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2008.7.1 (Tue)
●新入生のための海外ミステリリスト
海外現代文学リストの姉妹編。とりあえず、100冊挙げてみた(1作家につき1作)。今回もラノベに飽きた人向けなので、あまりマニアックなものは入れず、広く浅くを心がけたつもり。学生のみんなは夏休みを利用して読むといいよ。全部読めば読書の幅が広がっているはず!
- アームストロング『毒薬の小壜』(早川書房)
- アルレー『目には目を』(東京創元社)
- イシグロ『わたしたちが孤児だったころ』(早川書房)
- ヴァクス『フラッド』(早川書房)
- ウィングフィールド『夜のフロスト』(東京創元社)
- ウィンズロウ『ストリート・キッズ』(東京創元社)
- ウエストレイク『殺しあい』(早川書房)
- ウェルシュ『フィルス』(アーティストハウス)
- ウォー『失踪当時の服装は』(東京創元社)
- ウォルヴン『北東の大地、逃亡の西』(早川書房)
- ウッズ『警察署長』(早川書房)
- ウッドハウス『ウースター家の掟』(国書刊行会)
- エーコ『薔薇の名前』(東京創元社)
- エリン『特別料理』(早川書房)
- エルキンズ『古い骨』(早川書房)
- エルロイ『アメリカン・タブロイド』(文藝春秋)
- オコンネル『クリスマスに少女は還る』(東京創元社)
- オースター『幽霊たち』(新潮社)
- オベール『マーチ博士の四人の息子』(早川書房)
- フィリップ・カー『偽りの街』(新潮社)
- A・H・Z・カー『誰でもない男の裁判』(晶文社)
- カサック『殺人交叉点』(東京創元社)
- カーシュ『壜の中の手記』(晶文社)
- カポーティ『冷血』(新潮社)
- ガルシア=マルケス『誘拐』(角川春樹事務所)
- ギルバート『捕虜収容所の死』(東京創元社)
- キャロル『死者の書』(東京創元社)
- クィネル『燃える男』(新潮社)
- クイーン『エジプト十字架の謎』(東京創元社)
- クリスティ『七つの時計』(早川書房)
- クリストフ『悪童日記』(早川書房)
- グリーン『権力と栄光』(早川書房)
- コナリー『わが心臓の痛み』(扶桑社)
- ジェイムズ『皮膚の下の頭蓋骨』(早川書房)
- シェイマス・スミス『Mr.クイン』(早川書房)
- ダニング『死の蔵書』(早川書房)
- タブッキ『ダマセーノ・モンテイロの失われた首』(白水社)
- チャンドラー『ロング・グッドバイ』(早川書房)
- デアンドリア『ホッグ連続殺人』(早川書房)
- テイ『魔性の馬』(小学館)
- ディーヴァー『コフィン・ダンサー』(文藝春秋)
- デクスター『キドリントンから消えた娘』(早川書房)
- デュ・モーリア『レベッカ』(新潮社)
- ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』(早川書房)
- トゥロー『推定無罪』(文藝春秋)
- ドストエフスキー『罪と罰』(新潮社)
- トレヴェニアン『アイガー・サンクション』(河出書房新社)
- トンプスン『ポップ1280』(扶桑社)
- ナン『源にふれろ』(早川書房)
- ニーリィ『心ひき裂かれて』(角川書店)
- ネイハム『シャドー81』(新潮社)
- ハイスミス『妻を殺したかった男』(河出書房新社)
- パウエル『道化の町』(河出書房新社)
- バークリー『試行錯誤』(東京創元社)
- バグリィ『高い砦』(早川書房)
- バー=ゾウハー『パンドラ抹殺文書』(早川書房)
- パタースン『罪の段階』(新潮社)
- ハメット『ガラスの鍵』(早川書房)
- パラニューク『ファイト・クラブ』(早川書房)
- ハリス『レッド・ドラゴン』(早川書房)
- ハル『善意の殺人』(原書房)
- バルガス=リョサ『誰がパロミノ・モレーロを殺したか』(現代企画室)
- ハンター『魔弾』(新潮社)
- ハンドラー『猫と針金』(講談社)
- ヒギンズ『鷲は舞い降りた』(早川書房)
- ヒル『ベウラの頂』(早川書房)
