2004.3a / Pulp Literature

2004.3.4 (Thu)

イアン・マキューアン『時間のなかの子供』(1987)

★★★
The Child in Time / Ian McEwan
真野泰 訳 / 中央公論社 / 1995.8
ISBN 4-12-002478-4 【Amazon

童話作家の娘が失踪した。その後、妻と別居状態になる。

イアン・マキューアンの長編3作目。1作目の『セメント・ガーデン』と2作目の『異邦人たちの慰め』は、倒錯趣味の因果に空白があったため、居心地の悪い雰囲気が醸成されていた。それに対して本作は、ミステリ小説並に因果を語りすぎているため、いささか安直な印象を与える。確かに懇切丁寧な説明によって、一定のカタルシスは得られたけれど、その反面、合理的な辻褄合わせによって、小説世界がフラットになっていると思う。

一方、子供時代の捉え方はユニークで刺激的だった。子供時代は大人の都合で作られた制度であるという視点。囲い込みとして作られた子供時代が、思ったほど安全だったり健全だったりしないのだという視点。とりわけ衝撃的だったのが、友人の幼児退行を綴った部分で、この辺をもっと掘り下げて語ってほしかった。

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2004.3.9 (Tue)

イアン・マキューアン『黒い犬』(1992)

黒い犬(110x160)

★★★
Black Dogs / Ian McEwan
宮脇孝雄 訳 / 早川書房 / 2000.7
ISBN 4-15-208290-9 【Amazon

「わたし」が義理の両親の回想録を書く。

いかにもヨーロッパ圏の作家が書きそうな内容だった。ナチス=ヨーロッパの暗黒、みたいな「悪」の単純化が気になるものの、それでも戦後の相克を物語る手並みは抜群だ。寓意と象徴が入り混じって、不穏な空気が立ちこめている。

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