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- 05 : ギャビン・ライアル『誇り高き男たち』(1997)
- 07 : エド・マクベイン『キングの身代金』(1959)
- 09 : 山田風太郎『江戸忍法帖』(1960)
2003.3.5 (Wed)
▲ギャビン・ライアル『誇り高き男たち』(1997)
★★★
All Honourable Men / Gavin Lyall
遠藤宏昭 訳 / 早川書房 / 2002.6
ISBN 4-15-208421-9 【Amazon】
ランクリン大尉シリーズ3作目。1914年。バクダット鉄道の建設を阻止すべく現地に乗り込む。
『誇りへの決別』の続編。今回は、イギリス、フランス、ドイツ、トルコ、それぞれの思惑が複雑に絡んだ陰謀劇である。驚くのがそのプロットで、何と終盤まで列車をはじめとした移動がメイン。国を跨ぐわけだから、当然、身分を詐称しなければならないわけで、仮面の内側と外側のギャップがスパイ小説らしい。
不満を挙げるならば、物語に前作ほどの捻りが無いことくらいか。裏を返せばそれだけ前作の捻りが優れていたのだけど。
ところで、前作ではメカ好きのアイルランド人部下が飛行機を操縦するという見せ場が用意されていた。それに呼応したのか、本作では主人公に見せ場が用意されている。捻りがないぶん、キャラの活躍を楽しめということなのだろう。戦闘の駆け引きにはスリルがあって読ませる。
2003.3.7 (Fri)
▼エド・マクベイン『キングの身代金』(1959)
★★
King's Ranom / Ed McBain
井上一夫 訳 / ハヤカワ文庫 / 1977.9
ISBN 4-15-070761-8 【Amazon】
87分署シリーズ10作目。会社乗っ取りまで後一歩と迫った重役・キング。自分の息子の代わりに運転手の息子が誤って誘拐されてしまい、身代金を要求される。
どちらかというと、『天国と地獄』【Amazon】の原作として有名だろうか。『天国と地獄』は資本主義社会の歪みを、エンタメ要素をふんだんに盛り込んで脚色したごった煮的映画だった。それに対して本作は、「破産してまで他人の子供を助けられるか」みたいな保身と倫理の対立に焦点が絞られている。身代金を払おうとしない夫と、払うよう懇願する妻。13ページに渡る2人の口論が見所になっている。
と、その方面では興味深く読めたけれども、誘拐ものとして見ると、本作はあまり出来がいいとは思えない。致命的なのは、犯人がエド・マクベイン的激安犯罪者として描かれているため、緊張感に欠けてしまっているところだ。せっかく盗聴システムが用意されているのにそれがあまり活かされていないし、また、事件も何の捻りもないまま唐突な解決をしてしまうので物足りない。総じて、ワンアイディア(倫理問題)のみという印象だった。
2003.3.9 (Sun)
▲山田風太郎『江戸忍法帖』(1960)
★★★
講談社文庫 / 1999.5
ISBN 4-06-264576-9 【Amazon】
4代将軍・家綱のご落胤を暗殺すべく、出羽守が甲賀七忍を送り込んだ。剣客たちが次々と消されていき、あわやご落胤もこれまでかと思われたが……。
忍術がどうのこうのというよりも、死んでいく人たちの生命力のしぶとさに驚いた。頭から串刺しにされた上に頸動脈を断たれているというのに、やってきた生き残りに下手人の名前を告げるのだから凄すぎる。かと思えば、心臓をひと突きされた上に頸動脈を断たれているというのに、雪の上にダイイングメッセージを残す人もいるのだから凄すぎる。
しかも地の文で、
なんたる超絶の精神力。
なんていけしゃあしゃあと驚いてみせるのだから凄すぎる。まず序盤はその豪快な力業にのけぞったのだった。
ご落胤が反撃の狼煙を上げるところからは、人物の入れ替わりを用いたプロットの妙が見られる。出来事の因果関係がしっかりしていて感心させられる反面、甲賀七忍が序盤よりも明らかに弱体化していて、ドラマ的にはあまり面白くなかった。さらに、男女の三角関係や、黒幕が介入してからの三つ巴など、展開が意外と普通でこちらもいまいち。不穏な空気を孕んだ序盤と違って、中盤以降は恐ろしく地味になっていた。