- フォーサイス『ジャッカルの日』(角川書店)
- フランシス『興奮』(早川書房)
- フリーマントル『シャーロック・ホームズの息子』(新潮社)
- ブランド『招かれざる客たちのビュッフェ』(東京創元社)
- プリーストリー『夜の来訪者』(岩波書店)
- ブルース『骨と髪』(原書房)
- フレミング『007/ゴールドフィンガー』(早川書房)
- ローレンス・ブロック『殺し屋』(扶桑社)
- ペナック『人喰い鬼のお愉しみ』(白水社)
- ペリー『逃げる殺し屋』(文藝春秋)
- ペレス=レベルテ『ナインスゲート』(集英社)
- ベントリー『トレント最後の事件』(東京創元社)
- ポー『モルグ街の殺人事件』(新潮社)
- ホール『脅迫なんて怖くない』(早川書房)
- ホールデン『夜が終わる場所』(扶桑社)
- ボルヘス、ビオイ=カサーレス『ドン・イシドロ・パロディ六つの難事件』(岩波書店)
- ロス・マクドナルド『ドルの向こう側』(早川書房)
- マクベイン『カリプソ』(早川書房)
- マクリーン『ナヴァロンの要塞』(早川書房)
- マキャモン『少年時代』(文藝春秋)
- マッカーシー『血と暴力の国』(扶桑社)
- ミラー『まるで天使のような』(早川書房)
- ライアル『裏切りの国』(早川書房)
- ライス『眠りをむさぼりすぎた男』(国書刊行会)
- ラヴゼイ『偽のデュー警部』(早川書房)
- リオ『踏みはずし』(白水社)
- リッチー『10ドルだって大金だ』(河出書房新社)
- ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』(早川書房)
- ルブラン『813』(新潮社)
- ルルー『オペラ座の怪人』(東京創元社)
- レヴィン『死の接吻』(早川書房)
- レンデル『ロウフィールド館の惨劇』(角川書店)
- ローザック『フリッカー、あるいは映画の魔』(文藝春秋)
- ワイルド『探偵術教えます』(晶文社)
次はSFか……。
2008/07/03 追記
- J・D・カー『火刑法廷』(早川書房)
- バリンジャー『消された時間』(早川書房)
入れるの忘れてた。これらを含めた全102作ということで。
>>雑記
2008.7.2 (Wed)
▽新山善一『図解平成大相撲決まり手大事典』(2008)

★★★★
琴剣 絵 / 国書刊行会 / 2008.4
ISBN 978-4336050144 【Amazon】
大相撲の決まり手をイラスト入りで解説。さらに、相撲の歴史と技の変遷も追っている。
相撲というのは単純そうに見えて実は奥が深い。むしろ、単純だからこそ奥が深いというべきか。勝敗は土俵の外に出るか、足の裏以外が地面につくか、このどちらかで決まる。取組はおよそ10秒で終わるから、無駄な動きは一瞬たりともできない。長引くとそれだけ勝負が分からなくなる。従って、勝つためには立ち会いの鋭い当たりと、間断のない攻めが必要になるわけだ。相撲は絶妙なルール設定によってバランスを崩す競技に特化しており、その先鋭ぶりが他に類例を見ない「瞬発力」を要求している。
現在は82手もの決まり手があるけれど、なかでも反り技にはロマンを感じる。何せ武家時代に取り入れられた実戦的な体系で、戦場での組み打ちを想定していたようだし。そのうえ、見た目もプロレスみたいで格好いいし。ただ、この無形文化財も現代の相撲ではまったく見る機会がない。仕切り線の導入と力士の大型化によって、実用に耐えない骨董品と化している。こういう流行り廃りもルールや社会状況に則っているわけで、スポーツの歴史を繙くのは楽しいと思った。決まり手が増えたのもモンゴル人力士(モンゴル相撲)のおかげだしね。伝統を維持しながらも変わるところは変わっている。
以下、目次。
- 序章 相撲の歴史と技の変遷
- 第一章 基本動作と基本技
- 第二章 投げ手
- 第三章 掛け手と反り手
- 第四章 ひねり手
- 第五章 特殊技
- 第六章 非技と禁じ手
- 終章 相撲の格言
- 参考資料
2008.7.5 (Sat)
▲ウィリアム・シェイクスピア『恋の骨折り損』(1594-5?)

