2003.7a / Pulp Literature

2003.7.2 (Wed)

戸梶圭太『燃えよ! 刑務所』(2003)

★★
双葉社 / 2003.6
ISBN 4-575-23467-2 【Amazon

2部構成。(1) 警察官僚のOBが刑務所の民営化を働きかける。(2) めでたく民営化し、所長に就任。囚人たちを使って運営資金を稼ぐ。

シャバの一般人は不況でぜいぜい喘いでいるのに、刑務所の犯罪者は税金でぬくぬく養われている。というわけで、今回は刑務所を題材にしたドタバタコメディ。「刑務所でやりたい放題」を骨子に、過激派と化した犯罪被害者グループや、超常現象ネタなどが入り乱れる。

お笑いネタに関しては、小泉首相ネタや創価学会ネタ、ロリコン妄想ネタなどけっこう際どいネタが使われている。けれども、『未確認家族』以降の長編作品は、「確かに笑えるが往時ほど爆笑できない」という微妙な位置をさまよっていて、本作もそこから脱却していないように思った。特に今回は連載からの加筆・修正が不十分だったのか、話の作り込みが甘いので余計ひっかかる。

2003.7.4 (Fri)

ドナルド・E・ウエストレイク『鉤』(2000)

鉤(110x160)

★★★
The Hook / Donald E. Westlake
木村二郎 訳 / 文春文庫 / 2003.5
ISBN 4-16-766133-0 【Amazon

売れっ子小説家のブライスは、スランプに陥って作品が書けなくなっていた。そんななか、久しぶりに同業のウェインと再会、彼にゴーストライターになるようもちかける。報酬は莫大な収入を分け合うというもの。さらに、妻を排除したかったブライスは、「殺人」を条件に加えるのだった。

彼にとって、小説の創作は園芸のようだ。種を選び、説明書どおりに扱うと、だんだん美しいものが──もしくは丈夫な物や栄養豊富なものが──成長し、自分のものになる。大事に育てられない種はあとで可愛がられることを期待していない。しなびて、枯れる。(p.219)

パトリシア・ハイスミス風の犯罪小説。殺人を軸とした人間関係の変化を追っている。実行犯よりも依頼人のほうが不安定になり、両者の力関係が逆転していくのが面白い。あと、ウェインの妻やブライスの元妻など、女がとても現実的に描かれていて、モラルの枠をあっさり越えているところも良い。外側から男たちの行動を制限している。

創作の内幕ネタが興味深かった。作家とエージェントが膝を詰めて話し合い、登場人物の行動を決めていく。その様子はまるでプロファイリングのように本格的だ。アメリカではこんな風に創作しているのか、と好奇心を刺激された。

2003.7.9 (Wed)

チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』(1860)

★★★
Great Expectations / Charles Dickens
山西英一 訳 / 新潮文庫 / 1951.10
ISBN 4-10-203001-8 【Amazon
ISBN 4-10-203002-6 【Amazon

鍛冶屋育ちの少年ピップが遺産相続人になる。

基本的には語り手の人生を切り取ったビルドゥングス・ロマンだけど、同時に彼は周りの悲劇を媒介する狂言回しとしても機能している。接点のなさそうな複数の挿話が、一つの物語に統合されるところは圧巻。いかにも大時代的な小説といった貫禄がある。

というか、はっきり言ってやりすぎだろう。ここまでやられると脱力するってくらい話が繋がっている。