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2004.6.21 (Mon)
△ガブリエル・ガルシア=マルケス『愛その他の悪霊について』(1994)
★★★★★
Del Amor Y Otros Demonios / Gabriel Garcfa Marquez
旦敬介 訳 / 新潮社 / 1996.5
ISBN 4-10-509007-0 【Amazon】
ISBN 4-10-509016-X 【Amazon】(新装版)
舞台は18世紀半ばのカルタヘーナ。12歳になる侯爵の娘が狂犬病の犬に噛みつかれた。元々奔放だった娘は、これを機に悪霊に取り憑かれたと誤解される。信仰心に目覚めた侯爵と、娘が大嫌いな侯爵夫人は、療養と称して彼女を修道院に入れる。
この時代のコロンビアは、スペインの植民地で奴隷の売買が盛ん。キリスト教も猛威を振るっている。当然、時代が時代なので人々は迷信深く、人間を狂気に追いやる「悪霊」なるものが当たり前のように信じられている。神の名のもとに娘を修道院に監禁し、悪魔祓いと称して非人道的な振る舞いに及ぶ。まるで魔女狩りみたいな理不尽な仕打ちが、平然と行われるのだから恐ろしい。司教の狂信ぶりといい、修道院の抑圧ぶりといい、作中にはキリスト教支配によるネガティブな空気が蔓延している。
この小説では「愛」というのが重要な役割を果たしていて、登場人物の誰もが愛情関係を結べないでいる。たとえば、侯爵は先妻を落雷で亡くした後、平民女にレイプされて妊娠されて渋々再婚したという始末。もちろん、平民女は金のために結婚を迫ったのだから2人の間に愛情はない。それどころか、女は生まれてきた娘に憎しみを募らせている。一方、侯爵には昔馴染みの女がおり、彼女に好意を寄せられるのだけど、結局この縁はレイプ事件もあって立ち消えになる。さらに愛情無しで育てられた娘は、家に仕える黒人奴隷に傾倒し、彼らの言葉を学んで共に暮らすようになる。そして、修道院に入れられた後はとある人物から懸想されるが……。
と、このように本作はキリスト教の抑圧と愛の欠如により、やたら沈鬱な雰囲気となっている。髪の毛を22メートルも生やした死体の話や、体重分の黄金で買い取った女奴隷の話など、相変わらず胡散臭いエピソードが盛り込まれているものの、雰囲気はそれを覆わんばかりに重苦しい。そんなわけで、植民地時代の抑圧的な世相と、愛なき人間模様に引き込まれたのだった。
2004.6.25 (Fri)
▲連城三紀彦『夢ごころ』(1988)
★★★
角川文庫 / 1991.12
ISBN 4-04-178403-4 【Amazon】
短編集。「忘れ草」、「陰火」、「露ばかりの」、「春は花の下に」、「ゆめの裏に」、「鬼」、「熱き嘘」、「黒く赤く」、「紅の舌」、「化鳥」、「性」、「その終焉に」の12編。
以下、各短編について。
「忘れ草」
手紙形式なのだけど、書き出しからして既にただ者じゃない雰囲気。素人女性が書いたとは思えないほど、比喩、情景描写、リズムといった表現力が冴え渡っている。この著者の文章の上手さは、人間の奥深い情念を写し出すのに適しているのだなあ、と感心。ただ、『人間動物園』みたいに思いっきり外すこともあるけれど……。
「陰火」
ラグビー部の先輩後輩という男同士の関係。小道具で雰囲気を演出するのが上手く、「洗い立てのような真っ白いタオル」なんか偽りの清潔さを表しているようでとても怖い。心の内にどろどろした情念が煮えたぎってそう。あと、本作を読んで「やらないか」を思い出したのは秘密だ。
「露ばかりの」
少年のような男を愛する女。「抱いた感触で浮気が分かる」から幻想小説風なオチへ能力が飛躍する。さらに連城風のどんでん返しもあり。女の情念とどんでん返しと幻想小説的な雰囲気がほどよく絡み合っている。
「春は花の下に」
ヒロインが小学生の頃、納屋で火事があって同級生が焼け死んだという話。これはもうぶっ飛んでいるというか、容赦がないというか。例によってミステリ小説的な技巧がとんでもないものを引き出している。やはり見せ方は重要だと思った。
「ゆめの裏に」
入院している妻と夫の関係。コオロギと夢がキーワード。相変わらずアイテムの使い方がノリノリだし、背景の説明がないところが「氷山の一角」といった感じの奥行きを感じさせる。いったい2人の間には何があったのだろう? 理由不明の情念が恐怖心を煽る。
「鬼」
とある芸術家に焦点を当てた話。なぜ作風が変わったのかという些細な謎から出発する。一部の伏線があからさまに思えたものの、様々なパーツに理由付けが為されるところが爽快だった。冒頭の、柿の実を食すという味覚に訴える表現が印象的。
「熱き嘘」
死者から手紙が届いたという導入部。この短編集には超常なものとそうでないものが混ざっているので、たとえば、「死者からの手紙」という超常要素が出てきた場合、それがホントかどうか種明かしされるまで確信が持てない。その辺が本書の肝なんだなと思う。
「黒く赤く」
悪女もの。男を破滅させるのが趣味というのは、いかにもこの著者らしい造詣だ。五感に訴えかけてくるような比喩がおっかない。
「紅の舌」
「黒く赤く」の後日譚。ミステリ小説でよく出てくるあのネタが、本作では意外なところで使われている。蟻地獄にはまっていく男の様子と前作を材料とした逆転の論理が面白い。比喩満載の艶っぽい描写も良い。
「化鳥」
本書の中では一番のお気に入り。薄幸の老婆が手紙で自分の人生を回顧するのだけど、その内容が凄い。自分の意志とは関係なしに、邪魔ものがバタバタ死んでいくのである。自己申告なのでホントがどうか分からないというのがポイント。その不可思議現象が現代に繋がることで、実効性を感じさせるようになる。名探偵不在だから真相は分からずじまい。
「性」
裏戸を叩く音に恐怖する話。わざわざ離婚届を持ってくるってのは嫌がらせ以外の何者でもないよね。
「その終焉に」
おじさんと少年が知り合って親しく話すようになる。交通事故をネタにした以外な真相。少年の語りがとても切ない。
2004.6.30 (Wed)
▲『ネコと友だちになる飼い方・育て方』(1995)
土田佐知江 監修 / 新星出版社 / 1995.3
ISBN 4-405-10631-2 【Amazon】
猫の入手方法から出産や死への対処まで、猫の飼い方を網羅的に綴った本。
平たく言えばハウツー本。この手の本はどれも同じようなことを言っているはずなので、取り立てて書くこともないのだけど、いくつか印象的な猫知識があったので、ここにメモしておくことにした。これから書くことはたぶん猫好きにとっては常識だろうし、他の本にも書いてありそうな気がする。
以下、メモ。
- 猫にもレム睡眠とノンレム睡眠がある。
- 猫のヒゲは切っちゃいけない。
- 身づくろいして飲み込んだ毛は胃の中でボール状に固まる。
- 猫は汗をかかないので、加工食品は塩分過多になる。
- 猫にドッグフードを与えるのは危険。
- 人間のための牛乳は下痢になるのでダメ。
あと、本書には書いてないけれど、いくら花壇を荒らされたからといって、猫をエアガンで撃っちゃいけないぞ。