★★★
Love's Labour's Lost / William Shakespeare
松岡和子 訳 / ちくま文庫 / 2008.5
ISBN 978-4480033161 【Amazon】
ISBN 978-0192838803 【Amazon】(原書)
ナヴァール王国の若き王が、3人の学友と共に女人禁制の誓いを立てる。彼らは女を断つことで学問に集中しようとしていた。そこへフランスの王女が3人の侍女を従えてやってくる。そして、男対女の恋愛ゲームが始まる。
ああ、とうとう俺も恋に落ちた!
これまでは、恋を鞭打ち、
恋わずらいの溜め息を罰する役人だった俺が。
恋を批判し、夜警となって取り締まり、
どんな人間よりも堂々と
キューピッドを叱りつける教師だった俺が! (p.70-1)
これは翻訳が良い。シェイクスピアって劇作家である以前に実は詩人だったのだな。いや、当然そんなことは知識として頭に入っていたけれど、でもいまいち実感はなかったんだよね。これまで読んできた戯曲はどれも格調高い翻訳で、表現が大時代的にしか映らなかった。もっと言えば、古臭い言葉遣いだなーと反感をおぼえていた。ところが、今回の松岡訳はひと味違っていて、言語の運動神経を感じさせる軽やかな表現だったと思う。これを読んで、シェイクスピアの本分が詩にあることを理解した。
さあ、逃げも隠れもしません、お嬢さん、そのすご腕で矢を放ちなさない。
軽蔑の刃で斬りつけ、あざけりの棍棒で打ちのめし、
鋭いウィットの槍で私の無知をつらぬき、
辛らつな揶揄の切っ先でこの五体を切り刻みなさい。(p.163)
インテリの男性陣は自慢の「ウィット」で他者を嘲弄していたのだけど、同じ土俵で女性陣からコテンパンにやられてしまう。さらに、女人禁制の誓いがいかに馬鹿馬鹿しいかまで暴かれてしまう。途中の言葉遊びが鬱陶しいとはいえ、一連のゲームが懲らしめとして作用するのは上手い展開だと思う。げに女は恐ろしきものなり。男はただ手の平のうえで踊っているにすぎない。いかにもイギリスって感じの男女観だ。
2008.7.7 (Mon)
▽ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』(2004)

★★★★
Anything You Say Can and Will Be Used Against You / Laurie Lynn Drummond
駒月雅子 訳 / ハヤカワ文庫 / 2008.3
ISBN 978-4151776014 【Amazon】
5人の女性警官にスポットを当てた連作短編集。「完全」、「味、感触、視覚、音、匂い」、「キャサリンへの挽歌」、「告白」、「場所」、「制圧」、「銃の掃除」、「傷痕」、「生きている死者」、「わたしがいた場所」の10編。
んー、これは凄い。まるで実録もののような力強い短編集だった。警官だった自身の体験を元に、その職務や生活を詳細に描いている。通常のミステリと違うのは、とにかく現場感覚に優れているところだろう。一つ一つの行動、一つ一つの心理、一つ一つの経験。その全てが血肉を備えたものとして現れ、読む者を銃社会という戦場へと引き込んでいく。ヒロインが直面するハードな状況は、アメリカの警官にとって日常茶飯事だ。その異常な日常を自明のものとすることで、犯罪大国アメリカの病理が浮き彫りになっている。
以下、各短編について。今回はヒロインごとにまとめた。
キャサリン
- 「完全」"Absolutes"
- 「味、感触、視覚、音、匂い」"Taste, Touch, Sight, Sound, Smell"
- 「キャサリンへの挽歌」"Katherine's Elegy"
銃社会のアメリカでは、どんな優秀な警官でも殉職の危険をはらんでいる。たとえ最良の行動をとったとしても、死ぬときはあっけなく死んでしまう。自分の命運は神のみぞ知るであり、個人の技量ではどうにもならない。一連の短編はキャサリンの有能さに説得力があって、それがゆえに虚無感もひとしおだと思う。
