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2007.2.21 (Wed)
▽法月綸太郎『法月綸太郎ミステリー塾 海外編 複雑な殺人芸術』(2007)

★★★★
講談社 / 2007.1
ISBN 978-406213774 【Amazon】
評論集。エラリー・クイーンを論じた「初期クイーン論」、ロス・マクドナルドを論じた「複雑な殺人芸術」を柱に、海外ミステリの文庫解説などを収録している。
『名探偵は何故時代から逃れられないのか』の項も参照。本書に収められた一連のクイーン論(*1)は、理論の多くを柄谷行人から借りていて、著者のカラタニアンとしての本領がいかんなく発揮されている。
ロスマクを論じた「複雑な殺人芸術」が出色。この評論では主に『ウィチャリー家の女』【Amazon】を取り上げ、綱渡り的な書法を用いたフェアネスぶりを明らかにしている(*2)。これは評論家として当たり前の姿勢なのだろうけど、きちんと原文に当たって翻訳の勇み足を批判しているのが良い。
以下、ミステリー通になるための100冊(海外編)
- エドガー・アラン・ポー『モルグ街の殺人事件』【Amazon】
- ウィルキー・コリンズ『白衣の女』【Amazon】
- コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』【Amazon】
- ロバート・L・フィッシュ『シュロック・ホームズの冒険』【Amazon】
- G・K・チェスタトン『ブラウン神父の童心』【Amazon】
- M・D・ポースト『アブナー伯父の事件簿』【Amazon】
- H・C・ベイリー『フォーチュン氏の事件簿』【Amazon】
- 小鷹信光編『O・ヘンリー・ミステリー傑作選』【Amazon】
- 江戸川乱歩編『世界短編傑作集3』【Amazon】
- エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』【Amazon】
- E・C・ベントリー『トレント最後の事件』【Amazon】
- A・E・W・メースン『矢の家』【Amazon】
- ロナルド・A・ノックス『陸橋殺人事件』【Amazon】
- イーデン・フィルポッツ『闇からの声』【Amazon】
- ドロシー・L・セイヤーズ『不自然な死』【Amazon】
- ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』【Amazon】
- アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』【Amazon】
- フランシス・アイルズ『殺意』【Amazon】
- エラリー・クイーン『ギリシア棺の謎』【Amazon】
- アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』【Amazon】
- ディクスン・カー『緑のカプセルの謎』【Amazon】
- ニコラス・ブレイク『野獣死すべし』【Amazon】
- エドマンド・クリスピン『お楽しみの埋葬』【Amazon】
- クリスチアナ・ブランド『ジェゼベルの死』【Amazon】
- D・M・ディヴァイン『兄の殺人者』【Amazon】
- ジョイス・ポーター『切断』【Amazon】
- アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会1』【Amazon】
- ルース・レンデル『指に傷のある女』【Amazon】
- ウィリアム・L・デアンドリア『ホッグ連続殺人』【Amazon】
- ピーター・ラヴゼイ『偽のデュー警部』【Amazon】
- P・D・ジェイムズ『皮膚の下の頭蓋骨』【Amazon】
- ダシール・ハメット『マルタの鷹』【Amazon】
- E・S・ガードナー『管理人の飼猫』【Amazon】
- レックス・スタウト『料理長が多すぎる』【Amazon】
- レイモンド・チャンドラー『さらば愛しき女よ』【Amazon】
- クレイグ・ライス『素晴らしき犯罪』【Amazon】
- ウィリアム・アイリッシュ『夜は千の目を持つ』【Amazon】
- パット・マガー『七人のおば』【Amazon】
- ウィリアム・P・マッギヴァーン『最悪のとき』【Amazon】
