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2006.7.1 (Sat)
▽マルセル・プルースト『失われた時を求めて 1 第一篇 スワン家の方へ I』(1913)
★★★★
A la Recherche du Temps Perdu / Marcel Proust
鈴木道彦 訳 / 集英社文庫 / 2006.3
ISBN 4-08-761020-9 【Amazon】
フランスのセレブ世界を舞台にした小説。プチット・マドレーヌを口にした語り手が、コンブレーで過ごした少年時代を思い出す。スワン氏との交流や、ゲルマント公爵夫人への憧れ、そして、とある女性たちの同性愛の影。
全13巻ある文庫版の1巻目。この巻には、全編のあらすじと主要一族の家系図、さらに登場人物100人を紹介した付録がついている。まえがきや注釈も詳細で、久々に値段分の価値のある本を手にしたのだった。本書みたいなサービス精神には好感が持てる。
この巻は一杯の紅茶から飛び出してきたコンブレーの風景を展望しつつ、語り手の周囲の人間関係を把握するような感じ。まだ序盤なのでそれほど言うこともないのだけど、意外とキャラクターが立っているのが良かった。スノップなルグランタンとか女中のフランソワーズとか、漫画的な挙動を見せていて分かりやすい。特にルグランタンが、面目を保つべく他人の追及をかわす様子は必見(すごいアクロバティック!)。あと、フランソワーズはキャラ自体が面白くて、職業的な忠実さと下層階級的な偏見を併せ持つところは、アガサ・クリスティの小説を思わせる。憎めない性格をした頑固女中の見本みたいだった。
語り手の散歩コースである「スワン家の方」と「ゲルマントの方」は、ブルジョワと貴族、あるいはユダヤとカトリックという対照をなした方角とのこと。あらすじを読む限りでは本作は構築的な小説のようなので、これらがどう関わっていくのか楽しみになる。残り12冊は量的にしんどいけれど、めげずに全て読んでいきたい。
>>『失われた時を求めて 2』に続く。
2006.7.3 (Mon)
▽スティーヴン・ジェイ・シュナイダー編『死ぬまでに観たい映画1001本』(2003)
★★★★
1001 Movies You Must See Before You Die / Steven Jay Schnider
笹森三和子 訳 / ネコ・パブリッシング / 2004.12
ISBN 4-7770-5066-1 【Amazon】
ハリウッド、日本、ヨーロッパ、イラン、南米など、押さえておくべき世界の名画を紹介した本。紙面はオールカラーで、各映画には評論家がレビューを寄せている。『月世界旅行』のDVD付き。
鋭い作品分析が散見できてなかなか参考になった。『キートンの探偵学入門』の項でキートンの仕掛けを読み取ったり、『裏窓』の項で性心理に基づく構造を指摘したり、ただの紹介文で終わらない質の高さがある。くわえて、本書はアメリカの消費者向けであるせいか、日本に輸入されていない映画が少なからず紹介されており、そこそこの映画マニアにとっても目新しさがあると思われる。
以下、観たことがある映画のリスト(281本)。お勧めには☆をつけた。
- 『月世界旅行』(1902)
- 『大列車強盗』(1903)【Amazon】
- 『イントレランス』(1916)【Amazon】 ☆
- 『カリガリ博士』(1919)【Amazon】
- 『バグダッドの盗賊』(1924)【Amazon】
- 『キートンのセブン・チャンス』(1925)【Amazon】
- 『オペラ座の怪人』(1925)【Amazon】
- 『戦艦ポチョムキン』(1925)【Amazon】
- 『チャップリンの黄金狂時代』(1925)【Amazon】
- 『メトロポリス』(1927)【Amazon】
- 『恐喝(ゆすり)』(1929)【Amazon】
- 『嘆きの天使』(1930)【Amazon】 ☆
- 『犯罪王リコ』(1930)【Amazon】 ☆
- 『西部戦線異状なし』(1930)【Amazon】
- 『フランケンシュタイン』(1931)【Amazon】
- 『街の灯』(1931)【Amazon】
- 『M』(1931)【Amazon】
