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- 11 : 過去25年のベストブック100
- 12 : 高砂浦五郎『親方はつらいよ』(2008)
- 14 : 上村一夫『菊坂ホテル』(1983-4)
- 18 : ドリス・レッシング『シカスタ』(1979)
2008.8.11 (Mon)
●過去25年のベストブック100
"Entertainment Weekly"による選出。1位が『ザ・ロード』というのは妥当なような意外なような。もっと凄い傑作たくさんありそうだけどねえ。同じ作者なら『すべての美しい馬』とか。2位が「ハリー・ポッター」なのはさもありなんかな。特に『炎のゴブレット』はシリーズ最高傑作として名高い。
10位に『ねじまき鳥クロニクル』が入っている。さすが世界のムラカミ。この調子でノーベル賞もゲットしてほしい。
- コーマック・マッカーシー『ザ・ロード』(2006)【Amazon】
- J・K・ローリング『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2000)【Amazon】
- トニ・モリスン『ビラヴド』(1987)【Amazon】
- Mary Karr "The Liars' Club"(1995)【Amazon】
- Philip Roth "American Pastoral"(1997)【Amazon】
- デニス・ルヘイン『ミスティック・リバー』(2001)【Amazon】
- Art Spiegelman "Maus"(1986/1991)【Amazon】
- Alice Munro "Selected Stories"(1996)【Amazon】
- チャールズ・フレイジャー『コールド・マウンテン』(1997)【Amazon】
- 村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』(1997)【Amazon】
- ジョン・クラカワー『空へ』(1997)【Amazon】
- Jose Saramago "Blindness"(1998)【Amazon】
- アラン・ムーア、デイブ・ギブンズ『WATCHMEN』(1986-87)【Amazon】
- ジョイス・キャロル・オーツ『ブラックウォーター』(1992)【Amazon】
- デイヴ・エガーズ『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』(2000)【Amazon】
- マーガレット・アトウッド『侍女の物語』(1986)【Amazon】
- ガブリエル・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』(1988)【Amazon】
- ジョン・アップダイク『さようならウサギ』(1990)【Amazon】
- Zadie Smith "On Beauty"(2005)【Amazon】
- ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』(1998)【Amazon】
- スティーヴン・キング『小説作法』(2000)【Amazon】
- Junot Diaz "The Brief Wondrous Life of Oscar Wao"(2007)【Amazon】
- Pat Barker "The Ghost Road"(1996)【Amazon】
- Larry McMurtry "Lonesome Dove"(1985)【Amazon】
- エイミ・タン『ジョイ・ラック・クラブ』(1989)【Amazon】
- ウィリアム・ギブソン『ニューロマンサー』(1984)【Amazon】
- A・S・バイアット『抱擁』(1990)【Amazon】
- David Sedaris "Naked"(1997)【Amazon】
- アン・パチェット『ベル・カント』(2001)【Amazon】
- Kate Atkinson "Case Histories"(2004)【Amazon】
- ティム・オブライエン『本当の戦争の話をしよう』(1990)【Amazon】
- Taylor Branch "Parting the Waters"(1988)【Amazon】
- Joan Didion "The Year of Magical Thinking"(2005)【Amazon】
- アリス・シーボルド『ラブリー・ボーン』(2002)【Amazon】
- Alan Hollinghurst "The Line of Beauty"(2004)【Amazon】
- フランク・マコート『アンジェラの灰』(1996)【Amazon】
- マルジャン・サトラピ『ペルセポリスI イランの少女マルジ』(2003)【Amazon】
- ローリー・ムーア『アメリカの鳥たち』(1998)【Amazon】
- ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(2000)【Amazon】
- フィリップ・プルマン「ライラの冒険シリーズ」(1995-2000)【Amazon】
- サンドラ・シスネロス『マンゴー通り、ときどきさよなら』(1984)【Amazon】
- エルモア・レナード『ラブラバ』(1983)【Amazon】
- ポール・モネット『ボロウドタイム』(1988)【Amazon】
- Melissa Fay Greene "Praying for Sheetrock"(1991)【Amazon】
- イサベル・アジェンデ『エバ・ルーナ』(1988)【Amazon】
