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2004.11.2 (Tue)
▲ナニワ太郎&大阪弁訳聖書推進委員会『コテコテ大阪弁訳「聖書」』(2000)
★★★
データハウス / 2000.11
ISBN 4-88718-576-6 【Amazon】
マタイによる福音書を大阪弁に訳した本。
聖書の勉強というよりは、大阪弁の勉強のつもりで読んだ。大阪弁で語られるイエスの行状はとても胡散臭く、聖書(福音書)のトンデモ本的側面が強調されていて面白い。悔い改めなかった町の人に対する説教なんか、「裁きの日」を持ち出して脅迫しているだけだし、弟子をリクルートする場面なんか、「わてについてこい」と誘ったら即座についてくる論理の欠落っぷりが、不条理コントみたいで可笑しい。とりあえず、親しみやすいことは確かなので、聖書を読む前の入門書としてはちょうど良さそうである。
それにしても、レイアウトはどうにかならなかったものか。本書は上下二段組(スペースの比率は8対2)で、上段に本文、下段に註釈および「現代人への指標」という構成なのだけど、序盤のページに註釈が固まっていて読みづらかった。普通、下にスペースを作ってあるのなら、本文と註釈は同じページ内に収めようとしないだろうか? また、註釈を固めるんだったら、それぞれに番号を振らないだろうか? このレイアウトは酷すぎる。
2004.11.5 (Fri)
▲ウラジーミル・ナボコフ『ディフェンス』(1930,64)
★★★
The Defense / Vladimir Nabokov
若島正 訳 / 河出書房新社 / 1999.11
ISBN 4-309-20328-0 【Amazon】
=「金之助」や。
=「美也子」です。
アイコンは、アイコン・WEB素材のアッコの畑のものを使用させてもらってます。
『ディフェンス』はチェスのグランドマスターを主人公にした小説ね。『愛のエチュード』【Amazon】という名前で映画化もされた。
主人公のルージンは非モテ系の冴えないキチガイ男なんやけどチェスは滅法強いんよな。ほんで、そいつが作者に嬲られてますます狂気に駆られていくっちゅう話。
作者に嬲られるなんて言うと誤解されそうだけど……。
作者が直接顔出しするわけでもなければ、登場人物がフィクション世界の住人であることを自覚するわけでもない。運命の皮を被った伏線とルージンの狂気っちゅう形でほのめかされるだけなんや。ルージンは自分の人生をチェスの対局と妄想し、終盤では何とか罠にはまらないよう動く。それがめっちゃおもろい。せやから、あまり深読みせんでも妄想電波野郎のあがきっちゅう感じで楽しめる。
けれど、そういう読み方は著者のまえがきで封じられるんじゃないかしら。この小説にはチェスの技巧が取り入れられているみたいな説明があるし。作者の仕掛けを意識するよう要求している。
まー、さじ加減が上手いんやな。作中のレベルやと妄想になるんやけど、読者のレベルやとそれが微妙になるっちゅう。わしはこの微妙さが好きや。
世の中には人生をゲームにたとえたりする人もいるけど、たいていの場合、対戦相手というのははっきりと想定されない。想定されないのは、人生の目的や勝ち負けといったものが漠然としてるからだけど、この小説みたいな視点は目から鱗だったわ。
ほんじゃ、今日はこの辺でお開きに。運命に翻弄されるルージンがおもろかったなっちゅうことで。ほな、さいなら。
じゃあ、また。
#2004年11月某日/某スタバにて
2004.11.6 (Sat)
▼青野太潮『どう読むか、聖書』(1994)
★★
朝日選書 / 1994.1
ISBN 4-02-259590-6 【Amazon】
聖書を批判的に読むことを推奨した本。著者は大学教授にしてプロテスタント系の牧師。
後半にあるパウロ関係の記述は適当に飛ばし読みした。本書はファンタジー満載の聖書を現実的に読み解こうとした本で、メインは「イエスの復活」を実話として解釈する部分になる。私はこれまで「復活」を権威づけのためのハッタリだとしか思っていなかったので、本書の試みにはのけぞってしまった。何というか、「ものは言いよう」という言葉を実践してるような感じ。