- 『暗黒街の顔役』(1932)【Amazon】
- 『上海特急』(1932)【Amazon】
- 『キング・コング』(1933)【Amazon】
- 『或る夜の出来事』(1934)【Amazon】 ☆
- 『戦艦バウンティ号の叛乱』(1935)【Amazon】
- 『三十九夜』(1935)【Amazon】 ☆
- 『モダン・タイムス』(1936)【Amazon】
- 『サボタージュ』(1936)【Amazon】
- 『大いなる幻影』(1937)【Amazon】
- 『赤ちゃん教育』(1938)【Amazon】
- 『駅馬車』(1939)【Amazon】 ☆
- 『スミス都へ行く』(1939)【Amazon】
- 『オズの魔法使い』(1939)【Amazon】 ☆
- 『風と共に去りぬ』(1939)【Amazon】 ☆
- 『ゲームの規則』(1939)【Amazon】
- 『嵐が丘』(1939)【Amazon】
- 『レベッカ』(1940)【Amazon】 ☆
- 『怒りの葡萄』(1940)【Amazon】
- 『市民ケーン』(1941)【Amazon】 ☆
- 『マルタの鷹』(1941)【Amazon】 ☆
- 『カサブランカ』(1942)【Amazon】
- 『疑惑の影』(1943)【Amazon】
- 『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(1943)【Amazon】
- 『イワン雷帝』(1944)【Amazon】
- 『深夜の告白』(1944)【Amazon】 ☆
- 『白い恐怖』(1945)【Amazon】
- 『天井桟敷の人々』(1945)【Amazon】
- 『荒野の決闘』(1946)【Amazon】 ☆
- 『美女と野獣』(1946)【Amazon】
- 『三つ数えろ』(1946)【Amazon】
- 『大いなる遺産』(1946)【Amazon】
- 『素晴らしき哉、人生!』(1946)【Amazon】
- 『チャップリンの殺人狂時代』(1947)【Amazon】
- 『自転車泥棒』(1948)【Amazon】
- 『赤い河』(1948)【Amazon】
- 『ロープ』(1948)【Amazon】
- 『第三の男』(1949)【Amazon】 ☆
- 『羅生門』(1950)【Amazon】
- 『サンセット大通り』(1950)【Amazon】 ☆
- 『欲望という名の電車』(1951)【Amazon】
- 『見知らぬ乗客』(1951)【Amazon】 ☆
- 『巴里のアメリカ人』(1951)【Amazon】
- 『禁じられた遊び』(1952)【Amazon】
- 『雨に唄えば』(1952)【Amazon】 ☆
- 『生きる』(1952)【Amazon】
- 『真昼の決闘』(1952)【Amazon】 ☆
- 『東京物語』(1953)【Amazon】
- 『ローマの休日』(1953)【Amazon】 ☆
- 『紳士は金髪がお好き』(1953)【Amazon】
- 『雨月物語』(1953)【Amazon】
- 『波止場』(1954)【Amazon】
- 『裏窓』(1954)【Amazon】
- 『道』(1954)【Amazon】
- 『七人の侍』(1954)【Amazon】 ☆
- 『山椒大夫』(1954)【Amazon】
- 『理由なき反抗』(1955)【Amazon】
- 『狩人の夜』(1955)【Amazon】
- 『ビルマの竪琴』(1956)【Amazon】
- 『捜索者』(1956)【Amazon】 ☆
- 『知りすぎていた男』(1956)【Amazon】
- 『間違えられた男』(1956)【Amazon】
- 『十二人の怒れる男』(1957)【Amazon】 ☆
- 『カビリアの夜』(1957)【Amazon】
- 『戦場にかける橋』(1957)【Amazon】
- 『突撃』(1957)【Amazon】
- 『黒い罠』(1958)【Amazon】
- 『めまい』(1958)【Amazon】 ☆
- 『灰とダイヤモンド』(1958)【Amazon】
- 『北北西に進路を取れ』(1959)【Amazon】 ☆
- 『お熱いのがお好き』(1959)【Amazon】
