2005.6a / Pulp Literature

2005.6.1 (Wed)

エルフリーデ・イェリネク『ピアニスト』(1983)

ピアニスト(110x160)

★★★
Die Klavierspielerin / Elfriede Jelinek
中込啓子 訳 / 鳥影社 / 2002.2
ISBN 4-88629-635-1 【Amazon

母親に抑圧され続けてきた中年の女性ピアノ教師が、教え子である年下男性に迫られて恋愛関係になる。ところが、ピアノ教師にはとんでもない性癖があった。

いかにもポストモダン崩れといった感じの読みづらい小説だった。会話文が地の文に埋没していたり、筋書きが非直線的で散漫だったり、場面場面を綿密に描写していたり、手法がかなり凝っている。また、文章表現がとても風変わりで、意表を突くような比喩や、一つ一つの単語に拘る姿勢など、まるで詩を読んでいるような感覚に陥る。その独特の言葉遣いに感心させられた反面、表現の凝りすぎでひどく読みづらく、読了するのに他の小説の5倍くらい時間が掛かった。

内容はというと、女の倒錯した性的欲望をラディカルに描いている。まずはポルノ小屋を覗くことから始まって、その後は年下くんをサドっ気入ったテクニックで翻弄、終盤で隠された変態趣味の深奥にまで分け入っていく。ヒロインはピアニストになるべく母親からエリート教育を叩き込まれ、結局は重要なコンサートで失敗して挫折してしまった。その後も母親との共生・癒着の関係は続き、おかげで中年の今に至るまで彼氏がいないでいる。ヒロインの澱のように溜まった倒錯嗜好は、まさに抑圧人生の反動のようで痛々しい。

それにしても、年下男性があまりにちゃっかりしていて笑える。トイレでの対決では懇願する立場だったのに、場所を移しての第2ラウンドではそれが嘘のように主導権を握り、さらに射精した後は態度が豹変してさっさと帰ってしまうのだから。そういえば、ヒロインはグラスの破片を気に入らない生徒のコートに仕込んで怪我させていたけれど、この男も負けてなくて、野外でよろしくやってたカップルを棒で殴打していた。つまり、この女にしてこの男ありという感じで病んでいる。

ちなみに、カンヌ映画祭グランプリ作品である映画版【Amazon】は未見。原作の内容がけっこうグロいので、映像化されたのを観たいとは思わないのだけれど、IMDbでの好評価を見ると少し心が動いてしまう。どんなもんでしょうかね?

>>Author - エルフリーデ・イェリネク

2005.6.3 (Fri)

V・S・ナイポール『ミゲル・ストリート』(1959)

ミゲル・ストリート(113x160)

★★★
Miguel Street / V.S. Naipaul
小沢自然 小野正嗣 訳 / 岩波書店 / 2005.2
ISBN 4-00-002208-3 【Amazon

舞台はトリニダードの下町にあるミゲル・ストリート。ハンフリー・ボガード風の渋い男や、「名前のないモノ」を作り続ける大工、妻子に暴力を振るう嫌われ者など、そこに住む人たちを1人1人ピックアップしていく。全17エピソード。

著者の事実上の処女作。訳者あとがきによると、出版社の判断によって先に『神秘な指圧師』【Amazon】が世に出たらしい。

語りの形式は、一人称の「僕」がミゲルストリートで過ごした少年時代を回想するというもの。ミゲル・ストリートは部外者から見ればスラムみたいな場所なのだが、そこに住んでいる少年にとっては特別な場所で、個性豊かな夢想家たちがおおらかな生活を送っている。妻子を罵倒する声が飛び交い、カリプソの調べがゆらゆらと漂う。大人たちは何かと鞭を振り回しつつ、よき兄貴分として子供たちと親しく付き合う。陰では知人のやんちゃぶりに文句を言いながらも、困ったときには手をさしのべる。大工、花火屋、運転手、詩人、床屋……。ナイポールの描く下町の変わり者たちには、のんびりとした不思議な魅力がある。

