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2003.8.26 (Tue)
▲W・R・バーネット『リトル・シーザー』(1929)
★★★
Little Caesar / W.R. Burnett
小鷹信光 訳 / 小学館 / 2003.7
ISBN 4-09-356511-2 【Amazon】
殺し屋のリコが暗黒街でのし上がる。
実は最近観た『犯罪王リコ』が良かったので、密かに翻訳を心待ちにしていた小説だったりする。
映画版が孤独と友情をテーマにしていたのに対し、原作は挫折と再生をテーマにしている。栄光の場面は予定調和で退屈だけど、挫折の場面は内面描写が上手くて読み応えがある。何より自己憐憫の匂いを抑えているところがポイント高い。終盤は『ハイ・シエラ』と通底する雰囲気で、とりわけラスト一行に男の美学が感じられる。
2003.8.30 (Sat)
▼キャスリーン・ジョージ『誘拐工場』(2001)
★
Taken / Kathleen George
高橋恭美子 訳 / 新潮文庫 / 2003.8
ISBN 4-10-201111-0 【Amazon】
夫と別居予定にある女が乳児誘拐事件に遭遇し、犯人グループに拉致・監禁される。
誘拐事件を通して、それに関わる「等身大の人物」たちの心の悩みを描いていこうという試み。父親から受けた暴行がトラウマになっているとか、警官という職業のせいで夫婦関係が上手くいってないとか、環境のせいで犯罪者になったとか、そういう鬱陶しい脱線が目白押し。でもって、もちろんメインはヒロインの恋愛劇で、夫と別居中の彼女が妻子持ちの警官とイイ関係に発展するところが肝になっている。
と、このように人間ドラマを重視した結果、捜査関係のプロットがやばいくらいおざなりになっていた。いやー、奇跡的な生還はいいとしても、ヒロインがとんでもない記憶力の持ち主だったり、インターネットで簡単に犯行グループの一人が割れたり、接近の仕方が都合良すぎだろう。また、違法養子斡旋業という社会問題も、取り上げ方が恐ろしく表面的で読むに耐えなかった。だいたい、「誘拐工場」なんていうタイトルがついてたら、もっと冷徹で組織的でプロフェッショナルなグループを想像するじゃないか。実行犯がこんな無能者の集まりでいいのだろうか?
結局のところ、単調な事件を余計な人間ドラマで水増ししているだけにしか思えなかった。「等身大の悩み」といえば聞こえはいいけどねえ……。まあそれはともかく、離婚問題が中核になっているのは、アメリカの社会事情を反映しているのだろうな。ドラマに関しては、この部分だけが唯一興味深かった(と、無理矢理褒めてみる)。