- 『勝手にしやがれ』(1959)【Amazon】
- 『ベン・ハー』(1959)【Amazon】 ☆
- 『リオ・ブラボー』(1959)【Amazon】
- 『穴』(1959)【Amazon】
- 『サイコ』(1960)【Amazon】
- 『アパートの鍵貸します』(1960)【Amazon】
- 『スパルタカス』(1960)【Amazon】
- 『ティファニーで朝食を』(1961)【Amazon】
- 『ハスラー』(1961)【Amazon】 ☆
- 『ウエスト・サイド物語』(1961)【Amazon】 ☆
- 『アラビアのロレンス』(1962)【Amazon】 ☆
- 『アラバマ物語』(1962)【Amazon】 ☆
- 『ロリータ』(1962)【Amazon】
- 『鳥』(1963)【Amazon】 ☆
- 『8 1/2』(1963)【Amazon】
- 『大脱走』(1963)【Amazon】 ☆
- 『マーニー』(1964)【Amazon】
- 『マイ・フェア・レディ』(1964)【Amazon】
- 『博士の異常な愛情』(1964)【Amazon】
- 『ドクトル・ジバゴ』(1965)【Amazon】 ☆
- 『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)【Amazon】 ☆
- 『気狂いピエロ』(1965)【Amazon】
- 『続・夕陽のガンマン』(1966)【Amazon】 ☆
- 『夜の大捜査線』(1967)【Amazon】
- 『俺たちに明日はない』(1967)【Amazon】
- 『猿の惑星』(1968)【Amazon】
- 『ローズマリーの赤ちゃん』(1968)【Amazon】
- 『2001年宇宙の旅』(1968)【Amazon】 ☆
- 『明日に向って撃て!』(1969)【Amazon】 ☆
- 『真夜中のカーボーイ』(1969)【Amazon】
- 『ワイルドバンチ』(1969)【Amazon】 ☆
- 『パットン大戦車軍団』(1970)【Amazon】 ☆
- 『M★A★S★H マッシュ』(1970)【Amazon】 ☆
- 『時計じかけのオレンジ』(1971)【Amazon】 ☆
- 『フレンチ・コネクション』(1971)【Amazon】 ☆
- 『ダーティハリー』(1971)【Amazon】 ☆
- 『わらの犬』(1971)【Amazon】 ☆
- 『荒野のストレンジャー』(1972)【Amazon】 ☆
- 『脱出』(1972)【Amazon】
- 『惑星ソラリス』(1972)【Amazon】
- 『ゴッドファーザー』(1972)【Amazon】 ☆
- 『フレンジー』(1972)【Amazon】
- 『スティング』(1973)【Amazon】 ☆
- 『燃えよドラゴン』(1973)【Amazon】 ☆
- 『ミーン・ストリート』(1973)【Amazon】
- 『ロング・グッドバイ』(1973)【Amazon】
- 『セルピコ』(1973)【Amazon】 ☆
- 『エクソシスト』(1973)【Amazon】
- 『ミツバチのささやき』(1973)【Amazon】 ☆
- 『チャイナタウン』(1974)【Amazon】
- 『ゴッドファーザーPARTII』(1974)【Amazon】 ☆
- 『ガルシアの首』(1974)【Amazon】 ☆
- 『狼たちの午後』(1975)【Amazon】 ☆
- 『カッコーの巣の上で』(1975)【Amazon】
- 『ロッキー・ホラー・ショー』(1975)【Amazon】
- 『バリー・リンドン』(1975)【Amazon】 ☆
- 『JAWS/ジョーズ』(1975)【Amazon】
- 『ロッキー』(1976)【Amazon】 ☆
- 『タクシードライバー』(1976)【Amazon】 ☆
- 『スター・ウォーズ』(1977)【Amazon】
- 『未知との遭遇』(1977)【Amazon】
- 『アニー・ホール』(1977)【Amazon】
- 『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)【Amazon】
- 『ディア・ハンター』(1978)【Amazon】