本作は最終章の語り手を除けば、都合16人の人間にスポットが当てられる。そして、彼らの物語のほとんどは悲しい結末を迎えることになる。たとえば、ある人物は刑務所に収監されてしまうし、また別のある人物は不本意ながらミゲルストリートを去る結果となってしまう。ストリートの夢想家たちは、その個性を遺憾なく発揮して生活しながらも、どこかでつい躓いてしまう。が、だからといって辛気くさかったり暗かったりするわけではなく、そこには人生の機微が感じられるような、しんみりとした味わいがある。

特に詩人のエピソードが良い。彼は「世界でいちばんすばらしい詩人」を自称する乞食詩人で、何十年もかけて「世界でいちばんすばらしい詩」を創作している。はっきり言って奇人・変人の類だけれども、芸術家らしいちょっとずれた感性と、中年になっても夢を追いかける姿勢に好感が持てる。

それに何たって彼、「ここで何やってんだ」と警官に職質されて、

「その質問を私は四十年間ずっと自分に問いつづけているのです」(p.65)

と答えるのだから格好良すぎる。これなら語り手の世界が、「すごくわくわくする場所」(p.66)になっても仕方がないと思う。

語り手と頻繁につるんでいたハットのエピソードも良い。詳しいことは省くとして、このエピソードでは、蜜月の時間は永遠に続かないという儚さ・切なさが感じられる。我々はいつまでも若くはいられないし、若い感性だって持ち得ない。TV版の『ドラえもん』は、楽しい子供時代を延々と反復してきたし、おそらくこれからも続けるのだろうが、現実の我々はそうはいかない。いつか必ず、居心地の良い場所に別れを告げる日がやって来る。それは物理的な意味もあれば、語り手が感じたような精神的な意味もある。「僕」にとってミゲル・ストリートとは郷愁の場所であり、楽しさ、悲しさ、暴力、それら全てをひっくるめた「思い出」の世界だ。そしてだからこそ、人々の失敗や躓きを語りながらも、決して暗かったりじめじめしたりしないのである。

エピソードは17もある割に「当たり」が少ないような気がした。でも、その「当たり」がもの凄く良かったので、トータルでは悪くないと思った。次は表紙が素敵な『神秘な指圧師』に進もう。

>>Author - V・S・ナイポール

2005.6.4 (Sat)

ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』(1719)

ロビンソン・クルーソー(112x160)

★★★
The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe of York, Mariner / Daniel Defoe
坂井晴彦 訳 / 福音館文庫 / 2003.6
ISBN 4-834-00623-9 【Amazon

ロビンソン・クルーソーが船旅に出て遭難して無人島に流れ着いてそこで生活する。しばらくは平穏に暮らすものの、ある日島に人食い人種が現れる。

無人島での生活を綴った本作は、勤勉なる新教徒のためのサバイバル・マニュアルというか、デフォー先生のキリスト教万歳・信仰告白というか、とにかく宗教がかった内容だった。不信心者だったクルーソーが、島での逆境を機に信仰に目覚める。自分の命が助かったのは「神の思し召し」だと一人合点し、何かにつけて神に感謝の祈りを捧げる。途中、何度か信仰が揺らぐものの、その都度、思索を巡らせて全知全能の神のもとへ帰っていく。極めつけは彼が土人を洗脳、もとい、教化するエピソードだろう。食人の儀式から救い出した土人を「フライデー」と名付け、彼に英語のみならずキリストの教えまで注入してしまう。