- ニール・ゲイマン『サンドマン』(1988-1996)【Amazon】
- E・L・ドクトロウ『紐育万国博覧会』(1985)【Amazon】
- バーバラ・キングソルヴァー『ポイズンウッド・バイブル』(1998)【Amazon】
- リチャード・プライス『クロッカーズ』(1992)【Amazon】
- ジョナサン・フランゼン『コレクションズ』(2001)【Amazon】
- ジャネット・マルカム『ジャーナリストと殺人者』(1990)【Amazon】
- Terry McMillan "Waiting to Exhale"(1992)
- マイケル・シェイボン『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』(2000)【Amazon】
- クリス・ウェア『JIMMY CORRIGAN日本語版VOL.1』(2000)【Amazon】
- Jeannette Walls "The Glass Castle"(2006)【Amazon】
- ジョン・ル・カレ『ナイト・マネジャー』(1993)【Amazon】
- トム・ウルフ『虚栄の篝火』(1987)【Amazon】
- TC Boyle "Drop City"(2003)【Amazon】
- エドウィージ・ダンティカ『クリック? クラック!』(1995)【Amazon】
- バーバラ・エーレンライク『ニッケル・アンド・ダイムド』(2001)【Amazon】
- Martin Amis "Money"(1985)【Amazon】
- ピーター・ギュラルニック『エルヴィス登場!!』(1994)【Amazon】
- ジョージ・ソウンダース『パストラリア』(2000)【Amazon】
- ドン・デリーロ『アンダーワールド』(1997)【Amazon】
- ロイス・ローリー『ザ・ギバー』(1993)【Amazon】
- David Foster Wallace "A Supposedly Fun Thing I’ll Never Do Again"(1997)【Amazon】
- カーレド・ホッセイニ『君のためなら千回でも』(2003)【Amazon】
- Alison Bechdel "Fun Home"(2006)【Amazon】
- ドナ・タート『シークレット・ヒストリー』(1992)【Amazon】
- David Mitchell "Cloud Atlas"(2004)【Amazon】
- Ann Fadiman "The Spirit Catches You and You Fall Down"(1997)【Amazon】
- Mark Haddon "The Curious Incident of the Dog in the Night-Time"(2003)【Amazon】
- ジョン・アーヴィング『オウエンのために祈りを』(1989)【Amazon】
- H.G. Bissinger "Friday Night Lights"(1990)【Amazon】
- レイモンド・カーヴァー『大聖堂』(1983)【Amazon】
- ルース・レンデル 『心地よい眺め』(1998)【Amazon】
- カズオ・イシグロ『日の名残り』(1989)【Amazon】
- Elizabeth Gilbert "Eat, Pray, Love"(2006)【Amazon】
- Malcolm Gladwell "The Tipping Point"(2000)【Amazon】
- ジェイ・マキナニー『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』(1984)【Amazon】
- スーザン・ファルーディ『バックラッシュ』(1991)【Amazon】
- イアン・マキューアン『贖罪』(2002)【Amazon】
- キャロル・シールズ『ストーン・ダイアリー』(1994)【Amazon】
- ルイス・サッカー『穴』(1998)【Amazon】
- Marilynne Robinson "Gilead"(2004)【Amazon】
- ランディ・シルツ『そしてエイズは蔓延した』(1987)【Amazon】
- スコット・スミス『ルインズ』【Amazon】
- ニック・ホーンビィ『ハイ・フィデリティ』(1995)【Amazon】
- Annie Proulx "Close Range"(1999)【Amazon】
- Ruth Reichl "Comfort Me With Apples"(2001)【Amazon】
- Adrian Nicole LeBlanc "Random Family"(2003)【Amazon】
- スコット・トゥロー『推定無罪』(1987)【Amazon】
- ジェーン・スマイリー『大農場』(1991)【Amazon】
- エリック・シュローサー『ファストフードが世界を食いつくす』(2001)【Amazon】
- Allegra Goodman "Kaaterskill Falls"(1998)【Amazon】
- ダン・ブラウン『ダヴィンチ・コード』(2003)【Amazon】
- Denis Johnson "Jesus’ Son"(1992)【Amazon】
- Connie Bruck "The Predators' Ball"(1988)【Amazon】
- アリス・ホフマン『オーウェンズ家の魔女姉妹』(1995)【Amazon】
- Jon Stewart/Daily Show "America (the Book)"(2004)【Amazon】
スティーヴ・エリクソン、リチャード・パワーズ、スティーヴン・ミルハウザーが入っていない。この3人は欧米では流行ってないのだろうか。ひょっとして日本限定の人気?