- 『ゾンビ』(1978)【Amazon】
- 『ストーカー』(1979)【Amazon】
- 『エイリアン』(1979)【Amazon】
- 『クレイマー、クレイマー』(1979)【Amazon】 ☆
- 『地獄の黙示録』(1979)【Amazon】 ☆
- 『シャイニング』(1980)【Amazon】
- 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980)【Amazon】
- 『エレファント・マン』(1980)【Amazon】
- 『レイジング・ブル』(1980)【Amazon】 ☆
- 『レイダース/失われた聖櫃』(1981)【Amazon】
- 『U・ボート』(1981)【Amazon】 ☆
- 『炎のランナー』(1981)【Amazon】
- 『レッズ』(1981)【Amazon】
- 『E.T.』(1982)【Amazon】
- 『ブレードランナー』(1982)【Amazon】
- 『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』(1983)【Amazon】
- 『キング・オブ・コメディ』(1983)【Amazon】
- 『スカーフェイス』(1983)【Amazon】
- 『アマデウス』(1984)【Amazon】 ☆
- 『ターミネーター』(1984)【Amazon】
- 『パリ、テキサス』(1984)【Amazon】
- 『エルム街の悪夢』(1984)【Amazon】
- 『ビバリーヒルズ・コップ』(1984)【Amazon】
- 『ゴーストバスターズ』(1984)【Amazon】
- 『ナチュラル』(1984)【Amazon】
- 『乱』(1985)【Amazon】
- 『愛と哀しみの果て』(1985)【Amazon】
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)【Amazon】
- 『未来世紀ブラジル』(1985)【Amazon】 ☆
- 『蜘蛛女のキス』(1985)【Amazon】
- 『カラーパープル』(1985)【Amazon】
- 『スタンド・バイ・ミー』(1986)【Amazon】
- 『ブルーベルベット』(1986)【Amazon】 ☆
- 『ザ・フライ』(1986)【Amazon】
- 『エイリアン2』(1986)【Amazon】 ☆
- 『プラトーン』(1986)【Amazon】
- 『タンポポ』(1986)【Amazon】
- 『トップガン』(1986)【Amazon】
- 『ベルリン・天使の詩』(1987)【Amazon】 ☆
- 『プロジェクトA2/史上最大の標的』(1987)【Amazon】 ☆
- 『バベットの晩餐会』(1987)【Amazon】
- 『赤ちゃん泥棒』(1987)【Amazon】 ☆
- 『フルメタル・ジャケット』(1987)【Amazon】 ☆
- 『グッドモーニング、ベトナム』(1987)【Amazon】
- 『ブロードキャスト・ニュース』(1987)【Amazon】
- 『月の輝く夜に』(1987)【Amazon】
- 『アンタッチャブル』(1987)【Amazon】 ☆
- 『危険な情事』(1987)【Amazon】
- 『さよならゲーム』(1988)【Amazon】
- 『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988)【Amazon】
- 『裸の銃を持つ男』(1988)【Amazon】
- 『ビッグ』(1988)【Amazon】 ☆
- 『危険な関係』(1988)【Amazon】
- 『火垂るの墓』(1988)【Amazon】
- 『ダイ・ハード』(1988)【Amazon】
- 『レインマン』(1988)【Amazon】
- 『バットマン』(1989)【Amazon】
- 『恋人たちの予感』(1989)【Amazon】
- 『ウディ・アレンの重罪と軽罪』(1989)【Amazon】
- 『ドラッグストア・カウボーイ』(1989)【Amazon】
- 『グローリー』(1989)【Amazon】
