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2004.12.29 (Wed)
▽レフ・トルストイ『イワン・イリッチの死』(1886)

★★★★
Смерть Ивана Ильича / Лев Н. Толстой
米川正夫 訳 / 岩波文庫 / 1973.1
ISBN 4-00-326193-3 【Amazon】
イワン・イリッチの発病から死まで。
不治の病に冒された人間の心理を克明に綴っている。人は生まれたら最後、死の恐怖に怯えながら生きていかなければらない。死とは誰に対しても必ず訪れるのに、われわれは他人の死には驚くほど無頓着だ。他人の死に遭遇したとき、われわれは喪失を哀しむと同時に、我が身の無事を顧みて安堵をおぼえる。生命とは孤独だ。たとえ、どんなに親しい間柄でも、目前に迫った死の恐怖を取り除いてはくれない。孤独と苦痛は、自分が一身に引き受けなければならないのである。そう考えると、宗教や薬物に頼るのも悪くないのかもしれない。十字架と注射針で法悦境に旅立つのも悪くないのかもしれない。しらふで悟りを開くなんて、凡庸な人間には無理のように思える。
と、本作はそういう鬱になる小説だった。心理描写が秀逸で、死にゆく人間の孤独をたっぷり堪能できる。新春の浮かれムードのひとときに読むのも一興だろう。