西欧の知識で無人島に生活基盤を作り、西欧の武器で人食いの土人どもをぶち殺す。そして、西欧の叡智である聖書によって、彼は孤独でありながらも発狂せずに生活していく。本作で目立つのが「銃」と「聖書」の存在で、この肉体と精神の延長上にある2つの道具が彼を救ってきた。とどのつまり、西欧文明は偉い! ということなのだけど、複雑なのはこれが土人に対する優越感だけで終わっていないところだ。何せ銃は謀反を企てた白人に対しても向けられるし、それに王国である島では信教の自由が許されるのだから。この小説は先住民を野蛮な人食い種としてスキャンダラスに描きながらも、彼らの風俗を尊重してみせたり、一応は命ある人間として扱ったり、意外と寛容な面も覗かせる。18世紀前半の小説だから、もっと差別と偏見にまみれたいけいけの反PCストーリーなのかと思っていた。ところが、残念なことに大してぶっ飛んでいなかったのである。これなら、現代のハリウッド映画のほうがよっぽどすごいかもしれない。

というわけで本作は、土人との激しい交流がある後半よりも、食糧を自給すべく試行錯誤する前半のほうが楽しめたのだった。穀物を育てる・土器を作る・パンを焼く・山羊を飼う。言葉で羅列するのは簡単だけど、製法に気づくまでのプロセス、さらに後々のことを考えた経済計画なんかがきっちり示してあって感心させられる。本作を無人島でのサバイバル・マニュアルみたいに感じるのは、こういった予測され得る様々な苦労を、一通り消化しているからなのだ。

アウトドア精神あふれる本作は、できれば無人島やキャンプ場に持っていきたい一冊である。……と、強引にまとめてみる。

2005.6.5 (Sun)

J・M・クッツェー『敵あるいはフォー』(1986)

★★★
Foe / J.M. Coetzee
本橋哲也 訳 / 白水社 / 1992.4
ISBN 4-560-04471-6 【Amazon

船旅の途中で船員の反乱に遭った女性が、ロビンソン・クルーソーと奴隷のフライデイが住むカリブ海の島に漂流する。そこで彼女は2人と共同生活を送る。

"Foe"とは古期英語で「敵」という意味。と同時に、実はダニエル・デフォーの本名でもあるという、一粒で二度美味しいタイトルになっている。

本作のクルーソーは、デフォーの描いた活動的なクルーソーとは全く違って、えらく無気力な姿になっている。脱出するための筏も作らなければ、自分がそこに存在した痕跡を残そうともしない。黙々と今日の糧を得るべく生活している。クルーソーはそのことを語り手である女性に突っつかれるのだけど、彼はこんな風に切り返す。

「覚えておくがいい。漂流の証しをどこかに刻んだからといって即ち本物の漂流者になるというわけではないのだ」(p.38)

何だかアメリカ産の物語に出てくる孤高の開拓者みたいなセリフだ。今までの無気力な姿とはかけ離れているし、もちろん、我々の知っている活動的・内省的なクルーソー像とも違う。女性の視点を通した彼の人物像はとても謎めいている。

もっと謎めいているのが奴隷のフライデイだ。というのも、驚くべきことに彼は舌を切り取られている。だから物語を通してずっと沈黙しているし、そもそも積極的にコミュニケーションを取ろうともしていない。生活に必要な簡単な英単語は理解できるので、配下としてどうにかやっていけているものの、彼の内にある記憶の扉は閉ざされたままになっている。

語り手はフライデイに同情し、独善的な好意を示すようになる。そして、彼を身一つでアフリカへ送り出そうとする。当然、そんなことをしたらフライデイは野垂れ死に確実だけど、何も分からない彼は拒否することができない。そもそも、フライデイがアフリカ出身かどうかも定かではないのだから酷すぎる。沈黙する者は周囲から都合の良いように解釈されてしまう。

と、大雑把に言って本作は、そんな言語にまつわる権力関係の話。デフォーが登場する後半からは、カフカっぽい議論の応酬があって読み応えがある。さらに、「語り」に対する不信感や、登場人物の存在の揺れなど、ある種の方面にも目配せが利いているのだから心憎い。本作はわずか200ページの小説とは思えないほどの濃い内容だった。

>>Author - J・M・クッツェー

2005.6.7 (Tue)

パトリシア・ハイスミス『回転する世界の静止点』(2002)

回転する世界の静止点(108x160)