- 『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)【Amazon】
- 『グッドフェローズ』(1990)【Amazon】
- 『プリティ・ウーマン』(1990)【Amazon】
- 『シザーハンズ』(1990)【Amazon】
- 『トータル・リコール』(1990)【Amazon】
- 『ターミネーター2』(1991)【Amazon】
- 『羊たちの沈黙』(1991)【Amazon】
- 『JFK』(1991)【Amazon】
- 『ザ・プレイヤー』(1992)【Amazon】 ☆
- 『レザボア・ドッグス』(1992)【Amazon】 ☆
- 『許されざる者』(1992)【Amazon】
- 『ジュラシック・パーク』(1993)【Amazon】
- 『シンドラーのリスト』(1993)【Amazon】 ☆
- 『フォレスト・ガンプ』(1994)【Amazon】
- 『ライオン・キング』(1994)【Amazon】
- 『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)【Amazon】
- 『パルプ・フィクション』(1994)【Amazon】 ☆
- 『ショーシャンクの空に』(1994)【Amazon】 ☆
- 『恋する惑星』(1994)【Amazon】
- 『カジノ』(1995)【Amazon】
- 『ベイブ』(1995)【Amazon】 ☆
- 『ヒート』(1995)【Amazon】
- 『セブン』(1995)【Amazon】
- 『アンダーグラウンド』(1995)【Amazon】 ☆
- 『ユージュアル・サスペクツ』(1995)【Amazon】
- 『ファーゴ』(1996)【Amazon】 ☆
- 『インデペンデンス・デイ』(1996)【Amazon】
- 『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)【Amazon】
- 『真実の囁き』(1996)【Amazon】 ☆
- 『トレインスポッティング』(1996)【Amazon】 ☆
- 『L.A.コンフィデンシャル』(1997)【Amazon】 ☆
- 『もののけ姫』(1997)【Amazon】
- 『アイス・ストーム』(1997)【Amazon】 ☆
- 『タイタニック』(1997)【Amazon】
- 『プライベート・ライアン』(1998)【Amazon】
- 『バッファロー66』(1998)【Amazon】
- 『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(1998)【Amazon】 ☆
- 『天才マックスの世界』(1998)【Amazon】
- 『シン・レッド・ライン』(1998)【Amazon】 ☆
- 『リング』(1998)【Amazon】
- 『メリーに首ったけ』(1998)【Amazon】 ☆
- 『マグノリア』(1999)【Amazon】
- 『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)【Amazon】
- 『御法度』(1999)【Amazon】
- 『スリー・キングス』(1999)【Amazon】
- 『ファイト・クラブ』(1999)【Amazon】 ☆
- 『マルコヴィッチの穴』(1999)【Amazon】
- 『アメリカン・ビューティー』(1999)【Amazon】 ☆
- 『アタック・ザ・ガスステーション』(1999)【Amazon】
- 『アイズ・ワイド・シャット』(1999)【Amazon】 ☆
- 『シックス・センス』(1999)【Amazon】
- 『マトリックス』(1999)【Amazon】
- 『花様年華』(2000)【Amazon】
- 『グラディエーター』(2000)【Amazon】
- 『グリーン・デスティニー』(2000)【Amazon】
- 『トラフィック』(2000)【Amazon】 ☆
- 『メメント』(2000)【Amazon】
- 『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)【Amazon】