>>雑記
2008.8.12 (Tue)
▲高砂浦五郎『親方はつらいよ』(2008)

★★★
文春新書 / 2008.7
ISBN 978-4166606436 【Amazon】
高砂親方(元大関・朝潮)が朝青龍騒動を振り返りつつ、親方の心得を説く。特別寄稿として朝青龍の反省文も収録。
どうやら親方も世代交代が進んでいて、高砂はかなり現代的な部類に入るようだ。大鵬が自著でウエイトトレーニングを否定していたのに対し、高砂は専用室まで作って積極的に取り入れている。また、先代の佐渡ヶ嶽(元横綱・琴櫻)が「土俵での怪我は稽古で治せ」をモットーにしていたのに対し、高砂はそれを否定的に捉えている。いずれも伝統に囚われない開明的な態度だけど、しかしまあ、こういうのって相撲に科学が取り入れられた結果だから、ただの世代差なのだろう。今はどの部屋も近代的なはずだし、別に高砂の資質がどうのってわけでもなさそう。
でも、弟子は殴らないとか、生活には干渉しないとか、横綱を「品格」に押し込めるのはよくないとか、相当異端な考えではなかろうか。無理偏に拳骨と書いて「兄弟子」と読ませる世界なのに、「師匠の父権を振りかざさない」なんて革命的にもほどがある。現役時代は「大ちゃん」として親しまれ、親方になってからは絶妙なボケ(例の「肌がツルツル」や「ダブルアーチの虹」など)で周囲を和ませる。こういう懐の深さが反映してそうな気がする。やはり人間は管理よりも放任のほうがよく育つもんね。これは一般の家庭を見ても明らか。
それにしても、朝青龍騒動はよく分からん騒ぎだった。巡業さぼってサッカーしたくらいで2場所出場停止とは、どう考えても厳しすぎである。それだったら本場所を休場してサーフィンに勤しんだ北の富士とか、ハワイから拳銃を持ち帰って川に捨てた大鵬とか、なぜ彼らはお咎めなしだったのだろう? 一説によると、この騒動にはモンゴル巡業の利権問題が絡んでおり、巡業部長の大島(元大関・旭國)が遺恨を晴らす形になったという。当然、その背後には弟子の旭鷲山が控えているわけで……ああ、陰謀論の深みにずぶずぶと……。
2008.8.14 (Thu)
▽上村一夫『菊坂ホテル』(1983-4)

★★★★
朝日新聞出版 / 2008.5
ISBN 978-4022140029 【Amazon】
大正8年(1919年)の菊坂ホテルには、竹久夢二と谷崎潤一郎が滞在していた。ほかにも佐藤春夫、菊池寛、伊藤晴雨などが顔を出し、めいめい情念のドラマを盛り上げる。
いかにも「大正浪漫」って感じの漫画だった。夢二とお葉(モデル兼愛人)を軸としながら、芸術家たちの業を垣間見せていく。恋愛体質(笑)の夢二は天晴れなほど自分本位で、余所に愛人がいるにもかかわらず、別の愛人としてお葉を求めている。しかも、お葉が他の男といちゃつくや、血相を変えて怒り出すから始末に負えない。「二股かけてるてめーはどうなんだよ」と突っ込みたくなる。やはり今も昔も男は多情であり、一夫一婦制はその本能にそぐわないのだろう。一般的な法則として、男の価値が歳を食うごとに上がっていくのに対し、女の価値は20代をピークに下がっていく(だからみんなアンチエイジングに必死)。その不均衡が男女関係をますます複雑なものにしている。
後半は谷崎が主人公なのだけど、これがあまりに格好良すぎて心を奪われた。きりっとした太眉に精悍な面差し、いなせな和服に身を包み、やることなすこと全てが粋。彼は繊細さと剛胆さを兼ね備えた男前であり、芸術家の集団にあって、まるでスナフキンのような超俗的ポジションにいる。これがあまりにセクシーで、俄にファンになってしまった。谷崎は未読本がたくさんあるので、そのうち落ち穂拾いをしようと思う。
2008.8.18 (Mon)
▲ドリス・レッシング『シカスタ』(1979)

★★★
Shikasta / Dolis Lessing
大社淑子 訳 / 水声社 / 2007.12
ISBN 978-4891766566 【Amazon】
カノープス人の介入によって望ましい発達をしていたそのコロニーは、いつしか崩壊の一途を辿って「シカスタ」と呼ばれるようになった。シカスタでは人類が争いごとに狂奔している。惑星のエネルギーを矯正すべく、ジョホーアがシカスタに降臨する。
サンリオSF文庫からの復刊。宗教、イデオロギー、人種差別、大量消費社会といった人類の諸問題を、SFの器で丸ごと呑み込んでいる。この小説の大きな特徴は箱庭的に地球を眺めているところで、外側からの視座を獲得するためにSFを導入している。構成も特徴的だ。全編は報告書を中心とした雑多な文書で成り立っており、記事にはSFらしい特殊な用語が散りばめられている。なので宇宙人(カノープス人)視点の前半はかなりとっつきづらい。読みやすくなるのは、地球人(シカスタ人)の日記が主体となる後半以降になる。
文明批評は特に目新しい視点はなく、内容は素朴で凡庸である。ただ、この小説の魅力は世界観の構築、すなわち、人類の営みを壮大な背景に跡づけたところにあると思う。カノープスとシカスタは、神と人間みたいな一方的な権力関係にあった。と同時に、シカスタが発展することでカノープスも利益を受ける、そういった互恵関係にもある。シカスタの人類史は人類が認識しているよりも遙かに古く、人々の営みは今以上に好ましかった。ところが、そこへカノープスと敵対する勢力が現れ、彼らの悪意が人類を汚染していく……。この辺の背景は情報量が厖大で、全てを説明するのは骨が折れるのだけど、とにかく世界観ががっちり固まっていて、そのなかに現実(我々の世界)を収めているところが刺激的だったりする。