★★★★
Posthumous Short Stories Volume 1: Early Years, 1938-1949 / Patricia Highsmith
宮脇孝雄 訳 / 河出書房新社 / 2005.1
ISBN 4-309-20425-2 【Amazon

1938年から49年までの未収録・未発表作品を集めた初期短編集。「素晴らしい朝」、「不確かな宝物」、「魔法の窓」、「ミス・ジャストと緑の体操服を着た少女たち」、「ドアの鍵が開いていて、いつもあなたを歓迎してくれる場所」、「広場にて」、「虚ろな神殿」、「カードの館」、「自動車」、「回転する世界の静止点」、「スタイナク家のピアノ」、「とってもいい人」、「静かな夜」、「ルイーザを呼ぶベル」の14編。

贋作に異境にコミュニケーション・ギャップと、まさにハイスミスの特徴が詰まった短編集(「二重生活」がなかったけど)。人間心理を冷めた視線で眺めるところは相変わらずで、とても未収録・未発表のものとは思えないほど質が高くて驚いた。

全体的な傾向としては、人間関係の不安にまつわる話が多いかな。流れ者は現地の共同体に溶け込めないし、再会する姉妹は著しい見解の相違を抱いている。まあ、詳しくは各短編のコメントを参照してもらうということで。

以下、各短編について。

「素晴らしい朝」

未発表作品。ニューヨークから流れてきた元タクシー運転手の男が、心の安らぎを求めて田舎に住み着こうとする。現地の少女と親しく付き合い、楽しい日々を送るが……。

これはまた著者らしい小説だった。初期ドストエフスキーみたいな人間と社会の関係性の問題を描いている。といっても、空気の読めない男が右往左往するわけではなく、本作の場合は共同体の内部と外部の齟齬。流れ者である男の不安心理を鋭く突いている。美しい光景からの暗転が強烈だった。★★★★。

「不確かな宝物」

「片足の不自由な男」が、道に置いてあった鞄を盗む。そして、すぐさま持ち主である「ポロ・コートの男」に奪われる。鞄を取り返すべく、「片足の不自由な男」は彼を追いかける。

鞄という「お宝」を利用した2人の奇妙な追いかけっこで、筋運びがやたらサスペンフル。緊張度の高い雰囲気のままオチになだれ込んでいく。ところで、随分と変なオチだと思って後ろにある作品情報を見たら、思いっきり納得してしまった。掲載紙がそれ系だったのである。★★★。

「魔法の窓」

未発表作品。「魔法の窓」とは酒場の入り口にある両開きの扉。孤独な男はそこで自分の人生を変えてくれる者が現れるのを期待している。

どうもこの手の小説を読むと、初期のドストエフスキーを思い出してしまう。謎めいた女を前に男の想いが空回りするところに既視感をおぼえるのだ。★★★。

「ミス・ジャストと緑の体操服を着た少女たち」

強面の女性体育教師が受け持ちの生徒たちに圧力をかける。

教え子には権力をかさに威張り散らしているくせに、上司には犬のように服従して作り笑いを張り付かせている。学校体育とは軍隊教育の延長上にあるのだな、と再認識させられる。権力関係のグロさと滑稽さを表現。★★★。

「ドアの鍵が開いていて、いつもあなたを歓迎してくれる場所」

ニューヨークに住む妹のもとに、クリーヴランドから姉が会いに来る。

おもてなししたい! と妹は意気込むものの、都会は姉にとっては居心地の良い場所ではない。道を尋ねた警官は無愛想だったし、部屋は汚くて狭いし、騒音がうるさくて夜眠れない……。妹は住めば都という感じで環境に適応しており、ダメ出しする姉に対して都会の美点を主張したりする。2人の間に横たわる文化の違いを、妹が必死で埋めようとするところがとても健気だ。決して埋まることはないと分かっているから、余計にそう思える。★★★★。