- 『アメリ』(2001)【Amazon】 ☆
- 『千と千尋の神隠し』(2001)【Amazon】
- 『ノー・マンズ・ランド』(2001)【Amazon】
- 『ムーラン・ルージュ』(2001)【Amazon】
- 『マルホランド・ドライブ』(2001)【Amazon】 ☆
- 『ロード・オブ・ザ・リング』(2001)【Amazon】
- 『A.I.』(2001)【Amazon】
- 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)【Amazon】
- 『戦場のピアニスト』(2002)【Amazon】
- 『シカゴ』(2002)【Amazon】
- 『キル・ビル Vol.1』(2003)【Amazon】
2006.7.5 (Wed)
▲チャンネ・リー『空高く』(2004)
★★★
Aloft / Chang-rae Lee
高橋茅香子 訳 / 新潮クレスト・ブックス / 2006.5
ISBN 4-10-590054-4 【Amazon】
事業を息子に託して隠遁生活を送る還暦間近の男。その彼の家庭が危機的状況に陥る。娘が妊娠したうえ癌に冒されたり、息子の会社が倒産寸前になったり。
饒舌な語り口と豊富なエピソードが絡み合った、えらく厚みのある小説だった。一文が長いうえに観察が細かいので、ページ数(437ページ)から想像する以上に読み応えがある。読了するのにけっこう時間がかかってしまった。
この小説はとにかく語り手の存在感が凄まじい。彼の委曲を尽くした思索の数々は、フィクションの人格であることを忘れさせるようなリアリティに溢れている。心理とか来歴とか小道具とかエピソードとか、よくこれだけディテールを固めたという感じ。語り手を中心とした家族の肖像には、材料を惜しみなく投入した箱庭的世界ができあがっている。こういうハンドメイドな手触りは、お値段割高なクレスト・ブックスらしいと言えるかもしれない。
しかし、本作はそれだけなのである。ディテールが異様に充実しているだけ。家庭の崩壊とささやかな再生を描いた筋書きはあまり褒められたものではなく、たとえば恋人と寄りを戻すところなんかアメリカ的な強引さが鼻につく。また、身内の災難に絡んだエピソードは、自己中の富裕な老人が権力を傘に着た振る舞いをしていて、何か演出された家族愛みたいなものを感じる。全体的にこの小説は家族以外の他人を見下していて、それがドラマに豊穣さをもたらすというよりは、自己愛の倒錯を垣間見ているような気分にさせるのだった。
2006.7.6 (Thu)
▼エマニュエル・カレール『口ひげを剃る男』(1986)
★★
La moustache / Emmanuel Carrere
田中千春 訳 / 河出書房新社 / 2006.6
ISBN 4-309-20460-0 【Amazon】
トレードマークの口ひげを剃り落とした男だったが、妻をはじめとして誰もそのことに気づかない。問いただしてみても、口ひげなんて元々なかったという。
自分と他者の間に埋めがたい認識の差ができる不条理小説。妻が周囲を巻き込んで騙しているのか? それとも、妻はただの精神異常なのか? あるいは、狂っているのは自分なのか? 口ひげの有無を巡って語り手は葛藤し、周囲とのコミニュケーションも上手くいかなくなる。そして、認識の差は口ひげ以外にも広がり、ついに語り手は異境である香港へ逃避する……。
本作は80年代らしい実験小説崩れといったところ。お世辞にも習作の域を越えているとは思えなかった。試行錯誤の前半は導入部として興味をそそるものの、後半は不条理な状況を異境で相対化する手口が見え透いていて困惑。さらに訳者が主張する「文体の冴え」も、ラストの現実とも幻想ともつかない描写を除けば、該当するような個所はひとつも見当たらなかった。
2006.7.8 (Sat)
▽アリス・マンロー『イラクサ』(2001)
★★★★
Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage / Alice Munro
小竹由美子 訳 / 新潮クレスト・ブックス / 2006.3
ISBN 4-10-590053-6 【Amazon】
