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- 29 : 松本清張『眼の壁』(1958)
2003.3.29 (Sat)
▲松本清張『眼の壁』(1958)
★★
新潮文庫 / 1971.3
ISBN 4-10-110917-6 【Amazon】
三千万円の手形詐欺にあった会計課長が責任をとって自殺した。その部下が新聞記者の協力を得て事件を捜査する。
探偵役は早い段階で右翼の首魁に目星をつけ、その周辺を洗っていく。この小説は「組織悪の追求」という社会派フレーズが惹句になっているものの、実際は事件の変転や捜査、殺害トリックなどの推理小説的ファクターに重点がおかれている。件の組織悪はそれらのファクターを物語に組み込む以上の役目は負ってないし、また最後に明かされる首魁の陰翳も社会派にしてはやけにあっさりしている。人間のコンプレックスを炙り出すという試みに、たとえば『或る「小倉日記」伝』のようなインパクトがないのだ。だから、「社会派推理小説」の「社会派」の部分がいまいちピンとこない。上辺だけなぞらずにもっと深く踏み込んでくれよ、と思ってしまう。
「推理小説」の部分に触れると、本作は横溝正史を想起させる荒唐無稽なトリックにのけぞった。大仕掛けのあのシーンは、映像で観たらさぞ壮観だろう(映画版は未見)。
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