2004.2b / Pulp Literature

2004.2.11 (Wed)

山内一也『狂牛病(BSE)・正しい知識』(2001)

狂牛病(BSE)・正しい知識(112x160)

★★★
河出書房新書 / 2001.12
ISBN 4-309-25153-6 【Amazon

Q&A形式でBSE(牛海綿状脳症)の話題を解説している本。ちなみに、人獣共通感染症連続講座(山内一也)(第126回) で、本書の「目次」、「まえがき」、「あとがき」を読むことができる。

本書は要点をまとめた卒のない内容。BSEの特性とメカニズムについて一通り述べ、さらに他のプリオン病(*1)との関連についても触れ、誤解に基づく差別や偏見を正すよう注意を促している。各トピックは、深くもなけれれば浅くもないといった感じなので、BSEに関して予備知識のない人が、最初の一冊として手を出すには最適の本と言えるだろう。個人的には既知の内容が多かったものの、以下の指摘は盲点を突かれた形だったので面白かった。

  1. オイルショックの影響で肉骨粉の加熱を怠ったという視点。精製工程を省略した理由はオイルショックだった。
  2. 迅速プリオン検査によって検出率が高くなったことが、ある時期のBSE牛急増に反映しているという指摘。これは統計資料を見るときの基本的な注意点。

話は変わってネーミングについて。BSEを「狂牛病」と呼んだり、伝達性の病気を「伝染性」と表記したりするのは、著者に言わせると理に適っていないらしい。本書ではそういったアホなネーミングをした行政やマスコミを軽く一刺ししている。また、BSE牛から感染する変異型CJDは、従来からある孤発型CJDとは別物なので、前者にCJDと冠するのも宜しくないようだ。

以下、BSEを知るのに有用なリンクページ。

*1: スクレイピー、クールー、CJD。

2004.2.16 (Mon)

マクシム・シュワルツ『なぜ牛は狂ったのか』(2001)

なぜ牛は狂ったのか(110x160)

★★★
Comment Les Vaches Sont Devenues Folles
山内一也 監修 / 南條郁子・山田浩之 訳 / 紀伊国屋書店 / 2002.5
ISBN 4-314-00913-6 【Amazon

3世紀に及ぶプリオン病発見の歴史を追った本。

著者はパスツール研究所の元所長。そのせいかパスツール贔屓と思しき記述がちらほら見られる。内容は18世紀のスクレイピーから説き起こし、現代のBSEまでをほぼ時系列で物語るというもので、主に科学的アプローチに主眼を置いている。

2004.2.17 (Tue)

矢吹寿秀・NHK「狂牛病」取材班『「狂牛病」どう立ち向かうか』(2002)

「狂牛病」どう立ち向かうか(110x160)

★★
NHK出版 / 2002.5
ISBN 4-14-080654-0 【Amazon

BSEに対して行政的な面からアプローチしている。元はTV番組用に取材したもの。

平たくいえば、行政批判の本である。「BSEインクワイアリー」を主な情報源としている。そこからイギリス政府の失態を紹介し、返す刀で日本の行政に斬りかかっている。本書によると、日本のBSE騒動は「官製パニック」であるらしい。詳しい説明がないのでいまいちピンと来ないのだけど、まあ問題点が浮き彫りになることはいいことだと思う。

とりあえず、イギリスの問題はこんな感じ。

  • スクレイピーが「種の壁」を越えないという経験知があったため、当初BSEは深刻に受け止められなかった。
  • 情報公開に後ろ向きだった。
  • 危険と分かっていた肉骨粉を、輸入国に責任をとらせる形で輸出していた。

本書の難点は、行政の失態というユニークな観点のわりに、材料が豊富でないところである。BSEパニックに関する責任の所在(行政内の)が不透明だし、利権問題という重要な視点が抜け落ちているのも気になる。たぶん問題の性質上、取材できる対象が限られていたのだろう。テレビ番組用とはいえ、かなり欲求不満だ。