逸したということで。
ちなみに、『ブレードランナー』の世界観はかなり好き。
2003.1.9 (Thu)
▼ベルトラン・ピュアール『夜の音楽』(2001)
★
Musique de Nuit / Bertrand Puard
東野純子 訳 / 集英社文庫 / 2002.10
ISBN 4-08-760428-4 【Amazon】
ロンドン。独身女性を狙った連続猟奇殺人事件を二人の刑事が追う。
刑事側のみならずシリアル・キラーの行動も描写するという構成。良かったのは作中に漂うポップ・カルチャーの雰囲気くらいで、それ以外は全てにおいて最低最悪だった。
犯人の正体を伏せる形式なのだったら、せめて隠す努力くらいはして欲しかった。一応ミスディレクションらしきものはあったものの、これが「主な登場人物」を眺めるとバレてしまうような隙の多い代物。捜査の過程で刑事が某人物を疑う下りなんて、絶対違うのが分かっているのだから読んでいてもの凄く白ける(だいたい刑事が夢遊病って設定は何なのだろう?)。隠す努力をしないんだったらそんな無駄な手続き踏まなくて良いよと思うし、踏むんだったらレッド・ヘリングをしっかり絡めてくれと思う。
ほか、シリアル・キラーの情念は平板で迫力不足だったし、真相を日記で全て説明してしまうのも都合が良すぎて納得できず。本作はグロテスクな意匠(*1)と音楽ネタに頼った雰囲気重視の小説で、これに賞を与えた「コニャック推理小説大賞」とはいったい何なのか? と首を傾げざるを得なかった。