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- 22 : 連城三紀彦『人間動物園』(2002)
- 23 : 連城三紀彦『白光』(2002)
- 25 : 連城三紀彦『流れ星と遊んだころ』(2003)
- 28 : ニコルソン・ベイカー『中二階』(1986,88)
- 30 : ニコルソン・ベイカー『もしもし』(1992)
2003.11.22 (Sat)
▲連城三紀彦『人間動物園』(2002)
★★★
双葉社 / 2002.4
ISBN 4-575-23436-2 【Amazon】
4歳の娘が誘拐されたと主張する女性。女性の部屋にはたくさんの盗聴器が仕掛けてあって身動きできない。
連城三紀彦が誘拐ものを書くとこうなるんだろう、という期待を裏切らない小説だった。この誘拐は狂言なのか、あの人物は共犯なのか、黒幕はあの大物なのか、動機はあれなのか、などと様々な可能性を匂わせながら進み、最後には『敗北への凱旋』【Amazon】ばりの突飛な全体像が明るみに出る。犯人の思考に説得力がなくていまいちすっきりしないものの、細かい変転を繰り返しながら1つの計画に像を結ぶプロセスは相変わらず上手い。また、著者が「連城三紀彦」であることを利用したような引っ掛けが、突っ込みを誘うような記述で微笑ましい(連城先生、なにげに凄いこと書くなあとか)。
ただ、今回は文章が難点だったかな。人物を獣に喩える表現がえらい浮いていて、リアリスティックな作品世界に馴染んでいなかった。犯人の思考に説得力がないのも、この表現に一因があるような気がする。思えば、フランスと日本が舞台の『恋』【Amazon】でも、若者の描写が偏見入っていて変だったし、さらに濡れ場が濃密な『花堕ちる』【Amazon】でも、獣じみた男が漫画的で物足りなかった。この著者は論理操作が安定している反面、人物描写はとんでもない時がある。
2003.11.23 (Sun)
▽連城三紀彦『白光』(2002)
★★★★
朝日新聞社 / 2002.3
ISBN 4-02-257721-5 【Amazon】
4歳児が何者かに殺される。
三人称視点と複数人物の一人称視点が混在する構成。端的にいえば、『私という名の変奏曲』【Amazon】プラス「藪の中」【Amazon】。そこに、ねじくれた家族関係、忌まわしい過去、中年のアイデンティティ問題など、この著者らしい素敵要素が盛り込まれている。痴呆症の老人がブラックボックスになっている結果、複数の人物に真犯人疑惑のお鉢が回っていく構造になっていて、とても技巧的だと感心した。
ところで、本作の登場人物の中に印象深いキャラクターをしている者がいる。それは誰かというと、淫乱妻に浮気をされているあの人。妻の浮気相手と接触するシーンで、相手を独自の論理で困惑させるところなんかは、まるで『ジョジョの奇妙な冒険』から抜け出してきたかのような雰囲気だった。俳優でたとえるなら佐野史郎。
2003.11.25 (Tue)
△連城三紀彦『流れ星と遊んだころ』(2003)
★★★★★
双葉社 / 2003.5
ISBN 4-575-23462-1 【Amazon】
芸能マネージャーが偶然出会った男をスターに仕立てようとする。
一人称「俺」の告白形式に、過去の再現として三人称叙述が入り交じる。「俺」が新宿の酒場で不思議ちゃん入った女性と出会う冒頭は、藤原伊織のハードボイルドといった趣き。ストーリーは『牡牛の柔らかな肉』【Amazon】のような野望達成型だけれども、『牡牛〜』が「窮地からの逆転」を主体にしていたのに対し、本作では「逆転」が別の範囲にまで及んでいるので予断を許さない。とにかく、ひたすらどんでん返しが繰り返されていく。
技巧的な叙述が場当たり的な快感を作り出しているだけでなく、終盤での場面演出の装置にもなっていて素晴らしい。技巧を完結した芸として見せるだけに止まらず、そこに別の機能まで持たせるなんてことは、なかなかお目にかかれないと思う。というかこれ、『明日という過去に』【Amazon】以上の、連城三紀彦的叙述トリックの最高峰ではなかろうか。久々に騙される快感を味わった。
2003.11.28 (Fri)
▽ニコルソン・ベイカー『中二階』(1986,88)
★★★★
The Mezzanine / Nicholson Baker
岸本佐和子 訳 / 白水uブックス / 1997.10
ISBN 4-560-07122-5 【Amazon】
会社の昼休みに靴ひもを買いに行った男のミクロ的考察を描く。
ストロー、靴ひも、ペーパータオルなどといった普通の人なら気にもとめないような物に注目し、延々とそれについて思索する。人が何か物について考えるとき、その過程で様々な飛躍・脱線を繰り返していると思うけれど、本作ではそれを極度に拡大し、芸にまで昇華させている。本文での回り道思考もさることながら、注釈を用いた膨大な蘊蓄垂れエッセイが細密で圧巻。主人公のミクロな物に執着する姿勢に面白味を感じた。
2003.11.30 (Sun)
▼ニコルソン・ベイカー『もしもし』(1992)
★★
Vox / Nicholson Baker
岸本佐和子 訳 / 白水uブックス / 1996.8
ISBN 4-560-07118-7 【Amazon】
テレフォン・セックスの模様が綴られる。
ほとんどが男女の会話文だけで成立している小説。章立てや段落空けによる切れ目がなく、2人の会話時間と物語内の時間の経過が同期する『ロープ』【Amazon】みたいな形式になっている。
この小説は作中でふんだんに性的エピソードが語られるのだけど、それらが悉くつまらなくて困惑してしまった。私の琴線に触れたのは、せいぜい「並行型自慰行為」(*1)くらい。たぶん、これらは対話遊技の記号(=絶頂に達するまでの手順)として割り切って読むべきで、一つ一つに面白味を期待してはいけないのだろう。エピソード群の面白さで読ませる『中二階』と比べるとずいぶん物足りない。