短編集。「恋占い」、「浮橋」、「家に伝わる家具」、「なぐさめ」、「イラクサ」、「ポスト・アンド・ビーム」、「記憶に残っていること」、「クィーニー」、「クマが山を越えてきた」の9編。
著者の自伝的要素が散りばめられた短編集。どれも文芸品らしい密度の高い内容で、人生の局面であり得る心理の機微に焦点を合わせている。「クマが山を越えてきた」以外はすべて女性が主人公なので、揺れる女心を知るという意味で興味深いかもしれない。
作風はさほど余韻を残すようなタイプではないのだけど、作りがしっかりしていてけっこう疲れる。私は1日に1〜2編しか読めなかった。
以下、各短編について。
「恋占い」"Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage"
使用人の女性が、雇い主の家具を勝手に持ち出して、愛する男(雇い主の義理の息子)のもとに運び込む。
男に成り済まして使用人と手紙のやりとりをする、少女の残酷さが強烈。でもって、それをやったがゆえの皮肉的な結果も強烈だった。この小説は何気ない場面に鋭い観察眼が発揮されていて面白い。田舎で高級服飾を売っている女の虚しさとか、そこで身分不相応のなりをする使用人の様子だとか。★★★★。
「浮橋」"Floating Bridge"
夫婦が用事を済ますべく車で移動。妻はガンで闘病中の身。
妻の不安定な心情が今立っている浮橋に仮託されている、ということか。で、そんな妻に対して夫は乾いた地面の上にいる、と。★★★。
「家に伝わる家具」"Family Furnishings"
父のいとこアルフリーダと、後に作家になった語り手の物語。
これは言葉にするのが難しいな。かつて都会で活躍していたアルフリーダの境遇とか、時の移ろいによる認識の変化とか、虚しさをおぼえつつ読後感は良い。この著者は、女が女へ向ける眼差しを書くのが上手すぎる。★★★。
「なぐさめ」"Comfort"
先日他界した夫は、元教師にして科学を信奉するアンチ・クリスチャンだった。
キリスト教がやばすぎる。夫が理性に基づいた授業(創造説の否定)をしていたら、何とファナティックな父兄たちが大反発! 授業のボイコットをさせるわ、夫のことをサタン呼ばわりするわ、およそ文明人とは思えない暴挙に出ている。しかも夫の他界後は、自宅前の歩道に「神のご意志」ときた……。★★★。
「イラクサ」"Nettles"
子どもの頃ステディな関係になった彼と、久方ぶりの再会を果たす。
例によって、ヒロインの心理の微妙なところを引き出している。けどこれ、ご老体作家の回春話みたいだね(激しい性欲!)。★★★。
「ポスト・アンド・ビーム」"Post and Beam"
実家を捨てて結婚生活を送っている女。その彼女のもとに従姉妹がやってくる。
生活者の普遍的な精神を活写していて素晴らしい。従姉妹は実家から逃れることができず、おそらくは女のことを羨ましく思っている。でも、女はそんな従姉妹に怒りをおぼえ、冷酷な心境を露わにする。これがマザーテレサだったら道義心を発揮して手を差し伸べそうだけど、本作のヒロインは勘弁してくれとばかりに従姉妹を否定する。従姉妹が夫妻に対し、空気の読めない態度をとるのもリアルだ。★★★★★。
「記憶に残っていること」"What is Remebered"
人妻のロマンスに揺れる心。
たぶん本作で示された人妻の心情は、女性からすればもの凄く共感できるのだろう。しかし、個人的には興味のない題材で、「勝手にしやがれ!」と思った。★★★。
「クィーニー」"Queenie"
父の再婚相手の連れ子クィーニー。語り手と彼女の関係を描く。
色々あったクィーニーが、過去の通り過ぎた存在になる。★★★。
「クマが山を越えてきた」"The Bear Came Over the Mountain"
記憶障害(認知症?)に陥った妻を夫が施設に預ける。たびたび面会に訪れるも、妻は自分のことを覚えていない。それどころか、施設で知り合った患者と良い関係になっている。
本書のなかで唯一、男性が主人公。プレイボーイの夫が、妻に対して心中穏やかじゃないのが面白い。
あとはまあ、老人介護問題に通じるような身内のエゴが印象的だったかな(家を売らないで引き取る)。同じ状況になったら、大抵の人は同じ選択をするんじゃないかという感じ。★★★★。