「マルコによる福音書」の唐突な終わり方、十字架でイエスがつぶやいた言葉、パウロの回心。これらが著者の「復活」解釈によって、現実的な筋道が示されてしまうのだけど、それにしても、与太話の域を越えてないと思うのは気のせいだろうか。材料に乏しい状況下で、めいっぱい想像の翼を広げているというか。ひょっとしたら聖書解釈という分野には、文芸解釈に匹敵するとんでもない沃野が広がっているのかもしれない。
2004.11.8 (Mon)
▼高尾利数『イエスとは誰か』(1996)
★★
日本放送出版協会 / 1996.3
ISBN 4-14-001763-5 【Amazon】
「マルコによる福音書」と田川健三の解釈を手引きにして、イエスの「原像」に迫ろうとした本。
本書によると、「マタイによる福音書」と「ルカによる福音書」は、護教的立場から「マルコ」の意図を著しく歪めて伝えているらしい。「共観福音書」と称せられるにも関わらずである。これはおそらくその通りなのだろう。平行記事と比較したテキスト解釈はそれなりに納得できるものが多く、福音書間の差異を知るのに役立った。
しかしながら、まっとうそうな解釈のなかに根拠のない妄想が散りばめられていたり(*1)、現代を引き合いに出した露骨な反体制の論述が展開されたり(*2)、所々が鬱陶しいのには辟易した。前者はただの牽強付会だし、後者は聖書解釈とは何ら関係のない余計なお説教である。この著者は「マタイ」と「ルカ」を歪んだものであると断罪するけれど、それを言ったら、「マルコ」を無謬のように扱って都合の良いイエス像を抽出した本書だって歪んでいる。
本書のもっとも大きな特徴は、田川健三への傾倒ぶりが常軌を逸しているところだろう。著者は何かあると田川の解釈を引き合いに出し、それらに盲目的な賛同の意を表している。実際には数えてないけれど、10箇所くらいはあるんじゃないか、このパターン。一冊の本でここまで依拠するのは、さすがに不自然と言わざるを得ない。
2004.11.9 (Tue)
▲スティーヴン・ハンター『悪徳の都』(2000)
★★★
Hot Springs / Stephen Hunter
公手成幸 訳 / 扶桑社 / 2001.2
ISBN 4-594-03077-7 【Amazon】
ISBN 4-594-03078-5 【Amazon】
スワガー・サーガの5作目。太平洋戦争の英雄であるアール・スワガーが、賭場撲滅のための摘発部隊で大活躍する。
摘発部隊が解散するところまでは文句無しの大傑作。が、後半、父親の過去と子供の現在が都合良く繋がって、哀愁漂わせようとするのがあざとくていまいちだった。アールの当て推量が敵の持ってる証拠で確定してしまうのはどうかと思ったし、人間の謎で引っ張るんだったらもう少し意外な答えを用意してくれと思った。これではハリウッドアクション的な、安っぽい流れ作業の世界ではないか。後半はアクション以外に見るべきところがないと思う(*1)。
一方、相変わらずアクションは素晴らしい。これはひとえに、銃器に関するディテールの凝り具合がずば抜けているからだ。主人公のアールはシュワルツェネッガーばりに無敵すぎだし、それゆえに爽快感も抜群。この著者は深刻な人間ドラマなんて作らない方がいいんじゃないか、と思えるくらいアクションと人間ドラマの落差が激しかった。
そういうわけで、本作は映画化向きの小説であることに間違いない。主演はブルース・ウィルスとか(シルベスター・スタローンでも可)。あと、本作を絶賛するような人には、日本のエンタメ小説を見下す資格は断じてないだろう。だってそれ、ただのアメリカかぶれですから。
2004.11.10 (Wed)
▲ジェラール・ベシエール『イエスの生涯』(1993)
★★★
Jeus Le dieu inattendu / Gerard Bessiere
小河陽 監修 田辺希久子 訳 / 創元社 / 1995.2
ISBN 4-422-21094-7 【Amazon】
イエスについてあれこれ。
図版が多い普通の入門書。著者はカトリックの神父のようだけど、それから推測されるような癖の強さはない。説教臭くもなければ、狂信的でもない。門外漢でも受け入れやすい穏当な内容である。個人的に興味深かったのは、イエスの奇跡がモーセの奇跡の再現であると喝破したところと、4つの福音書の目的や対象読者層を概括したところで、いずれも当時の物語作者の思惑が見えてきて面白かった。