2003.7b / Pulp Literature

2003.7.11 (Fri)

逢坂剛『禿鷹の夜』(2000)

禿鷹の夜


文春文庫 / 2003.6
ISBN 4-16-752006-0 【Amazon

禿鷹シリーズ1作目。神宮署の悪徳刑事・禿富鷹秋(ハゲタカ)が、暴力団と組んで南米マフィアの殺し屋と戦う。

これはかなり厳しかった。ハゲタカの内面を描かないというハメット的な試みに挑戦し、その設定に足下を救われてしまった小説。欧米が舞台のピカレスクを日本に移し替えたような話で、ここまで主人公の存在に説得力がない小説は珍しいような気がする。

警察の公務・制約をまったく考慮に入れないのは良いとしても、周りの人間からハゲタカを照射するという手法は逆効果だったんじゃないだろうか。思わせぶりな描き方が、かえって人物像の薄っぺらさを強調させてしまっている。ハゲタカの悪徳行為は周りが騒ぐほど大したことないし、彼を見上げる暴力団員たちはみんな恐ろしくへぼいし。かろうじて面白かったと言えるのは、殺し屋の造詣くらいだった。

2003.7.14 (Mon)

四方田犬彦『漫画原論』(1994)

★★★
ちくま学芸文庫 / 1999.4
ISBN 4-480-08478-9 【Amazon

漫画の表象システムを論じた本。

漫画読みが無意識のうちに了解していることを記号論的なアプローチで掘り起こす。のみならず、古今の漫画を縦横無尽に引用し、それらを比較することで記号の変遷をわかりやすく説明している。

こう書くと、マニュアル本のような毒にも薬にもならない内容だと思われそうだけど、本書では記号やその変遷に対して所々ラディカルな解釈が施されていて面白い。たとえば、『めぞん一刻』に登場する人物の顔の相似が、「本質的に閉鎖された鏡宇宙のなかでの反映どうしの自己照射」(p.200)と論じられていて刺激的。こういうのは作者の描画力に責を問うものだと思っていたので、本書の解釈にはのけぞった。