2004.4a / Pulp Literature

2004.4.1 (Thu)

ドン・デリーロ『コズモポリス』(2003)

コズモポリス(106x160)

★★
Cosmopolis / Don Delillo
上岡信雄 訳 / 新潮社 / 2004.2
ISBN 4-10-541804-1 【Amazon

ニューヨーク。若くして巨万の富を築いた会社社長が命を狙われる。

ずれた会話やアンニュイな思想、気取ったフレーズなど、雰囲気づくりが凝っていた。物質が云々、自己存在が云々というお話を、猥雑な大都会やハイテク機器といった意匠を用いて表現している。まったくぴんと来ない内容だったけれど、問題意識を統合する語り口は印象的である。

2004.4.9 (Fri)

キアラン・カーソン『琥珀捕り』(1999)

琥珀捕り(112x160)

★★★
Fishing for Amber / Ciaran Carson
栩木伸明 訳 / 東京創元社 / 2004.2
ISBN 4-488-01638-3 【Amazon

オランダ色濃厚な物語のごった煮。

さまざまな神話や伝記、蘊蓄などが複雑な入れ子構造で語られていく異色の物語。入れ子具合がはじけていたり、話題が多岐に渡っていたりするため、現在のエピソードはどのレベルの語り手によって語られているのか、というのを把握するのにけっこう手間取った。物語全体を牽引するような明快な筋はなく、「琥珀」や「フェルメール」といったキーワードによって、いくつかのエピソードは緩かに繋がりを持っている。

この小説は様々な場面で名詞を並べ立てている。読む側にとっては目障りで鬱陶しい反面、この羅列が語り手の博識さ、引いては物語の豊饒さを引き出している。さらに羅列が手を替え品を替え何度も出てくることで、ちょっとした変奏曲のような趣さえ感じられる。

対蹠地(Antipodes)から回転のぞき絵(Zoetrope)まで、のらりくらりと物語が溢れ出る本作。意外な繋がりが判明したり、隠れたテーマが浮上したりする終盤の畳みかけが気持ちいい。正直、興味の持てたエピソードと持てなかったエピソードが半々くらいで、途中まであまり印象は良くなかった。なので、この終盤でかなり救われた思いがした。

数々の物語が詰まった本作は、一日一章づつ寝る前に捲るのがベストな読み方なのだろう。ギャラリー相手に夜な夜な物語を披露する冒険王ジャックのエピソードなんかは、まさにそういう楽しみを体現したものだった。逆にいえば、一気読みは辛かったりする。