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2009.7.1 (Wed)
▲町田康『正直じゃいけん』(2006)

★★★
ハルキ文庫 / 2008.5
ISBN 978-4758433402 【Amazon】
エッセイ集。新聞や雑誌に連載された短めのエッセイを多数収録している。「随筆ひとり漫才」、「アナーキー・イン・ザ・3K」、「愛の炸裂」、「大阪のこと」の4セクション。
町田康のエッセイがなぜか好きなんだな。話の内容は大したことないし、今ではマンネリさえ感じているけれど、それでも下町情緒あふれる文体が心地良かったりする。上方漫才とパンクロックが幸福な結婚を果たしているというか。たまに角の立ちそうなことを言っても、最後には上手くオブラートに包んでいて(包みきれないこともあるけど)、その度量の広さに安心感をおぼえる。
パンクロックとはあらゆる現実を否認しながらその果てに現れる虚無と戯れるがごとき音楽で、歌詞等も現実をあほぼけかすひょっとこと罵倒するような歌詞が多く、しかしながらただ罵倒するのもなんなのでそこに税金を負けろとか戦争反対とか風呂で屁をこくなといったスローガンを混入させておく場合が多い。なかには本気で言ってるアホがいるけれども。
これはパンクロックに限らず、ものを書くこと、何かを表現することについての重要な指摘ではなかろうか。私もこのブログで色々尖ったことを書いている──スイーツ(笑)を揶揄したり、偏った見解を述べたりしている──けれど、あれは全て本気で主張しているわけではなく、かといって真っ赤な嘘を言っているわけでもなく、虚構化しているというか作品化しているというか、とにかく景気づけの燃料だと割り切っている部分があるので、読み手の皆さんにおかれましてはあまり深刻に受け止めないでいただきたいと思う今日この頃である。
2009.7.3 (Fri)
◆ジョン・ウー『レッドクリフ Part I』(2008/中国=香港=日=韓国=台湾)

★★
Chi bi
トニー・レオン / 金城武 / チャン・フォンイー / チャン・チェン / ヴィッキー・チャオ / フー・ジュン / リン・チーリン / 中村獅童 / ユウ・ヨン / ホウ・ヨン / バーサンジャブ / ザン・ジンシェン / チャン・サン / トン・ダーウェイ / ソン・ジア
エイベックス・マーケティング
スタンダード・エディション 【Amazon】
コレクターズ・エディション 【Amazon】
大軍を擁する曹操(チャン・フォンイー)が荊州を侵略。難民とともに逃走した劉備(ホウ・ヨン)は、呉の孫権(チャン・チェン)に諸葛亮(金城武)を派遣し、共闘をもちかける。呉の軍事は周瑜(トニー・レオン)が取り仕切っていた。
いやー、これはひどい。テレビゲームのプロモーション・ムービーかと思った。一騎当千の武将たちが、並み居る雑魚どもを一方的に虐殺する。これって『三國無双』【Amazon】の世界だよなあ。もちろん、『演義』【Amazon】にもそういう部分はあるけれど、しかしどちらかといえば、一つの武勇伝として控えめな描写に徹していた。それが本作ではある種のカーニバルと化していて(*1)、こうまで嬉々として見せられると、ただひたすら後味が悪い。延々と超人的活躍がつづく戦闘は、ゲームのように予定調和で退屈だった。KOEIが一枚噛んでいるのも頷ける。
ところで、本作の主人公って周瑜だったのね。半分まで観てやっと気がついた。『演義』では何かと諸葛亮の後塵を拝していたのに、この映画では別人のように存在感を増している。小物臭がまったくなくてびっくりした。
2009.7.4 (Sat)
■THE HIGH-LOWS『flip flop 2』(2003)

ユニバーサルJ / 2003.11
ASIN B0000CD7SQ 【Amazon】
別ヴァージョンやカップリングなど、アルバム未収録曲を集めている。範囲は、『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』(2000)から『angel beetle』(2002)まで。2枚組・全28曲。
前作『flip flop』に比べると、お値打ち感は格段に低くなっている。埋め草用のモノラル音源が多いし、リミックスは一部を除いて原曲と大差ない。もうちょっと弾が揃ってから出しても遅くなかったろうにと思う。
「タンポポ」は元の曲よりだんぜん格好いい。イントロのベースソロから痺れたよ。あと、「青春」もこっちのほうがいい。スローテンポのやさしい歌い方がしんみりくる。
Nancy Mixは、全体的に音の粒立ちが良くなったような印象。「Too Late To Die」なんかはキーボードが際立っている。といっても、実は原曲と聴き比べないかぎり、はっきりとは違いが分からない。最初に単品で聴いたときは、「そのまんまじゃん!」と思ってしまった。リミックスというよりはリマスタリングに近いかもしれない。
「ジェリーロール」ではマーシーがヴォーカルを務めている。
Disc 1
- 魔羅 '69
- 不死身の花 69 Mix
- タンポポ hang on version
- ユーのカー
- 青春 lunch time version
- 十四才 [SINGLE EDIT]
- フルコート
- よろこびの歌 [Nancy Mix]
- 天国野郎ナンバーワン [Live Version]
- いかすぜOK [Radio Edit]
- いかすぜOK
- 迷路 [Nancy Mix]
- ルイジアンナ
Disc 2
- Too Late To Die [Nancy Mix]
- 曇天 [Nancy Mix]
- 一人で大人 一人で子供 [Nancy Mix]
- 俺たちに明日は無い [Nancy Mix]
- ななの少し上に [RADIO EDIT / MONO MIX]
- ecstasy [RADIO EDIT / MONO MIX]
- 毛虫 [RADIO EDIT / MONO MIX]
- マミー [RADIO EDIT / MONO MIX]
- 映画 [RADIO EDIT / MONO MIX]
- 夏なんだな
- プール帰り
- ジェリーロール
- セクシーナンシーモーニングララバイ
- 狼ウルフ
- オクラホマデスカ?
2009.7.6 (Mon)
▲アーサー・ランサム『アーサー・ランサムのロシア昔話』(1984)