- パトリック・クェンティン『二人の妻をもつ男』【Amazon】
- ロス・マクドナルド『ウィチャリー家の女』【Amazon】
- マーガレット・ミラー『まるで天使のような』【Amazon】
- モーリス・ルブラン『怪盗紳士リュパン』【Amazon】
- ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』【Amazon】
- ジョルジュ・シムノン『男の首 黄色い犬』【Amazon】
- ピエール・カミ『エッフェル塔の潜水夫』【Amazon】
- ポアロー&ナルスジャック『悪魔のような女』【Amazon】
- セバスチアン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』【Amazon】
- カトリーヌ・アルレー『わらの女』【Amazon】
- ミッシェル・ルブラン『殺人四重奏』【Amazon】
- ピエール・シニアック『ウサギ料理は殺しの味』【Amazon】
- ブリジット・オベール『マーチ博士の四人の息子』【Amazon】
- ロイ・ヴィカーズ『迷宮課事件簿I』【Amazon】
- ヒラリー・ウォー『失踪当時の服装は』【Amazon】
- エド・マクベイン『殺意の楔』【Amazon】
- M・シューヴァル&P・ヴァールー『ロゼアンナ』【Amazon】
- コリン・デクスター『ウッドストック行最終バス』【Amazon】
- スチュアート・ウッズ『警察署長』【Amazon】
- マイクル・Z・リューイン『刑事の誇り』【Amazon】
- ジェイムズ・エルロイ『ブラック・ダリア』【Amazon】
- マイクル・ディブディン『血と影』【Amazon】
- エリック・アンブラー『あるスパイへの墓碑銘』【Amazon】
- ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』【Amazon】
- ディック・フランシス『血統』【Amazon】
- レン・デイトン『ベルリン・ゲーム』【Amazon】
- ロバート・リテル『最初で最後のスパイ』【Amazon】
- カート・ヴォネガット・ジュニア『母なる夜』【Amazon】
- グレアム・グリーン『ヒューマン・ファクター』【Amazon】
- ブライアン・フリーマントル『消されかけた男』【Amazon】
- マイケル・バー=ゾウハー『パンドラ抹殺文書』【Amazon】
- スタン・リー『ライブラリー・ファイル』【Amazon】
- ドナルド・E・ウェストレイク『殺しあい』【Amazon】
- ジェイムズ・クラムリー『酔いどれの誇り』【Amazon】
- ロバート・B・パーカー『約束の地』【Amazon】
- ステュアート・カミンスキー『ロビン・フッドに鉛の玉を』【Amazon】
- L・A・モース『オールド・ディック』【Amazon】
- ローレンス・ブロック『八百万の死にざま』【Amazon】
- マーク・ショア『俺はレッド・ダイアモンド』【Amazon】
- スタンリイ・エリン『闇に踊れ!』【Amazon】
- ポール・オースター『シティ・オヴ・グラス』【Amazon】
- ディック・ロクティ『眠れる犬』【Amazon】
- ジョセフィン・テイ『時の娘』【Amazon】
- アイラ・レヴィン『死の接吻』【Amazon】
- ビル・S・バリンジャー『消された時間』【Amazon】
- D・A・スタンウッド『エヴァライカーの記憶』【Amazon】
- リチャード・ジェサップ『摩天楼の身代金』【Amazon】
- ヘンリー・デンカー『復讐法廷』【Amazon】
- ウィリアム・ヒョーツバーグ『堕ちる天使』【Amazon】
- リチャード・ホイト『シスキユーの対決』【Amazon】
- マーティン・クルーズ・スミス『ゴーリキー・パーク』【Amazon】
- ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』【Amazon】
- イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』【Amazon】
- スタニスワフ・レム『捜査』【Amazon】
- ジョージ・A・エフィンジャー『重力が衰えるとき』【Amazon】
- フィリップ・カー『偽りの街』【Amazon】
- ロバート・ブロック『サイコ』【Amazon】