死体腐敗のメカニズムとか、死の匂いが体に染みつくとか、細かい観察の積み重ねで独特の質感を作っている。横山秀夫を100倍ハードに、100倍濃密にしたような内容だ。★★★★。
リズ
- 「告白」"Lemme Tell You Something"
- 「場所」"Finding a Place"
「場所」では交通事故の現場で重体の男を保護し、その後自身の衝突事故を回想する。現場処理のディテールもさることながら、人生に対するヒロインの感性が生々しい。★★★★。
モナ
- 「制圧」"Under Control"
- 「銃の掃除」"Cleaning Your Gun"
この2編は父との葛藤を題材にしていてけっこう衝撃的。警官の父はよく酒を飲んで母に暴力を振るっていた。「制圧」では部屋の制圧時に応援として父が登場、彼の射殺が脳裏をよぎる。続いて、「銃の掃除」ではヒロインが父と同じアル中になり、拳銃自殺が脳裏をよぎる。
犯人の歪んだ家族像と、ヒロインが過ごしてきた家族の記憶。2つの対比がアメリカを象徴している。★★★。
キャシー
- 「傷痕」"Something About a Scar"
胸にステーキナイフを刺され、レイプ未遂に遭った臨床心理士の女性。しかし、彼女の訴えは刑事によって自作自演と断定された。6年後、再捜査の申請がキャシーの元に回ってくる。
MWA賞最優秀短編賞。本書のなかではもっともミステリらしい骨格を備えているけれど、話はそう単純ではない。この事件には個人的な「情」が絡んでおり、ヒロインが決断するまでの心理的なプロセスを描いている。思うに、この著者は普通に小説を書くのが上手いね。元警官という特殊な経歴だけで終わらず、1人の人間が直面する苦悩をきっちり捉えている。★★★★。
サラ
- 「生きている死者」"Keeping the Dead Alive"
- 「わたしがいた場所」"Where I Come From"
暴走する正義の泥沼を描いた「生きている死者」。メキシコで再生の兆しを見せる「わたしがいた場所」。この著者の持ち味は警官が送る「日常」にあると思うので、「生きている死者」みたいなサスペンスはあまり感心しない。短編集としてのバランスを欠いていると思う。おそらくネタが尽きたのだろう。★★★。
2008.7.8 (Tue)
◆ウェズリー・ラッグルス『ボレロ』(1934/米)
★★★
Bolero
ジョージ・ラフト / キャロル・ロンバード / サリー・ランド / フランシス・ドレイク / ウィリアム・フローリー / ガートルード・マイケル / レイ・ミランド / グロリア・シー / アン・シェリダン
ジュネス企画 【Amazon】
場末のダンサーだったラオール(ジョージ・ラフト)が、女ダンサーのレオナ(フランシス・ドレイク)と組んで評判になる。その後はヘレン(キャロル・ロンバード)に乗り換えて大ブレイクし、フランスでクラブを開店させるのだった。
『鶴八鶴次郎』【Amazon】の元ネタらしい。主演のジョージ・ラフトはブロードウェイ出身だけあってダンスが激ウマだった。躍動するタップに優美なステップ、そして情熱的なダンス。酒と一緒に楽しむ、古き良きショーの魅力が感じられる。
ただ、昔の映画らしく尺が短いんだよな。全体のテンポが良いだけに、ダンスシーンはもっとじっくり観たかったと思う。特に最後の「ボレロ」はフルヴァージョンを希望したい。あの曲は徐々にダイナミズムを加えていくところが面白いので。
クラブを開店させたところで第1次大戦が勃発。兵役を志願したラオールに、ヘレンが賞賛と愛情を惜しみなく注ぎ込む。彼ったらお国のために命をかけるのね! あたし惚れ直しちゃう! ところが、ラオールの志願は擬態だった。激怒したヘレンは彼を見捨てる……。
こういうのってお国柄なんだろうか。愛国心に乏しいんでさっぱりだった。