★★★
The War of the Birds and the Beasts, and Other Russian Tales / Arthur Ransome
フェイス・ジャックス 絵 / 神宮輝夫 訳 / 白水社 / 2009.4
ISBN 978-4560092286 【Amazon】
短編集。「鳥とけものの戦争」、「白鳥の王女」、「オメリヤとカワカマス」、「高価な指輪」、「キツネ話」、「貧すれば貧するという話」、「小さな家畜」、「ジプシーと聖ジョージ」、「天国のかじや」、「兵隊と死神」、「二人の兄弟」の11編。
昔話のフォーマットを踏襲した話には、どこか浮き浮きするものがある。安全の確保されたジェットコースターみたいというか。適度な試練があって、幸福な幕切れがある。決まり事をコンパクトにまとめているのがいい。
以下、各短編について。
「鳥とけものの戦争」(1918)
些細な理由から鳥とけものが戦争する。火の鳥と熊がタイマンし、双方が重傷を負って終わる。イワンはその場に転がっていた火の鳥を介抱し、彼からお礼を受ける。
2つの話をドッキングさせたような内容。前半と後半では毛色が違う。
「白鳥の王女」(1918)
王子が美しい白鳥をテントに持ち帰る。白鳥は人間の女に変身してご馳走を作るのだった。
たいていの昔話は、物事が動くための重要な論理が欠落しているから、少しばかりシュールだったりするのだけど、実はそこがポイントなのだ。狐につままれたような不思議さ。この感覚が好きでつい読んでしまう。
「オメリヤとカワカマス」(1917)
末っ子のオメリアが、お使いにいった先の川でカワカマスを助ける。そのおかげで超常的な恩恵を受けることに。
人助けはしとくものだね。道端で3億円の現金を拾ったようなお得感。いや、ちゃんと警察に届けるけどさ……。
「高価な指輪」(1914)
死んだ男が遺した高価な指輪。その相続を巡って3人の息子がアピールするも、おっかさんは了承しない。あるとき、息子たちの妹が誘拐された。おっかさんは、妹を救助した者に指輪を渡すと約束する。
結末の捻り方がすごい。語り手も大変だったのだ。
「キツネ話」(1913)
「キツネとジャッカル」、「キツネとバルカンツ」、「黒いキツネ」の3話。
最初の2話では騙しのプロとして登場したキツネも、最後の1話では不思議な力を貸し与える存在として登場している。
物事を為すには1人では駄目ってこと。難しければ難しいほどみんなの知恵が必要である。
「貧すれば貧するという話」(1915)
7人の子供を抱える貧しい夫婦。物乞いにいった夫が、1枚の金貨と魔法のおわんを持ち帰る。そのおわんは、ある特殊な条件で金貨が増えるという仕組みだった。
欲張りはいけないよという話。せっかくのチャンスも、節度を守らなければ無に帰してしまう。こういう話は万国共通だ。
「小さな家畜」(1918)
ネズミに営業妨害されている宿屋の主人。その彼が、客としてやってきた家畜商人をもてなす。
昔話が繰り返し説いているのは、「情けは人のためならず」ということだ。
「ジプシーと聖ジョージ」(1918)
ジプシーが聖ジョージを騙して貴重品を奪う。
ユダヤ人=性悪というのが、昔のステレオタイプだったみたい。だって神様まで認めちゃってるし。そういうものなのか。
「天国のかじや」(1918)
人のために尽くした鍛冶屋が死亡、あの世へ行く。善行の報いとして、神様の玉座にすわらせてもらうのだった。
正しい心の持ち主は、不正に耐えて生きておる。だが、人の世に満ちている悪のすべてを知って、それに耐えられる人間はおらぬ。人は、この世の悪のすべてを知らないから、生きていられるのだ。(p.126)
意外と深い話でびっくり。全知全能の神様は、地上の悪すべてを見つめるという苦しみに耐えていたのだ。
っていうかこの設定、SF小説になかったっけ?
「兵隊と死神」(1920)
兵隊が乞食になけなしのパンを恵み、お礼に魔法のアイテムを貰う。兵隊はそのアイテムを使って、悪魔や死神と対決するのだった。
欧州圏は契約が第一にあるのだなあと。悪魔でさえ契約から逃れられない。
あと、死神には死神の役割があるってことだな。それが自然の摂理。死ぬべきときに死ねないのは悲しい。カーズ様とか、カーズ様とか、カーズ様とか。
「二人の兄弟」(1918)
結婚を決めた男が死んだ兄に報告するため、彼が眠る墓に行く。すると、目の前の地面が口をあけた。中に入ると、兄が生前と変わらぬ姿で椅子に座っている。
浦島太郎みたいな話って、西洋にもあるから面白い。こういうのを読むたびに、世界中の民話や神話を参照したくなってくる。