- トマス・ハリス『羊たちの沈黙』【Amazon】
- ピーター・ストラウブ『ココ』【Amazon】
- アンドリュー・クラヴァン『秘密の友人』【Amazon】
- R・D・ウィングフィールド『クリスマスのフロスト』【Amazon】
半分くらいしか読んでなかった。
2007.2.23 (Fri)
▲星新一『声の網』(1970)

★★★
角川文庫 / 2006.1
ISBN 978-4041303191 【Amazon】
連作短編集。電話によるネットワークサービスが発達した近未来。メロン・マンションの住人たちに謎の電話が掛かってくる。
今日の高度情報化社会を予見した(とされる)小説。例によってSF的なテクノロジーが、人間の本性を炙り出す装置として冷徹に使われている。この小説の凄いところは、人知れず進行する恐ろしい陰謀が、アクロバティックな論理で神の問題にまで繋がってしまうところだろう。アダムとイヴを追放に導いた人類最大の発明とは何なのか? また、人類にとって神とは何なのか? 著者は情報化社会を器にして、シニカルな人間観を響かせている。とどのつまり、文明とは人間の欲望の反映であるから、技術の進歩によってはこういうグロテスクな状況になってもおかしくない……のかもしれない。
社会というと何となく漠然としたものを想像してしまうけれど、この小説では個人の集まりであることがポイントになっているみたい。その最小単位として、メロン・マンションの住人たちが選ばれているわけだ。彼ら一人一人にスポットを当てていく試みは、著者の特性と上手くマッチしていて、まさに一石二鳥なんだなと思う。
2007.2.26 (Mon)
▽山田正紀 恩田陸『読書会』(2007)

★★★★
徳間書店 / 2007.1
ISBN 978-4198622794 【Amazon】
山田正紀と恩田陸による読書会。お題になったSF小説について、ゲストを交えながら語り合う。
本書で取り上げられた本。半村良『石の血脈』【Amazon】『岬一郎の抵抗』【Amazon】、I・アシモフ『鋼鉄都市』【Amazon】『はだかの太陽』【Amazon】、U・K・ル=グィン『ゲド戦記』【Amazon】、沼正三『家畜人ヤプー』【Amazon】、小松左京『果しなき流れの果に』【Amazon】、山田正紀『神狩り』【Amazon】、S・キング『呪われた町』【Amazon】『ファイアスターター』【Amazon】、萩尾望都『バルバラ異界』【Amazon】、恩田陸『常野物語』【Amazon】。
読書会というと、「共感すること」に重きを置いた感想垂れ流し会をイメージしてしまうけれど、本書は作品の構造やテーマの解釈にまで踏み込んだ、わりと濃いめの内容だった。読解自体はありふれたものに過ぎないとしても、2人の場合は作家としての見解を織り込むことができるので、並の対談本よりアドバンテージがあると言える。評論家にありがちないやらしい政治性は皆無だし、何より本好きによる和気藹々とした雰囲気が好ましい。恩田陸はともかく、山田正紀の著作はもう少し読んでみようと思った(『神狩り』と『ミステリ・オペラ』【Amazon】しか読んでないので)。
印象に残ったのは、どれも山田正紀が主体になった部分かな。(1) 半村良に関する内輪ネタ。この人は文士としての生き方を説いていたようで、何となく劇画の登場人物をイメージした。どうやらマーケティング能力に長けた「韜晦の人」だったみたい。(2) ル=グィンの二重性を論じた箇所。シリーズを通して価値が転換していった竜と魔法について、あれは何だったのかという興味深い結論が見られる。(3) 『家畜人ヤプー』の回。山田正紀のSM嗜好にまで話が及んでいて可笑しい。『鋼鉄都市』『はだかの太陽』の回でお馬鹿なトリックに固執したり、『ゲド戦記』の回で老後のゲドと自分を重ね合わせたり、この人はお笑いキャラとして希有なものを持っている。
一方、恩田陸はかなり背伸びしていて見苦しい。S・キングはインテリ層によく読まれているんじゃないかとか(さすがに山田が突っ込んでた)、今の世の中は「私」が肥大化しているとか(「有名」になりたりだけの若者はいつの時代にもいた)、理論の伴わない直感的な思いつきが散見される。作家による読書会だから、とにかく情報量を豊富にしなければならないのだろう。しかし、こういうのを真に受ける人が少なからず出てくるのを想像すると、ちょっとやるせない気分になる。