「広場にて」

未発表作品。舞台はメキシコ。持ち前の美貌と機知で観光客の心を掴んできた少年が、伯爵夫人に見込まれて立身出世のための様々なテクニックを叩き込まれる。少年にはある大望があった。

女を利用してのし上がろうとする主人公って、まるでジュリアン・ソレルみたいで面白い。これってハイスミス版『赤と黒』【Amazon】なのか。貧しい人間が這い上がるには金持ちを利用するしかないのだけど、まあ野望を実行していく過程で色々ある、と。★★★★。

「虚ろな神殿」

未発表作品。聖職者の男がハンマー片手に、うっかり孕ませてしまった女を殺しにいく。女は現実を認識できないキチガイで、自分の妊娠は神によるものだと思い込んでいた……。

自分が助かるためなら他人の犠牲も厭わない、男の利己的な心理が恐ろしい。そういえば、この著者の小説にはよく「罪悪感」の問題が出てくる。我々が通常守っているモラルとは別の軸の、動物的な軸を視野に入れていたりするのだ。★★★。

「カードの館」

絵画の贋作を収集するお金持ちが、友人のオークションに参加する。

リプリー・シリーズでお馴染みの「贋作」テーマの短編で、お金持ちが贋作を収集する理屈が面白い。また、「カードの館」という比喩は上手くて、そこから意外なオチに着地したのに驚いた。この著者の小説は、ぎりぎりまで好転するか暗転するか分からないから怖い。それにしても、終盤で明かされるお金持ちの秘密は、まるで江戸川乱歩の小説みたいな異様さだ……。★★★★。

「自動車」

未発表作品。舞台はメキシコ。現地人を夫に持つアメリカ人の女性が、この場所から抜け出したいと切に思う。

乾季のときは水道から水が出ないわ、使用人はさぼり癖があるわ、夫の友人は車を汚すわで、妻はストレスを感じまくる。この著者の異境ものは、「場」に対する不信や恐怖がとても生々しい。長編だと、『変身の恐怖』【Amazon】とか。★★★。

「回転する世界の静止点」

ミセスが子供を連れて公園に行く。子供絡みで色々あった後、逢い引きの現場に出くわす。彼女は彼らを観察する。一方の彼らは、「回転する世界の静止点」を堪能している……。

まず「回転する世界の静止点」という表現がロマンチックで良いし、さらにその言葉を再定義する場面も気が利いていて良い。で、そんな2人を外部の視点で相対化するミセスの存在も良い。★★★★。

「スタイナク家のピアノ」

未発表作品。ピアノ教師をしている姉が教え子を連れて実家にやってくる。病弱で夢見がちな妹は、その教え子に惚れる。

妹の姉に対する嫌悪の念が凄い。姉の行動がいちいちネガティブな形容でもって表現される。『アイヴァンホー』とピアノの見事な供宴。物語は段々と不穏な空気になっていく。★★★。

「とってもいい人」

9歳の少女が男に、2人っきりでドライブしようと誘われる。

明らかにペド野郎の下心見え見えの誘いなのだけれども、少女はそれに乗ってしまう。子供の世界が「駄菓子」、男の世界が「ハイテクな計器類」、といった風にアイテムで表象される。ラストの情景描写がもの凄い余韻。★★★。

「静かな夜」

ホテル暮らししている2人の老嬢。いたずら好きの老嬢が、相方のセーターにハサミを入れる。それを見た相方は涙に暮れる。

「愛の叫び」(『11の物語』【Amazon】所収)の前身にあたる短編。結末の方向性がまったく違っていて興味深い。★★★。

「ルイーザを呼ぶベル」

未発表作品。大家の娘が猩紅熱にかかり、さらに大家にも伝染しそうになっていた。下宿人のオールドミスが会社を休んで看病する。

献身的に尽くすときの心理が狂気を孕んでいて怖いけれど、そこからまたインパクトのある展開へ。人物と物体との関連を利用した伏線。やっぱりこの著者の小説は、ぎりぎりまで好転するか暗転するか分からないから怖い。★★★。